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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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Ep-105 予選5 リンドヴルム対ロイエンタール&ヒショー対ケイレブ

お互い短い戦いなので一話に統合しました。

二人は予選では余り活躍しません。

リンドが空き地の真ん中へと進み出る。

ただ、リンドの姿に驚く者はいない。

何故ならばリンドは、王都ではもはや知られた存在だからだ。


「貴様がリンドか?我が名はロイエンタール!我が相棒『レフ』と『ライ』にてBランクとなった男!いざ尋常に、勝負!」

「そうか。受けて立とう」


ロイエンタールが大仰にリンドを挑発するが、

リンドは軽く返しただけであった。

そして沈黙が流れる。


「始め!」


数十秒続いた沈黙を破ったのは、アナウンスの声。

その瞬間、両者は動く。

ロイエンタールは素早い抜き撃ちにてリンドを狙い、対するリンドは消える。

高速移動にて銃弾をかわしたのだ。


「ぬぅっ、素早い!だが、そこだ!」


ロイエンタールは流石高ランク冒険者といった風な滑らかさで、左足を支点にターンを決める。そして発砲。

撃った先で一瞬空気がブレ、リンドが姿を表す。


「流石だな」

「お褒めに預かり、光栄の極みである!」


ロイエンタールは後方に大きく跳ぶ。そして、空中で弾を詰めた。

フリントロック銃ではないので、一度に3発分までしか弾を込められないのだ。

勿論、その隙を逃すリンドではない。


「ハアアァ!」

「おおっと!?」


リンドの拳は間一髪でかわされた。

ロイエンタールも、伊達にBランクを名乗っている訳では無いのだ。


「おおおおお!ゼロ距離射撃だァ!」


ロイエンタールはそのまま銃弾を全て放つ。だが…


ガイン!ガキン!


「な、なんて硬さ…貴様、蜥蜴人族(リザードマン)では無いのか?」

「なに?」


自身の人化した姿が蜥蜴人族に近い事は理解していたが、

リンドは少しイラッと来て、声を荒げた。


「我を蜥蜴人族などと一緒にするな」

「じゃあ何族だ!?角のある蜥蜴人族かと…」

「我ら竜族の誇り高き人化形態を、下等な蜥蜴人族と一緒にされるとは…」

「はあ!?竜族?嘘を吐くで無い!伝説の竜族がこんなところに居るわけが無いであろう!貴様、やはり蜥蜴人族…」


ロイエンタールがそこまで叫んだところで、リンドの身体が発光する。

そしてそこには…4メートルほどの大きさの竜…リンドヴルム5%出力形態が立っていた。


「誰が蜥蜴人族だ?」

「ば、馬鹿な…伝説の竜族がこんなところに…おかしい」

「では処刑する」


リンドはそのまま息を吸い、吐いた。

吐息と共に豪炎が吹き出し、ロイエンタールを呑み込んだ。

炎が消えた後には、全身焼け焦げ、何とか生きているロイエンタールの姿があった。


「ッ………勝者、リンドヴルム・ドラゴンロード!」

「この我が、“怒らせられた”(プッツンさせられた)か…竜の誇りとは厄介なものよ」


リンドは憂鬱といった表情で、観客席へと戻って行った。


◇◆◇


そして、それから数十分後…

再び空き地に二人の選手が姿を表した。


「ヒショー選手、ケイレブ・デューン選手、入場してください!」

「はい」

「やってやるぞ!」


燦々と照る太陽の光すら吸い込む黒い執事服に身を包んだヒショーと、

白い上質な服を着たケイレブ。

両者はまさに対照であった。


「お前が、ヒショーって奴か?」

「はい。それが何か?」

「このケイレブ・デューン様の踏み台になれるんだ、感謝しろよ」

「そのような台詞は(わたくし)めを踏み台にしてから仰ってください。無様ですよ?」


ケイレブの明らかな上から目線の台詞に、ヒショーは静かに笑って返した。

それで明らかに逆上するケイレブ。


「ふ、ふん。少しは手加減してやろうと思っていたのだが…気が変わった。お前は痛めつけてから殺してやる!」

「そうですか…では、ケイレブ様の腕前、しかと拝見させていただきましょう」

「始め!」


二人は距離を取ることもなく、その場で対峙し合う。

数十秒の睨み合いの末、ケイレブが先に剣を抜いた。

ヒショーは動かない。


「取った!死ねぇえ!」


ケイレブの剣が真っ直ぐにヒショーの脳天に振り下ろされ…

そこで止まった。

まるで、凄まじく頑丈なクッションに棒を振り下ろした時のように…


「終わりですか?」

「っく、まだだっ!」


ケイレブは頭から剣を離し、首に向けて振る。

だが…それすらも首筋で止まってしまう。


「基本の振り方がなっていませんね。体ごと捻るようにして振ってみてください」

「この…執事風情が…ッ!」

「私めはあなたに仕えているわけではありませんので」


ヒショーは乱暴に振るわれた剣をはらりとまるで草でも払うように薙ぎ払った。

ケイレブの姿勢が崩れるが、ヒショーは動かない。

まるで弟子が立つのを待つ師のように。


「何故攻撃しない…?」

「マスターから殺すな、と言われているので」


地面に手をつき何とか転ばずに済んだケイレブがそう問う。

その問いにヒショーは何でも無いことのように答えた。


「くっ…舐めやがって!僕はデューン家のケイレブだぞ!正々堂々戦え!」

「ですが、先程から攻撃をしているのはそちらだけですが…?」

「黙れ!!」


ケイレブが立ち上がり、再び剣を振るう。

だがその動きには先ほどヒショーから言われた動きが混ぜられていた。

それは確かに威力に影響を与え…


ギギィ…


「どうやら、少しはマシになったようですね?」

「ッ…言ってろ!」


剣は確かにヒショーの首に傷をつけた。

だがそれは、見る人が見ればすぐに分かる手加減でもあった。

ユカリが見たら、「あ、体表面を覆ってる魔力を減らしたんだ。そういう使い方もあるんだな…」などと感心しそうな。


「[闇剣(あんけん)]」

「な…?」


すると、それまで一切攻撃をしなかったヒショーが、闇夜を切り取ったかの様な剣を生み出し、左手で持った。


「マスターは一般人はなるべく殺すな…と仰られましたが、傷をつけられた場合は…正当防衛ということで殺してしまっても良いそうです」

「ま、まさかその為に…ッッ!」


ヒショーはそれだけ言うと、風の様に動いた。

言葉を聞いた瞬間剣を盾の様に構えたケイレブだったが、それが命運を分けた。


バギギキィィン!


と、普通なら聞かない様な音が鳴り、剣と剣が激しくぶつかり合った。

そして…ケイレブの剣が砕けて崩れ落ちた。


「ぼ、僕の剣が…そんな、ミスリル製だぞ!?」

「私めの[闇剣]の前には敵わなかった、ただそれだけです」


ヒショーはそう言って、剣を振り上げた。

そして…マスターと同じ袈裟斬りを披露した。

鮮血が飛び散る。


「ぐああああああぁぁぁあああ………………」

「ケイレブ・デューン、戦闘不能!勝者、ヒショー!」


余りに地味な戦いだった為、誰も拍手や歓声を上げたりはしなかった。

だが、ヒショーにとっては…


「ヒショー、いい戦いだったよ!」

「お褒めに預かり、光栄でございます、マスター。」


マスターの褒め言葉が何よりの労いなのだ。


ヒショーの旧名は「アーシー」だったようですね。

修正しました。




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