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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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Ep-114 反省会

更新時間は基本AM7~8時、PM12~14時、PM18~20時です。遅れていてもこの時間には上げます。

もしこの時間に投稿されていなかったらその時間にはできていません。

最近ちょっと忙しいのでもしかすると投稿しない日もあるかもしれません。

全員の二次予選戦が終わった翌日、

俺たちはエストニア家に集合していた。

何故かアスキーも来ている。


「いやー、クレルの戦いは良かったな。でも.....あのなんかカッコイイ術はどうやって身に着けたんだ?」

「偶然だな」

「.....私は詮索しないから」

「皆様、楽しまれているようで何よりですわ」


今後に向けての会議のつもりだったはずなのだが、

先程から同じ話ばかりしている。

ふと部屋の入り口を見れば、アスキーがエストニア家のメイドから茶のトレーを貰っている。エストニア家の面々は殆ど地方に移ったが、しっかり真面目になった次男のブラウトと彼を慕う使用人たち、そしてアレックスに対して悪感情を持たない真の下っ端たちが残ったのだ。それにしても、アスキーって俺以外にはひたすら高圧的なんだなぁ。


「.......そうだ、ユカリ様は恐らくチーズケーキを好まれるだろう、変えろ」

「分かりました、では後でお持ちいたします」

「早くしろ」


別にケーキなんて甘ければ何も変わりはしないと思うんだけどな.....

女子はその辺違う違うと言いそうだが、俺の価値観は未だに男なのでそういう所がよく分からない。

俺は死んだ眼でクレルの話ばかりするアレックスとそれに「偶然だよ」とか「ああ、ちょっとね」とか答えるクレル、ケーキやお菓子をぱくつくシュナ、優雅に茶を飲むユイナ、「魔術応用理論~多重魔法陣による合成魔法~」という本を読んでいるベル、呪王と話をしているリンド、その傍で寝ているタツミ先輩、そして部屋の隅で剣の手入れをしているアラドを見渡した。


「ねえ」

「なんだ?」


俺はアラドに近づき、尋ねた。


「二次予選で〈アインス・シュヴェーアト〉って技使ってたよね。」

「.....ああ」

「今まで使わなかった理由は?」


段階で強化していける技、学院の時に使われていたらヤバかった。

だが、今になってどうして?


「実は—————」


アラドは、この間剣を修繕・改造してもらったことを俺に明かした。

それによって強度、魔力循環効率が大きく増加したらしい。


「アインス・シュヴェーアト、ツヴァイト・シュヴェーアトは正確には技ではない。ベルと魔王がこの剣に組み込んだ機能だ。あらゆる技....〈カノーネ〉、〈シュヴェーアト〉、〈シルト〉........は段階を踏んで強化していける。その分魔力は必要だが.....」

「なるほど....」

「まだ調整中だが...」


アラドは切っ先を上に構える。

そして、魔力を流すと........なんと剣にパーツが纏わりついたりして、

さらに大きな剣に変形した。


「こういうものも作ってくれた。...ツヴァイト以上のカノーネの発射にはこれは欠かせないだろう」

「そうなんだ......」


アラドはそれだけ言うと、剣を解除して再び布で拭き始めた。

俺は次の話し相手を見つけることにした。

そうだ、アレックスにしよう。


「アレックス」

「そこでクレルが.........何だ?」

「アレックス、調子はどう?」

「調子がって何が...ああ、そうか。剣術大会だな?」

「そうそう」


アレックスは武闘大会ではなく剣術大会に出場する。

剣術大会ではスキル、魔法、武器の差に関わらない、純粋な剣術のみが試されるからな。

アレックスは予選でいろんな目に遭ったらしい。


「差し入れに麻痺毒を入れてきたやつがいたかな」

「へえ....どうしたの?」

「精霊が気付いてユイナが止めた」

「やるじゃん」


当たり前だが、選手へ毒を盛ったりするのは禁止行為だ。

だが、アレックスの対戦相手は伯爵家の次男。

負けるわけにはいかない事情があるのだ。


「後、俺だけボロボロの剣を渡された試合もあったな。審査員は買収されてた」

「どうしたの?打ち合ったら壊れちゃうじゃん」

「俺が素直に打ち合いしてやると思ってるのか?一瞬で終わらせたに決まってるじゃん」


アレックスは〈勇者〉のストーリーキャラクターであるがゆえに覚醒するまでスキルが使えない体質だ。何処で覚醒したかは分からないが、それまで色んな鍛錬を積んで積んで、積みまくったそうだ。生半可な剣技で相手になる訳が無い。

よってアレックスは予選の相手を次々と秒でボコボコにし、相手の剣と心をボキボキに折っていったそうだ。...これで慢心しないんだから、本当勇者向きだよな。


「.....そういえば、クレル」

「んあ?なんだ」


半分寝ていたらしいクレルが起き上がり、返事をした。


「お前の試合は見に行ったけど、あの力は何だ?」

「あの力って?」

「ほら......右目が真っ黒になるアレだよ」

「アレか.....アレは俺の初恋の人が俺に遺してくれた力だよ」


その話は知っている。この間、古王国周辺でクレルとレベル上げをした時、

クレルが覚醒したのだ。

ギリギリまで放っておいたら、アニメみたいに魔物が吹き飛んで、大群の中からあの姿のクレルが現れたのだ。

本来〈暗殺者〉にあんな技はない。

だから、これはイレギュラー要素だ。

でもデメリットも特に無いようだし、今は放置だな。

そう思って俺が頷いていると、シュナがむくれた顔でクレルに詰め寄った。


「クレル、あなた......私というものがいながら、勝手に浮気してたの!?」

「あああああ、違うって!あっ、そういえばシュナ。武神の力はどうだ?上手くなじんだのか?」


クレルとしては神の力を信用しきれないのだろう。

クレルのかつての恋人を殺した者は、話を聞く限りでは.....神にも等しい威圧感と、力を持っていたから。


「あ....うん!それに、完全武神化しなければ特に体に影響はないみたい」


完全武神化、つまりは身体を神に置き換えるという事だが、

神力を扱えるようになり、魔力、気力に代わるリソースを得られることになる。

そして、疲れ、恐れ、呼吸......様々なものと無縁となる。

だが、操縦桿を握るのはあくまでも本体である武神で、シュナの精神は俯瞰状態になるらしい。そしてこれが長く続くと......人格に悪影響が及ぶらしい。

だがまあ、そこまで長く発動していなければ大丈夫だろう。


「そうか........身体に影響といえば、タツミ先輩は..........」

「寝てるな」

「寝てるよ」

「寝てますわね」


起こすのも可哀想だし、そのままにしておこう。

次はベルに聞いてみよう。


「ベルは調子はどう?」

「調子はどうも何も、私は戦ってないから.....ダンタリアン様様よ」

『ベルが前世の記憶と力を取り戻せば、我など優に超えられるが.....それも叶わぬしな』


まあそうだよね。

ベルの前世.......アムドゥスキアの記憶を封じた媒体は王国内には無いようだ。

ダンジョン勢を使って調べてみたが、音沙汰はない。

個人的には、エルフの森都にあったが魔力災害に巻き込まれて消滅したか、獣人たちの暮らす獣王国にあると考えている。....あそこは大森林だからな。


「リンド、調子は?」

「我に尋ねているのなら愚問だな、ユカリよ。手加減するのに疲れただけで、どうということはない」

「そ、ソウデスカ.....」


流石竜帝、手加減に疲れたのか.....

まあ分からないでもない。テスト期間に入って対人戦のランクがリセットされた後、

レベル120くらいの初心者をなるべく優しくプチッと潰してたのは記憶に新しい。

そして......


「そういえば、ユカリはどうなんだ?」


俺自身の事。

俺はほぼデメリットで七倍ほどまで強くなれるが、それだけではこの先戦えない。

デメリットを受け入れ、数百倍までの強化を施せば、いつか来る龍神リンドヴルムとの戦いも制することができるだろう。

それに...............

俺は腰の刀を撫でた。

大会前に父に会いに行ったとき、


「昔使っていた刀だ。何かの役には立つだろう」


と言って、黒い刀をくれた。

これも、ただの刀ではない.........気がする。

あの父親がくれたものだ、きっとただの刀では無いだろう。

これに宿った力をも覚醒させれば、神をも圧倒できる。

そうすれば、異界の呪文書なんてなくても、帰ることが..........


「.....ユカリ?」

「......あ、うん。大丈夫。私は特に何もないよ」

「そうか」


俺は自分が座っていた席に腰掛け、いつの間にか置かれていた紅茶とチーズケーキを見つめた。


ユカリも仲間たちも、一見仲がいいように見えますが....

隔たりもあります。

王宮編の最後ではそれが大きく関わってきます。




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