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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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SEP-11(B) ダブルデート(後編)

(修正)魔竜翼→魔龍翼。

ちょっと特別感を出したいので.....

アレックス達は暗い森の奥を探索していた。

魔物はいないものの、太陽の光が殆ど届かず、不気味なキノコや植物が生える森は、

二人の距離を自然に近づかせていた。


「しっかし.......」

「....どうしたのですか、アレックス?」

「ユカリもよく分かんないよなぁ、こんな採取依頼大して報酬も高いわけじゃない。それに、行きたいならわざわざ俺たちを行かせる必要もない。ユイナと行けばいいのに.......」

「アレックス、それは余りにも......」

「ああ、ごめんごめん、ユイナが要らないって言ってるわけじゃないんだ」


ただ、疑問で......

と首を撫でながら言うアレックスに、ユイナは少しどきりとした。

だが、すぐにそれを振り払い、頭に浮かんだ話題を口に出す。


「アレックス」

「....なに?」

「私とアレックスは、婚約者.....なのですよね?」

「ああ、そうだね......」


アレックスとユイナにはかつて共通点があった。

それは、親に愛されていないという共通点だった。

アレックスはスキルが使えないという理由だけで両親からも冷遇された。

だが、ユイナは?


「私のお父様........私がアレックスと婚約したいと言った当日に、無言で即決いたしましたわね..............お母様も、何も言ってくれなくて.....」

「.......まあ、分かるよ、その気持ち。だけど、ユイナは俺と結婚するのが嫌なのか?」

「いえ、そんなことは.....」


ユイナは、自分と同じ.....いや、自分よりも下の境遇のアレックスに同情した。

エレル家は伯爵家なので、エストニア侯爵家のアレックスとなら結婚は成立する。

だが..........ユイナはずっと、自分はアレックスの弱みをついたのだという罪の意識を抱いていた。


「俺もさ、最初は........優しくしてくれたユイナとなら結婚してもいいやって、そんな感じだったんだよ。両親も俺の欠点を述べるだけで反対すらしなかったしさ」

「ええ.....でも、私はその気はなかったとはいえアレックスを利用したのですよ.......?」

「それでもいいさ、それに、ユイナの精霊の力........いつもいつも助かってる。」


アレックスはそう言ってほほ笑む。


「ユイナがどうしても俺を利用したって事を忘れられないなら、俺も同罪さ。俺もユイナの優しさにつけ込んだ凶悪犯罪者だからな」

「い、いえ!アレックスは悪くは......」

「どうかな」


アレックスは悪そうな表情をして言った。

ユイナもそれに微笑み返した。

だが、直後.........


ガサッ!


「くっ!?」

「魔物!?」


だが、茂みを破って横切ったのは、ただのウサギであった。

ユイナは咄嗟にアレックスに抱き着いたが、ウサギを見て離れようとした。

だが、抱きとめられた。


「せっかくだし、もうちょっとこうしていようぜ」

「あ、アレックス..........」

「ここなら、ユカリもいないし」


二人はしばらく、くっ付きながら移動した。


◇◆◇


数十分後。


「あああああああ、あの二人....」

「いい加減忘れようぜ、ユカリ......」

「残念男は黙ってて!」

「ざ、残念男って!酷でえ!?」


俺はポケットからハンカチを取り出し、辺りに憎悪の視線を撒き散らした。

目の前が真っ赤に見える......全てを滅ぼしてしまいたい....


「.......あんなラブラブカップル、爆発してしまえばいいのに」

「...まあ俺も、実在する存在だとは思ってなかった」


アレックスとユイナは目的の見るからにヤバイ草、「木陰草」を指定された30株全て採取して帰還した。

俺たちはエメルドローズを採取しに、森の奥........の翼竜営巣地へと向かっていた。

しかし、翼竜だって結婚するのだ、俺もいつかは.........

いや、帰れなかったら女の子のまま.......

それだけは嫌だな、死んでも帰ろう。

むしろ帰還失敗で死んだ方が、精神衛生上助かるかもしれない。


「これが、営巣地か.........」

「綺麗だね.....」


んなこと考えていたら、俺たちは営巣地へと辿り着いた。

巨大な..........ってほどじゃないが、大きな湖が広がり、

その中央に大きな島があり、そこに沢山の飛竜が集っていた。

そして、その島のあちこちに緑色に輝く薔薇が生えていた。


「アレ、厳しくない?」

「行こうぜ」


クレルがそう言うので、俺は全力を出すことにした。

ダンジョンパワー、50%解放!


魔龍翼(フリューゲル)!」

「うわ、ユカリ!翼なんて生やせたのか!?」


ああ、コレね。

リンドに竜魔法を教わったら、手持ちスキルの龍滅ぼしの派生スキルが増えたんだよね。

その名を魔龍翼。

リンドも驚いていた。

竜魔術の上位版らしい。


「掴まって?」

「ああ、俺はこれで行く」


クレルがナイフを渡してきたので、気になったことを尋ねる。


「クレルのその能力って、距離限界とかある?」

「......ちょっと前まで、部屋を挟むとダメだった。今は学院から王城くらいまでの距離なら、入れ替えできる」

「そうかぁ.....」


俺は、とりあえずクレルのナイフを持って飛び立つ。

そして、中央の島へと一気に接近する。


「おっ、やっぱり反応するか」


自分たちより小さい羽虫のような存在なのに、高速で接近して来た俺に飛竜たちが反応を示す。そして........


「クレル、自分で飛び降りろ!」


俺はナイフを島へとぶっ刺す。

そして、大きく旋回して、放たれたブレスを避ける。


「クリエイトウェポン、アースシールド!」


大地の属性を持つ盾を呼び出して、風のブレスやら魔法を受け止める。

今回俺たちは飛竜やその卵には用事はない。

その周囲に咲くエメルドローズに用があるのだ。

俺は島の周囲を旋回し、入れ替えで現れたクレルがエメルドローズを回収していくのを見ていた。

だが、すぐに異常に気が付いた。

クレルの奴、指定された2、3株で収まらず、4、5株と回収していっている。

アレ、自分用に確保してるのかな.......?

だが、それはマズい。


「GYAGYAGYA!」

「GYAU!?」

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


飛竜たちが旋回する俺から目を背けて、クレルの方を向いた。

その口から、ゼロコンマでブレスが放たれる。

が.....


「危ねっ!?」


クレルはサッと横に回避してそれをかわした。

エメルドローズ10株ほどは魔法のポーチに入れているので大丈夫のようだ。

クレルはブレスや風魔法を軽々と回避しつつ、エメルドローズを回収していく。

さっさと逃げればいいものを.......

いや、逃げられないのか。

クレルは俺の回収待ちだ。

どこかで俺の回収を待っているんだ。

けど、男の意地で助けを求めないのか。


「今行くぞ!」


俺は飛び出した。

クレルも段々と激化する攻撃に対処できず、魔眼を使っているようだ。

そんな時.........


「ちッ........避けられ—————!」


ブレスを避けたクレルに、死角から翼竜が突進してきた。

クレルはそれを回避できない。

だが.........


「たあああああぁぁぁあああっ!」


俺は風を巻いて急降下し、クレルと翼竜の間に割り込んだ。

そして、突進を身体で受けた。


「がっ........ぐぅぅぅぅぅ................?」


一瞬、肺の空気が押し出されたが..........

そんなに痛くないぞ、これ.....?

そうか、ダンジョンパワーのせいか。


「ゆ、ユカリぃぃぃ!大丈夫かっ!?」

「むぎゅ!?」


冷静に状況を判断していた俺に、クレルが抱き着いてきた。

強い力で抱きしめられる。


「ケガは......って、普通にケガしてるか。服は破れて....ああ、破れてる!出血は.........」


あ、ドレスアーマーもどき改めソルジャードレス、破れたか。

つまりダンジョンパワーが無かったら.......ゾォ~......

とりあえず、俺は抱き着いてきたクレルを横に抱きかかえる。


「逃げるよ?」

「へっ?ああ、うん......」


俺は所謂お姫様抱っこでクレルを抱え、急上昇する。雲は越えられないが、翼竜たちが豆粒になるほどまで上昇した。

今気づいたけど、普通こういうのって逆だな。


「ゆ、ユカリ........傷とかは?」

「大丈夫、私は頑丈だから」


殺されそうになってもHPが1で耐えるほどには、頑丈だ。


「そうか.......しかし」

「しかし?」

「いや、ユカリと結婚するヤツは、きっと可哀想だろうなぁと....」

「どういう意味?」


するとクレルは、物凄く呆れた顔をした。


「男がいいところを見せようとしても、全部自分で何とかするし、女ながらに男まで助けちゃうんだ、これが可哀想でなくてなんなんだ?」

「それ、クレルの事?」

「ああ、そうだ。俺はユカリを守るって内心誓ってたのに..........ユカリは俺が守らなくても、どんな相手も跳ね除けてしまいそうだ」

「えへへ、私はそんなに強くないよ...」


俺一人いても、目に映るすべての人間を助けることは出来ない。

クレルのような男や、女がたくさんいて、この世は成り立っているのだ。

俺はクレルを抱いたまま、王都の方へと飛んだ。




後日。

アレックスとユイナは俺たちの前で、


「えーっと、俺達........」

「付き合うことになりましたわ、元々婚約者ではあるのですけれども.......」


と宣言した。

これで俺のルール、「恋人同士は爆発させなくともよい(爆破しないとは言っていない)」に触れ、二人の命は救われた。

そして、俺にも.................................................


「ユカリ、俺と付き合ってくれ!」

「お断りします」

「そんなああああ!」


恐らくあの時の残りであろうエメルドローズの花束を貰い、

告白されたけど........

俺はそれを突っ返した。


「クレルには渡す相手が他にいるでしょ?まさか、気付いてないの?」

「え、誰だ........?」


おいおい、あんなに好意を向けてくれているのに......ほんと残念だな、コイツは。


「シュナだよ」

「いや、シュナは幼馴染で.....それに、きっとオブシディアン兄貴に想いを寄せてる。俺なんかに......」

「クレル!クレル・アーサー!」


俺は叫んだ。


「見た目で私に告白してるんだろうけれど、選なら本当に自分のことを想ってくれてる女の子だよ、さあ、行け」

「........分かったよ」


そう言ってクレルは、花束を抱えて中庭から去った。

上手くいけばいいんだけど。


クレル「俺が君を、守るから」

ユカリ「ひとりで何でもできるもん!」

シュナ「クレル.....私に振り向いてくれないかな?」


この3人ほんとすき(率直)

クレルは、かっこいいところを見せたいお年頃ですが、相手が悪かったですね。




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