表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

185/1053

Ep-126 本選4 アラド対アローン(後編)

アラドは割と大雑把なように見えて、物事を考えて生きています。

元Bランクなので、それくらい出来ないと辛いのです。

「さて...................第二ラウンドかのう?」


地面へと降り立った爺を見て、俺は戦慄した。

あの一撃すら、この爺には通用しなかったという事だ。


「バカな.......六段階の魔砲(ゼクス・カノーネ)が......?」

「儂の防御はあらゆるものを防ぐ。ま、お主の負けじゃのう.....シールドチャージ!」


アローンはニヤリと笑い、こちらへと突っ込んで来た。

まともに受けてやる気はない。

俺はサイドステップで素早くアローンの突撃を回避する。


「ゼクス.......いや、このままでは駄目だな。『発動(アクティベート)』」


俺の剣が変化し、より大きく、より重く、より堅く変化する。

まるで生きているように見える変化だが、元は液体状のオレイカルコスを魔力で固めてオリハルコンにしているだけだ。


「なんじゃ.....?その剣の能力かのう?」

「ゼクス.......シュヴェーアト!」


俺は渾身の魔力を剣に込め、再びアローンへと斬りかかった。

無駄だとわかっていても、このまま負けるわけにはいかない。


「どぉおおおおおおおお!」

「無駄じゃ!」


俺の攻撃はやすやすと防がれる。

どうしてだ?何故これほどの力でもこの守りを突破できない?

焦る俺に、アローンが優しく語りかけた。


「儂が何故こんな力を身に着けたか気になるかのう?じゃが、儂のように復讐に燃えでもしなければお主には到底無理じゃろう」

「復讐.........?何を言っている」


アローンが何かに復讐したがってるとはとても思えない。

だが、その瞳には確かな怒りと憎しみが渦巻いていた。


「お主はボレアス王国を知っているか?」

「ボレアス王国...........?」


俺はその名前で、ある王国を思い出した。

少し前に滅んだ国だ。


「俺はボレアス王国の王だ。俺は王国に復讐する」

「王なら処刑されているだろう。妄想も大概にしろ」


内乱で自滅した国だと聞いている。

ならば王も、処刑されて終わりだろう。


「俺は何とか逃げ果せた。だが、部下を大勢失ったッ!王国は卑怯だな、あれほどの軍勢を宣戦布告もなしに率いてくるとは!」

「なに?」


俺は一瞬、アローンの言ったことを理解できなかった。

カーラマイア王国がボレアス王国に軍を差し向けた?

バカな。人違いならぬ国違いだろう、あるいは自国の民を軍と勘違いしてるのか。

どちらにせよ、その妄執は断ち切る。


「王国が軍を出すわけが無い。お前は自国の民を軍隊と勘違いしているだけだ」

「そんな筈があるか!儂は見たぞ!カーラマイア王国軍の旗をッッ!」


だが、王国が軍を出しているのなら俺が気付くはずだ。

俺は元々南端で冒険者をしていたのだから、国境を軍が通れば必ず気付くはず。

迷宮に潜っていたとしても、せいぜい2日か3日。

何日も掛けて行軍する軍隊を見過ごすなんて事がある筈がない。

第一、軍が行軍するなら俺の居た街で補給をするはず。

領主は何も言っていなかったしな。有り得ん。

だが、王国軍の旗.....?


「誰かが王国に扮してお前の国を襲った可能性は考えなかったのか?」

「そんなことがあるわけないじゃろう!仮にあったとして、それをして何の得になる!?」


俺は剣を振りかぶりながら尋ねる。

一瞬アローンが揺らいだが、俺の剣が迫るころには直ぐに対応していた。

手強い......な。


「俺は南端の出身だが、行軍など見たことはないぞ?」

「黙れい!儂を動揺させようと思っても無駄じゃぞ!シールドインパクト!」

「ッ!ゼクス・シルト!」


俺は慌てて壁を張ったが、その程度では足りなかった。

俺は壁を貫いた一撃をもろに受け、宙を舞った。


「———————ッ!」


一瞬意識が飛び、次の瞬間俺は地面に転がっていた。

先程と全く同じ状況。

俺は............負けるのか?

もしあの老人を放置すれば、あの爺は必ず王国に.......そして仕えている主人であるユカリに害をなす。

そう思った瞬間、俺の中で何かがボウと燃えた。


(妙だな......あの女のことを思っただけでここまで希望を抱けるものなのか?)


『出資者』にこき使われていた時と変わらない、雇い主。

ユカリとはそんな関係だと俺も自覚していた。

今は何とか許してもらっているが、俺はユカリに剣を振るったのだ。

仲間としてではなく、主従の関係としてでしか俺はユカリと接する方法がなかった。

だが。そもそもそれがおかしいと俺は気づいた。

何故俺は、ユカリに固執している?

彼女にこだわらなくとも、良い雇い主等幾らでもいる。

なぜ彼女に?


(だが今は、そんな疑問を長々と考えている時間は無いか)


アローンが飛び上がり、俺を踏みつぶそうと落下してくるのが見えた。

兎にも角にも、回避が優先だ。

俺は素早く立ち上がり、傍に落ちていた剣を拾う。

このままでは絶対にアローンに勝つことは出来ない。

だが、ゼクスより上の段階を使うことで勝てるとも限らない。

どうすればいい?

思い出せ....................


『...........から、.................ば............................』


その時、俺は記憶の底からある記憶を引っ張り出した。

この記憶は..............そうだ、大会前に俺の弱点を尋ねた記憶だ...........

その時俺は、エストニア邸にてユカリと対談していた。

あの、無駄に男臭さの漂う茶の淹れ方が印象に残っている。

彼女は貴族令嬢のはずなのだが..........?


『で、アラドは何が聞きたいの?』

『聞けば、総合大会に備えて希望する皆を手助けしたと聞く。無礼を承知で、俺にも強くなるコツを教えてほしい』


俺は決意を宿した表情でそう言ったが、ユカリはくすりと笑って言った。


『なんだ、そんな事か』

『そんな事だと.....?』


俺の力は伸び悩んでいる。

その力を伸ばせるという方法など、ユカリが知っているはずもない。

そのはず.........だったのだが。


『アラドは魔法が使えないんだったよね?その身に宿す魔力の割りに』

『そうだ』

『そうか.............』

『ない知識を漁らなくとも良い。俺は俺で何とかする。時間を割いてくれてありがとう』

『いやさ、アラドは魔法が使えないから、その魔力を全身に流して自分を強化するとか、一か所に集中させて強化に回すとか、そういうのはできないの?』

『魔力を剣ではなく自分に?それに、一か所へ......集中だと?』

『そう』


,,,思い出した。

何故こんな大事なことを今まで忘れていたんだ?

そうか、あの後ユカリが作ってくれた料理が衝撃的に美味すぎて忘れていたのだった。

貴族の令嬢の料理などたかが知れていると思っていた俺は、その料理に酷く感銘を受けたのだった。


「そうと決まれば.........」


俺は目を閉じ、自らの身体を巡る魔力を意識する。

そして、血管を血が巡るように、全身を流れる魔力を掴む。

だが.....これだけなら今までもやって来た。

もっと深く、そして..................


「強く!髪の毛一本に至るまで!」


全身に魔力を循環させる。

今までは意識してなどいなかった、体中のあちこちに徹底的に魔力を流す。

すると、俺の意識の中で俺は自分の身体を強く意識した。

そして、自分に迫ってくる異なる魔力を持つ何かも。

俺はその何かに向けて、手を伸ばし..........掴んだ。


「なっ、掴んだじゃと!?」

「............」


俺は静かに目を開ける。

すると俺は、全身から金の光を放ちながら、左手でアローンの突進を受け止めていた。

俺はアローンを突き飛ばした。

軽く突いたはずだったのだが、アローンは吹っ飛んでかなり遠くへと尻餅を付いた。


「な、何じゃ......その魔力は.......!」

「そろそろ終わらせよう」


俺は剣に、全身を循環させ増幅させた魔力を一気に流し込む。


「ズィーヴェン・シュヴェーアト!」


剣に流し込み切れなかった魔力が光となって剣を帯びる。

俺はそれを振るう。

たったの一閃。

だがそれだけで、アローンの防御姿勢が崩れる。

二振り。

盾に罅が入る。

アローンはその時点で、後ろへと跳んだ。

逃がすわけにはいかない。

だが、動けばきっとこの力も失われてしまいそうだ。

なら..................


「ズィーヴェン・カノーネ..........」


俺は剣を水平に構える。

そして.......身体に残った全ての魔力を剣へと流し込む。

どうせこれが決まらなければ俺は負ける。

だったら、一世一代の賭けに出るべきだ。


「ドラッヘンシュトラール!」


剣が太陽と見紛う閃光を発し、鋭い共鳴音を響かせた。

勢いよく剣先から思考性を持った魔力が迸り出、俺が想像する竜の形を形作る。

恐ろしく、強く、大きく。

それでいて高貴な印象を持たせる光の竜が、生きているかのようにアーロンへと噛み付いた。


「ぬぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううう!」


だが盾は中々壊れない。

アーロンも手加減をする気はないのだろう。

だから俺も、手加減する気はない。


(光の竜よ、お前の実力を示せ!)


光の竜は、俺の声に応えるように、声なき咆哮を上げる。

そして............盾の罅が拡大した。


ビキ..........パキ................


「行け!」

「負けん!儂は負けんぞ!!」


だが、アーロンの抵抗も空しく、盾は良く響く音を立てて砕け散った。

もはやアーロンは、光の竜から自分を守るすべはない。

光の竜はそのまま、アーロンへと突き進んだ。


「ふ、フェーズシールド!」


パキン


アーロンはあの盾を召喚したが........まるで薄氷が割れるがごとく、盾は粉砕され、

アーロンは光の竜に呑まれた。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」


そして、アーロンを呑み込んだ光の竜は、結界に襲い掛かる。

俺は力を弱めようとするが、制御が上手く行かない。

結果として、光の竜は結界を粉々に破壊し、観客席に突き刺さった。

だが、結界に衝突した時点で観客は逃げていたので、被害は避けられた。


「俺の.......勝ちだ!」


俺は剣を上に掲げて、そう宣言した。

その直後、剣にひびが入り、砕け散る。


「『解放(リリース)』」


そして俺は、液体化したオレイカルコスを収納した。

ベルにまたメンテナンスを頼まなくてはな.......

それに、ユカリにあの料理.......アイスバインとやらをまた作ってもらおう。

見た目に反して肉の味がしっかりと楽しめて、非常に美味だった...


アラドくんはユカリの手抜き手料理を気に入ったご様子。

煮込み料理なので、見た目はただの肉に見えても結構美味。




いいね機能オフになってたのでオンにしておきました。

試しに押してもらえると助かります。




↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ