Ep-112 二次予選5 リンドヴルム対ルドルフ
最近出番のないアノ人。
解放団メンバーは王都編が終わっても出番がある....かも。
投稿したつもりがしていなかった......
遅れましたすいません
翌日。
王都中心部の空き地から放たれる気配に、
王都の人々や野良猫、ドブネズミ達は落ち着かない時間を過ごしていた。
「..........................」
「..........................」
空き地では、普段の形態より大きくなったリンドと、
ナイフを逆手に構えたルドルフが対峙していた。
お互いがお互いの力量を正しく理解し、合図とともに先手を取れるようにしているのだ。
竜族と人間ではライオンと鼠だ。
だが、鼠だってただ殺されるだけのはずがない。
窮鼠猫を嚙む..........油断が敗北を生むのだ。
殺気や威圧をぶつけ合う二人を、見つめる二人がいた。
全身に絆創膏を、腹に包帯を巻いたカイと、魔杖ダンタリアンを大きく変形させてそれを抱くベルだ。
「凄いな。ルドルフのオヤジがこっそり出てるって知った時は大丈夫か?と思ったけど、この威圧をもろに喰らって普通に構えてられるなんてててて....」
「カイさん、そんなにガタガタ震えると傷口が開きますよ?」
「わわわわわ、わかってるささささ。でででも、ルドルフのオヤジの試合、見なきゃ......」
「そ、そう........」
カイの腹の傷は深く、治癒薬や魔法を使っても治しきれなかった。
一応ベルが治したが、少しジャンプすると浅い傷が開いてしまうほどには完治とは言えなかった。
だが、ルドルフがお忍びで参戦していると聞き、居てもたっても居られず、看病のペリカを振り切り観戦へと赴いたのだ。
「始まるのは...............もうそろそろか」
「そうね」
「始め!」
合図が鳴り響き、両者が激しく衝突.........せず、リンドの握撃が空振った。
リンドの攻撃を紙一重で回避したルドルフは、ガラ空きの胴にナイフを滑らせ...........
リンドが素早く翼を開き、飛び上がって回避する。
そして、空へと飛び上がり......
ルドルフへと拳ごと身体を叩きつけた。
ドゴオォォォン!
凄まじい振動が巻き起こり、空き地を、仮設の観客席を大きく揺らした。
カイの身体が振動を受け、カイが少し顔を顰める。
「うっ…」
「大丈夫?」
「俺はガキじゃない、大丈夫だ」
「私も近所のお姉さんじゃないんだけど?」
二人がイチャイチャしている間にも戦いは続く。
ダンタリアンが一言も発さないのは、戦いを見守っているからだ。
⦅外から手出ししたくなるな…頑張れ…いやいや、何を考えている。リンドヴルムよ負けてしまえ!そうすれば相対的に我が…いや、ベルのことだ、リンドヴルムを心配する…しかし勝たせては…うむむむむ⦆
……….正確には、見守っているというより心の葛藤と戦っているのだったが。
ダンタリアンの視線の先では、人間などという弱い生物と同じ土俵で戦う、
誇り高い竜族らしからぬ男の姿があった。
◇◆◇
(...........いかんな)
間隙を突き攻勢に出、ルドルフの攻撃を紙一重で躱す。
そんな戦いを繰り広げていたリンドの脳内に、一つの焦りが生じた。
(竜の里を出て以来、久しく苦戦などしたことが無かった。鍛錬を欠かしていないわけではないが、やはり地の力に頼った戦法でしか戦えぬというのか.......?)
本気は出せる。
だが本気を出せば、目の前の男は生きて帰れないだろう。
人間の土俵で戦う、これこそが自分が戦士としてより成長できる指標だと思っていたリンドだったが.........自身が未だ竜族の思考から抜け出せていなかったのだと実感した。
目の前の男は強い。
「へへ、流石は.....ユカリの姐御の仲間でやすね、放つ攻撃も、あっしの攻撃を避けるその動きも洗練されていやす」
「..............」
死闘の最中だというのに、喋りだす男にリンドは危機感を感じた。
この男、何かしてくる!
ルドルフは懐から取り出した球体を、上に向かって投げた。
直後、珠が爆発して溢れんばかりの『水』が噴き出した。
リンドは何だ水かとそれらを無視しようとし.........気付いて、上を向いた。
口からブレスが放たれ、『水』を蒸発させた。
風圧で『水』が吹っ飛び、リンドの周囲に落ちてジュ~と音を立てて煙を上げた。
「.....竜水か」
「へへ、まさか見破られるとはね.......」
竜水とは、所謂王水のことである。
リンドの鱗なら弾けるが、人間形態では弾くことは出来ない。
何らかのダメージを受けるのは必至であった。
(俺程度にわざわざ竜水を使うほどでもないだろうに)
リンドはそう思いつつ、攻勢に出る。
「神竜爪」
人間には扱えぬ、固有の竜魔法。
それを両爪に纏い、リンドは一部の隙も無い猛攻を繰り出す。
少しくらいなら、真の実力を出してもこの人間は死なない。
そう判断したリンドは、竜魔法を使い始めたのだ。
「これは、手強い......とぉっ!」
猛攻に耐えかねたのか、ルドルフが後方へと大きく飛んだ。
リンドは翼を広げてルドルフへと飛ぼうとしたが.......
(また何かしてくるな)
と思い、軌道をずらす。
直後、他のものとは違う、金色に輝くナイフがギリギリを通り抜けていった。
(危ない、危ない.......)
リンドは内心危惧していた。
致命傷を負えば、竜の血によってそれらは瞬く間に治るのだが、それは大会の規則に抵触する。
かつての竜族の友達なら、こう言っただろう。
『なに?傷を負わずに人間を倒す方法だって......?ブレスで十分じゃないか』
と。
だが......
「我は......我は竜帝だ!」
リンドは翼を使って勢いよく飛び出す。
そのまま空へと飛び立つ。
リンドを掠めるように幾つもの金色が煌めく。
しかしリンドはそれらを振り切り、結界ギリギリまで到達する。
(竜族には狭すぎるな........行くぞ!)
リンドはそのまま、地面に向かって突進した。
「へへへ.....その攻撃は一度見やしたね.....!」
ルドルフは素早くそれを避けようと動くが......
「....あっしを狙っていない......?」
「その通り」
リンドはルドルフから少し離れた地面に拳ごと身体を突き刺さ.......ず、地上ギリギリで反転しルドルフに向けて突進した。
「これは.......ぐぅうっ!」
ルドルフの顔が苦悶に歪む。
だが、攻撃はまだ終わっていない。
リンドはルドルフを掴み、上空へと飛び上がった。
(確か結界の外に出ても、フィールド内ならルール違反ではないのだったな)
リンドはそう考え、翼に魔力を送った。
「神竜翼!」
リンドが急加速し、超高速で結界に衝突し.........大穴を開けてさらなる高空へと飛び出す。
そして、雲をも突き抜け超高空へと飛び出した。
急加速にも耐え、ルドルフは何とか抜け出そうとする。
だが.......
キィィィィィィン!
凄まじい音を鳴り響かせながら、リンドは素早く反転し、
地上へと落下した。
雲を突き抜け、王都の町並みが段々と大きく見えるようになってくる。
そして、落下地点......空地の中心が最後に見えたところで、リンドは目を瞑った。
ドドゴゴオォォォン!
大激震が王都を襲い、耳を劈く轟音と凄まじい衝撃波が巻き起こった。
かつてベルとシュナが協力して倒した魔導巨兵の時の数倍の衝撃波はまず、
観客席に直撃した。
「ぎゃああああああああああ!」
「うわああああぁぁぁああ!?」
仮設の観客席は衝撃波に耐えられず崩壊し、ベルとカイは宙に投げ出された。
他の客も地面に落下し、骨折はしていないものの怪我はしているようだ。
ベルとカイはダンタリアンの魔杖が輝き、落下のダメージを緩和したおかげで無事に着地できた。だが、被害はもちろん観客席だけではなく........
周辺の建造物は全て崩壊し、遠くの建物もガラスなどが破壊された。
道路を走っていた馬車や通行人たちは吹っ飛ばされ、王都は大混乱に陥った。
巻き起こった暴風と、衝撃が収まった後........
空地中央にて片手をついた姿勢で立つリンドがいた。
「我の勝利だ......!」
「ルドルフ選手、戦闘不能!勝者、リンドヴルム選手!」
ルドルフは地面に激しく叩きつけられたが、直前に殆どの衝撃をリンドの手に受け流していたおかげで重傷で済んだ。
だが.........
「ルドルフのオヤジ!?大丈夫か!?」
「カイさん!傷口が!」
一人傷口が開き、再び医務室送りになった男もいた。
本大会、準決勝、決勝では二話、三話構成のものも作りたいですね。
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