sideS-13 アスクレイ祝勝会
昨日のPVが1000を超えましたね。
最高記録更新したのでちょっとうれしいです。
特に何か上げたりはしませんが。
その日、ロイヤルブレーン邸は騒がしかった。
アスキーが乗った魔導兵器アスクレイが大活躍を果たしたからである。
今まで予算や立場に縛られ自由なものを作れなかった技師たち、
ユカリにいいところを見せようとするアスキーのやる気、
そしてアスキーに操縦技術を教え込んだ技師。
それらがすべて実を結び、本大会までの進出を許したのだ。
特に、今回必殺技『アスキーマナブレイク』が決まったので皆テンションが高いのだ。
アスキーの二次予選の相手は重戦士だったが.....
「アスキーマナブレイク、照準よし!発射!」
アスキーが水晶の蓋が付いたスイッチを、蓋を開いて押すと、
アスキーの搭乗している部分.......つまり、アスクレイの『顔』にあたる部分の、
まるでマスクを着けているように見える部分がガシャン、シューと変形した。
そして、顔の内側から鈍重な砲台が姿を現す。
一瞬で装填は完了し、膨大な熱量を内包した魔力の一撃が一瞬で放たれる。
それは重戦士(あまりの発射速度に対応できなかった)に直撃し、大爆発を巻き起こした。
即座に発射口を収納していなければ、アスクレイも内部に何らかの損傷を受けていたであろう爆発で、多重結界は二度目の破裂を迎えた。
一瞬で発生した凄まじい熱量の一撃は多重結界5連を容易に消し飛ばした。
会場にいた魔術師全員が一斉に危険を感じ、全魔力を使って6個目の結界を補強しなければ王都は今度こそ壊滅していたであろう威力であった。
「いやー、アスキーマナブレイク.......魔力圧縮収束砲、だっけ?威力高すぎよ。次はもっと調整しないとね」
「でも、あなたの魔力変換効率えげつないわね.....いや、アスキー様の用意した魔水晶がいいのかしら.......?あんな威力の砲撃を放ってもまだ、数時間活動し続けられるんでしょ?」
「理論上は5発まで撃てるからねえ.....」
技師たちは、麦酒を煽りながら自分たちの成し遂げた成果について語り合う。
ある者は魔水晶の魔力を効率よく動力に変換する魔道具を、ある者はエネルギーを圧縮する装置を、ある者は操縦しやすく、全体を把握しやすい操縦計器を.........
皆、数々の実験と天井のない予算で完璧な装置群を作り上げたのだ。
「それにしても.....この技術、普及させたくない?」
「そうだね......なにせ、アスキー様でも操縦できて、二次予選まで勝てる兵器だもんね」
「でも、今のままじゃお金がかかりすぎる。もっと削らなきゃ」
「どこまで安くできるかねぇ...........」
技師たちは話し合う。
そして、議論が熱くなってきたとき........アスキーが現れた。
「皆揃っているか?」
「はいはーい、揃ってますよ!」
「さあさあ、薔薇の園へどうぞ!」
女技師の一人が隣の女錬金術師の間にアスキーを勧める。
アスキーはそこに無表情で入った。
そして笑顔で感謝した。
「皆には感謝している。ユカリ様に俺の忠誠をしっかりと示すことができた」
「いえいえ!全てはアスキー様がご自分で為されたことです」
「私たちはアスキー様のお手伝いをしただけ.....」
技師たちがアスキーをフォローしようとした時、
アスキーが机を拳で叩いた。
ドォンと音が鳴り、全員が黙りこくる。
「ユカリ様は全員が全員平等に称賛されることを望んでいる。まさかお前ら、この俺に逆らうのか?」
「いっ!?いえいえいえいえいえ!そんなつもりは!」
「ごめんなさいぃぃぃぃ!」
「申し訳ございませんでした.....」
全員が震えて謝るが、アスキーは呆けた顔をして言った。
「?何をそんなに怯えている。お前たちの功績を俺は認めると言っているんだ。アスクレイで優勝した暁には、お前たちを式典で紹介する。それで稼げなければ、俺が一生雇ってやる」
「本当ですか!?」
「そんな、過ぎた褒章で........」
「俺の話が聞こえんのかあぁぁああ!」
再びアスキーが机をぶっ叩いた。
アスキーは立ち上がり、全員を睥睨する。
「ユカリ様はお前たち全員を称賛した。俺はお前たちに正当な褒章を与え、認めた。それを否定できるのはお前たち平民ではない、貴族の俺だけだ。迷惑だというのなら、最初から来るな。終わりだ」
「あ、アスキー様.........」
「一生ついていきます!!!!」
全員が立ち上がり、アスキーに礼をした。
アスキーはそれを見て、満足そうに頷いた。
◇◆◇
その頃、アスクレイの整備のために作られた地下ドームでは、
作業技師と鍛冶師たちが酒を飲んでいた。
女性の多い魔導技師や錬金術師と違い、こちらは野郎ばかりだ。
「にしても、最初はこんなの無理だと思ったぜ」
「全くだ。全身にかかる加重、部品の一つ一つに蓄積していく負荷。自重で潰れるのがオチだと思ったんだが.......」
「魔導技術って、すげえなぁ.........」
「ああ。金属を硬くしたり軽くしたり、そもそもの”掛かる力”を削減したりなあ......」
全員魔法が使えないので、それらの技術については全く詳しくない。
だが、いい酒の肴にはなるのだ。
魔法技師たちが麦酒だったのに対し、こちらは全員かなりきつい酒を水で割って飲んでいる。その割り方もいい加減で、いつぶっ倒れてもおかしくない飲み方だ。
「ま、半分くらいは俺たちの功績だけどな」
「半分じゃ少ないぜ。八割は俺らのもんだ」
二人が口々に言って、他の仲間も「違げえねぇ」と笑った。
だが、それまで黙っていた魔法技師が口を開いた。
「部品なんて誰でも作れるだろ、俺たちが魔法をかけたんだから、俺たちが八割だ」
「何だとてめえ!?」
「やるか!?」
魔法技師と鍛冶師が額をぶつけ合い、叫んだ。
そして.......
「大体お前らはいつも静かに部品を打ってて、カッコイイと思ってるのか!?」
「うるせえな!お前ら技師はハンマーも持てないヒョロガリばっかりの癖に現場の俺たちに優しくしねぇ!」
「何だと!」
「一発殴る!」
そして、取っ組み合いの喧嘩に発展した。
酔っ払いと化した他の技師と鍛冶師は喧嘩を酒を飲みながら見つめていた。
そこに、酔っ払ったアスキーが入ってくる。
「皆、今日までヒック、よくやってくれた......おい、何をしている!争うな!ユカリ様に捧げる部品を作る手を、魔法をかける手を怪我したらどうするつもりだ!」
「アスキー様、こいつおかしいんですよ!俺たちのほうが希少なのに一般部品を扱う鍛冶師の方が優れてるって」
「アスキー....様!こいつら魔導技師、希少価値があるからってえばりくさって、俺たち鍛冶師を舐めてやがるんです」
アスキーは二人の言い分を聞くや否や、二人の頭を掴んでぶつけた。
「「何をするん(だ)ですか!?」」
二人が疑問の声を上げると、アスキーは酔っぱらって真っ赤な顔で言った。
「お前らはユカリ様のために仕える俺にとても優秀な部品や魔道具を作ってくれる、いわば俺の直属の部下だ。.....俺はうるさい部下が嫌いだ。.....つい殺したくなるほどにな!」
「えっ」
「や、やめっ.....」
アスキーは剣を抜き........振った。
それは二人の前に突き刺さる。
地面に突き刺さった剣を見て、二人が恐る恐るアスキーを仰ぎ見る。
アスキーはふんぞり返って言った。
「ユカリ様は俺の部下が死んだと聞いたら悲しむだろう。だから生かしておいてやる。本大会までの整備をしっかり行え」
それだけ言って、アスキーは部屋を後にした。
だが、扉の前で足を止めた。
魔導技師が尋ねたからだ。
「アスキー様、あなたはどうして、"ユカリ様"に、盲目的に仕えているんですか!?貴族であるあなたなら、その程度の人間を恐れることなど…」
その問いにアスキーは…
「全ては、敬愛するユカリ様のために」
ただ、そう答えた。
そして扉を開き出ていった。
後を追おうとする魔法技師を、鍛冶師が止めた。
「聞いてやるな。あのお方はユカリ様に恋してるんだ。それを無理矢理忠誠に置き換えてるだけさ。俺には分かるんだ。俺もあんな時期があった。二十年くらい前だがな。」
「でも……」
「さっきは済まなかった。一杯やろうぜ」
鍛冶師は盃を魔導技師に差し出した。
魔導技師は少し迷った後それを受け取り、一気に煽った。
「飲みましょう。夜は長いですからね」
「それをお前が言うか?」
「いいじゃないですか、鍛冶師さん」
「ヘッ、分かったよ」
二人は乾杯のように盃をぶつけた。
そしてアスキーの口調をまねた。
「「全てはユカリ様のために!」」
そして夜は更けていく。
結局、ロイヤルブレーン邸の明かりが消えたのは朝日が顔を出してからであった…
アスキーは当初モブキャラにする予定でしたが、物語の重要人物になりましたね。
忠誠心と恋心が今後どうなるのか楽しみにしていてください。
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