Ep-108 二次予選 ウーリア対ユカリ
時間がないので修正は後回し
そして、二次予選が始まった。
俺の相手は.........ウーリア・ノーツか。
誰だろう......まあ、Dランク冒険者だし知らなくてもおかしくないか。
俺が空地の中心へと出ると.......
「.............................................................」
凄まじい威圧と殺意をまき散らしながらこちらを睨みつける剣士がいた。
……….おかしいな、全く覚えがない。
なんでこんな、怨恨を煮詰めたような視線を向けられなければいけないんだ......?
「あ、あのう...........どちら様でしたっけ?」
「..................ッ!」
ますます殺意が増したな。
「あの、本当にわからなくて........」
「..........たが」
「へ?」
「この、売女がぁ!」
「はぁ?」
何でどこの誰かもわからない馬の骨に売女呼ばわりされなければいけないのだろうか......
心底疑問だ。
「お、俺の誘いを蹴り、それをネタに俺を失脚させやがって......この恨み、お前を殺して犯しつくして晴らしてやる!」
「???」
《あ、思い出しました。ウーリア・ノーツとは、以前マスターに寄ってきた豚貴族です》
あ、あああああ!
あの時の!
この数か月でよくまああんなに痩せたね。
中小貴族から爵位剥奪で平民に落とされたんだっけ?
で、そこから俺への恨みだけでここまでのし上がってきたのか。
凄いじゃん。
「......始め!」
感心してたら始まっちゃった。
ノーツ元男爵が素早く剣を抜き、俺に駆け寄ってくる。
うーん、遅いなあ........
アスキーも俺のためとか言って訓練に訓練を積んだとか言って頑張ってマッチョになったけど、それでも足りないのが、〈スキル〉と〈固有スキル〉だ。
恐らくだけど、主要キャラ以外は本来スキル習熟度合いが0なんだろうな........
「ほっと」
俺は歩いて縦に振るわれた剣を避ける。
……..可哀想だけど、一撃で仕留めてやるか。
俺は空転・略撃で一気に近づく。
そして拳を構え..........振り抜いた。
バキィイイイン!
金属が響くような音が、空き地中に鳴り響いた。
俺は驚いた。
ウーリアが、剣で俺の拳を受け止めていたのだ。
「————なっ!?」
「舐めるなよ、イカサマ使いの売女が!」
こんなことってある?
俺は振りぬいた拳を引くようにし、反対の足で蹴りを繰り出す。
だが.......
「くっ!?」
「はっ、今日のパンツは白か。芸の無い」
蹴りをつかまれた。
嘘だろ?だって、見えてたとしてもかなりの威力を持ったキックだ。
掴もうとすればかなりの腕力と、それなりの実力が必要になるはずなのに......
「クリエイトウェポン、ナックルダスター!スキルセットチェンジ!セットグラップラー!スピニングストライク!空転・瞬突!エアーダッシュ!」
俺は〈拳闘士〉のスキルで素早く離脱する。
その勢いでウーリアは吹っ飛ぶ。
身体能力や実力は大きく上がっていると仮定できるが.........
本人はまだそのスペックに追い付いていない?
なら、まだ勝ち目はある!
「デリートウェポン!クリエイトウェポン、時空剣クロノス!空時盾ウラヌス!スキルセットチェンジ、セットグラディエーター!」
俺は左手に盾を、右手に剣を呼び出す。
そして、ウーリアから距離を取る。
仮に身体能力が向上していた場合、あらゆる浅慮な攻撃は返される事になる。
なら.......
「〈オーバークロック・スローワールド〉、〈ショートジャンプ〉」
剣の能力で自身のスピードを引き上げ、盾の能力で空間を短縮する。
そして、俺は完全にウーリアの死角に回ることに成功する。
そして.......
「スラッシュブラスト!」
「見切ったァ!」
弾かれた!?
嘘だ、こちらの手の内は知られていないはず。
じゃあ、この世界では一般的ではない.....というかハイエルフとかくらいしか存在を知らない転移で移動してきた俺を、一瞬で捉えたってのか.....?
おかしい。ありえない。頭の中にそんな言葉が浮かぶ。
もしかして、これは.......
「おい!」
「どうした?降参する気になったか?」
俺は強い力で弾き飛ばされそうになる剣を抑えながら、叫ぶ。
「その力はなんだ?どうして手に入れたッ!?」
「この力か?簡単なことよ!お前に復讐するために、復讐の神から受け取った力よ!」
はい、例の奴ら案件だ。
復讐の神はゲーム時代も、この世界にも存在していない。
ウーリアは恐らく、マルコシアスか、ガルム、フェンリルの何れかから力を受け取り、
この大会に出場したのだ。
とりあえず、ウーリアが強くなった理由は分かった。
「さあ、神の力の前にひれ伏して、股を開けぇ!」
「うん、いいよ....ちらっ」
とりあえず、胸を見せてみた。
《マス............ユカリ!何してるの!ボクのの裸は最愛の人にしか.....》
(ちょっと黙ってろ)
ちなみにブラは付けてます。
ただ、元男爵は耐性がなかったというか、態勢が整ってなかったというべきか.....
「な、なぁッ.............!?」
「隙あり!アッパースラッシュ!」
「ごぼおおおお!」
ふむ、意識がそれていると攻撃を受けてしまうという事は、あくまで身体能力と知覚能力の向上だけなのかな?
さっきからムスビがうるさいが、これも戦略の一つだよ戦略の!
「空転・受吹!」
俺は吹っ飛ばされるようにして後ろに下がる。
これは対応できるのかな?
「デリートウェポン、クリエイトウェポン、精霊樹の弓!スキルセットチェンジ、セットシューター!......ドッペル・カレイドスコープ!」
影から分身が飛び出す。
事前に詠唱したそれぞれの武器を持って。
この場合意思は要らないので制限している。
俺は弓を引き絞り、矢を放つ。
「何の!はっ!とぉっ!せぇい!」
「スクエアフィールド」
立ち止まって矢を弾くウーリアを、緑色に光る四角が囲う。
「何だこれは.......うっ、結界か!姑息な手を.........」
「姑息かどうかは.........私が決めることだよ!」
「プロミネンスバースト」
「プロミネンスバースト」
結界を張った分身とは違う、別の二体の分身が、同時に魔法スキルの「プロミネンスバースト」を放つ。
本来ならMPがごっそり減るのだが、ウェポンマスターに限っては「マジックリュース」、「マジックサルベージ」、「マジックリデュース」、「マジックリサイクル」、「マジックリターン」、「マジックリバース」......等の固有スキルが存在するので、あまりMPを気にせず戦えるのだ。
「く、こんな魔術が!?ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」
二つのプロミネンスバーストを同時に喰らったウーリアは、爆炎に包まれた。
だが、勿論俺もこれで油断などしない。「やったか!?」なんて言わない。
「デリートウェポン」
「デリートウェポン」
「クリエイトウェポン」
「クリエイトウェポン」
「白刃剣ライトエッジ」
「黒刃剣ダークエッジ」
「スキルセットチェンジ」
「スキルセットチェンジ」
「セットパラディン」
「セットダークナイト」
二体の分身は、それぞれ対となる剣とスキルを手に、爆炎の中へと進んでいく。
あの二つの職業......〈聖騎士〉と〈闇騎士〉は特殊な職業だ。
最大強化してもなお段階を経るスキル構成なのもそうだし、何よりお互いがお互いの弱点を補えるスキル構成でもあるのだ。
それ故.........
ギィン!ガキィィン!
爆炎の中から剣と剣が激しくぶつかる音が聞こえる。
「ホーリーソード」
「ダークネスソード」
「クソ、何だこの幻影は!あの女と同じ顔.....死ねぇ!」
しかし、分身が戦っているのを後ろから見ていると、カードゲームをやっている気分になるな。VRだからまるでアニメみたいに、モンスター達と一緒に戦えるんだよな。
「照準よーし.....発射!発射!発射ぁああ!」
俺も、分身の攻撃の隙を縫うように矢を放つ。
こういっちゃ悪いが、ウーリアがどんなに強化されても、俺の仲間たちのように「数」と戦うことは難しい。なんせスキルも固有スキルも無いので、数に押されて死ぬしかないのだ。
「クソ.....卑怯で姑息な、戦い方だ.....まさに売女に相応しいなッ!」
「どう思うかは人それぞれだから、私は否定しないよ!発射ァ!」
「ホーリールイン」
「ダークネスブラッド」
「うぉおおおおおお.....!無駄だ、無駄だぁあああああ!」
ありとあらゆる攻撃を仕掛けまくり、MPがヤバくなったら分身が影の中でこっそりマナポーションを使うといったことを繰り返していく。
そして...............
「何!?」
「ホーリールイン」
「ダークネスブラッド」
「ぎゃああああああっあああああ!!」
突如、バッテリーが切れたようにウーリアから力が抜けた。
そこに分身たちがラッシュを仕掛け、戦闘不能にした。
「ウーリア・ノーツ、戦闘不能!勝者、無言の執行者ユカリ・フォール!」
アナウンスが鳴り響き、観客席から声が上がる。
しかし、この観客席って仮設っぽいよな.......崩れそうだ。
「勝った、か......」
俺は血溜まりに伏すウーリア・ノーツを見下ろした。
日々鍛錬を欠かさないアスキーをも超える力と、知覚能力。
そして、その力が突如消えた。
…………どうやら、大会も一筋縄では行かないようだな。
奇跡のリサイクルキャラ。
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