Ep-119 本選2 クレル対ガーランド
単話です。
12時以降とは言ったが何時かとは言ってないのでセーフセーフ。
さてさて、俺の事実上の彼氏、クレルの本番だ。
対する相手は剣神ガーランドだ。
よく小説とかだと剣神って一人しかいないイメージだけど、
この大陸に限定するなら3人いるんだよな。
〈剣神術〉を持っているのが条件だから、もしかしたらアレックスなら.....?
しっかし、クレルにも支持層が付いてるんだよね。
俺はほぼ無言で相手を倒したりしたのが勘違いされたようだし、元々王都で有名になりつつあったようだし........
けど、クレルは何故........?
かと言えば、おばさん層に大人気らしい。
その甘いマスクから放たれる鋭い言葉のナイフで優しく貫いて欲しいそうだ。
…..訳が分からん。
「へえ、あなたが......剣神?」
「そうだよ。ま、今は病気のガキ持ちのおっさんだがな」
「とすると........?」
「ああ、賞金で娘を治してやらにゃいけねーからな、手加減はしねえぞ?」
「望むところだ!」
へえ、娘の病気を.......
って、本来のガーランドにそんなストーリーはなかったような....
まさか、これも......?
俺がガーランドの事情について考えていると、
俺の懐で分針の動く音がした。
「始め!」
「ハイスラッシュ!」
「ッ!!」
始めの合図とともに、クレルの目の前にガーランドが転移した。
….否、転移したのではない。
《知覚できない速度で移動したものと思われます》
そう、俺でも知覚できないほどの速度でクレルに近づき、
斬りつけたというのだ。
だが、クレルも俺の予想のはるか上を行っていた。
「なっ......斬れない!?」
「残念、幻影だ」
斬ったはずのクレルが笑う。
剣はクレルをすり抜け、ただそこにあった。
《恐らくですが、魔道具のミラープロジェクターを使っています》
なるほど........
剣神相手に魔道具って、意外と思いつかないもんだな。
というか剣神なら、気配でわかりそうなもんだけどな.....
普段使われない戦法を、戦闘中ならまだしも試合前に仕掛けられたら気付かないか。
ミラープロジェクターが消え、地面に魔石が転がった。
そして、ガーランドの後方からナイフが飛ぶ。
「おっと」
「やっぱダメか」
ナイフはガーランドが小指で挟んで受け止めた。
ガーランドはナイフを上に投げ、クレルへと軽く剣を振った。
”軽く”振られたはずの剣は剣圧となってクレルに襲い掛かるが.......
「ナイフをぶっ壊さなかったのは、悪手だったな?」
「なーに、わざとだ!」
ガーランドの頭上に入れ替えでクレルが出現する。
だが......ガーランドはそれを読み切っていたらしい。
空中で身動きが取れないクレルに斬撃が放たれる。
だが.........
「空転・跳躍ブーツ!」
錬金術師はものに魔術を付与できる。
スキルも同様なので、俺の固有スキルである「空転術」を靴に移植してみたのだ。
ダイヤルで「空転・跳躍」、「空転・重突」、「空転・滑走」、「空転・水月」を切り替えて使用できる。魔力は消費するが、クレルは魔法をほぼ使わないので問題ない。
そして、クレルは剣を避けて、重突で落下する。
そして、着地の勢いのまま、重突で重力の増した踵落としを放つ。
「うおおおおっ!?」
「なッ!?」
ガーランドの手がブレ、クレルの足は剣身を叩いた。
そして......
「よっと」
「くそっ....!」
ガーランドはそのまま剣を押し上げ、クレルは宙へと放り出される。
そして、素早く鋭い剣撃が今度こそクレルを捉える。
「があっ................!」
「クレル!」
思わず俺は立ち上がってしまった。
周囲の人間が俺を見るが、俺は気にしてられない。
クレルが、腹から血を噴き出させながら吹っ飛び、地面へと落ちた。
「終わりか?」
ガーランドが近づいてきて、クレルにそう問いかけた。
クレルもそれに、弱弱しく答えた。
「そう........だな、相当深くまで入った.....かはっ」
「そうか.....では、俺の勝ちで——————ッッッ!」
ガーランドが剣を掲げて勝利を宣言しようとした途端.......
クレルが破裂した。
いや、爆裂?
とにかく、クレルの身体が爆発し、中に詰まっていたナイフが弾丸のようにガーランドに突き刺さり、ガーランドは剣を構えたままの姿勢で数十個のナイフが突き刺さった。
「ぐはっぁあ!?」
「残念、俺はそんなんじゃやられないぜ!」
空遁術で空間を歪ませながら、クレルが虚空から叫ぶ。
ガーランドは全身のナイフを抜ーーーかず、
「ふん!」
ガーランドの全身の筋肉が盛り上がり、
刺さっていたナイフが弾け飛んだ。
「この程度で、我が剣は揺るがん!」
「そうかぁ.....ま、関係ないだろ!」
ガーランドの傍に現れたクレルがナイフを滑らせる。
ガーランドは斬撃を放つが、クレルのナイフはそれを避ける様に振るわれる。
だが、大きく勢いを失った斬撃は勢いを失い.......
ガーランドの衣服を切り裂くだけに留まった。
「ちっ.....」
「久々だな....こういう、細かいことを気にしなきゃいけない戦いをな!」
二人は再び、鍔迫り合いへと身を投じた。
だが........
「退屈だなぁ......」
「すごい戦いを期待して来たんだけど....あんまり見応えないね」
「帰るか.......」
俺の周囲の客が立ち上がり、行ってしまう。
まあ、こういう読み合い対決って、派手さが無いから飽きるよね。
戦ってるほうは必死なんだけど。
結局、ガーランドとクレルは制限時間一杯戦い、勝負は判定に持ち込まれた。
で、勝ったのは当然クレルだった。
まあ、クレルはガーランドに攻撃を当てまくってるけど、
ガーランドは一撃しか当てられてないしね。
悔しがるガーランドだったが、
「まあ、一気に稼ごうと思った俺が間違ってたぜ。Sランクだから仕事なんざいくらでもあらぁ!明日から稼ぐぞ!」
などと全身傷だらけで笑って言い、
フラフラと闘技場を後にした。
クレル君は〈暗殺者〉なので派手な戦闘はないです。
よって書くことがありません。
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