Ep-105 予選4 ベル対イルマ
時間がないので修正は後回し
ベルとイルマは対峙する。
既にベルが握りしめた杖には膨大な魔力が、イルマの両足には気力が纏われている。既に臨戦態勢だ。
イルマが鋭い視線と共にベルに問いかける。
「…へえ、姐御のルームメイトだとは団長から聞いてたが…なかなかの構えだ。行くところが無くなったら開放団に来ないか?」
「姐御って…まあ、調査する遺跡が無くなったら行こうかな」
「遺跡…?まさかお前、遺跡荒らしのベルか!?」
「遺跡荒らしですって!?私は慎重な調査を心掛けてるの!荒らしてなんかいないわ…!」
「始め!」
非常にわちゃわちゃとした雰囲気の中戦いが始まった。
戦いが始まっても口論を続けるほど平和ボケはしていないベルは、地面を魔法で動かして距離を取る。イルマがそれに追随しようとするが…
「ッ、これは…雷弾…じゃない?何だこれはッ!」
ベルが後ろに下がる時に放った雷球、それらが飛来せず、宙に浮遊しているのだ。
「ええい、何だか知らないが…飛ばしてこないだけ愚かだねッ!」
イルマは雷球地帯を走って突破しようとするが…
ブブブ…
「な、何だァッ!?体が………」
一つの雷球の色が黄色へと変わる。
そして、イルマの身体もまた黄色に光り出す。
「く…引っ張られる!」
イルマにまとわり付いた光と雷球が呼応するように点滅し、イルマが徐々に引き寄せられる。
「洒落臭い!」
イルマは素早く跳んで脱出するが、跳んだ先の雷球もまた黄色に色を変えた。
「マジかい?」
イルマは着地と同時に向きを変えるが、その方向の雷球も黄色に変わる。
「ははぁ、一種類だけかい?引き寄せられるだけなら…なに?」
イルマが余裕そうに言った瞬間、イルマの足元にあった雷球が赤く変わる。
そしてそれは、そのままイルマの元へと一直線に飛ぶ。
「うわあぁぁぁ!?危ないところだったぜ」
何とか避けたイルマは、視界に映る黄色の雷球の幾つかが赤く染まるのを見た。
「これは確かに…相当辛いね!」
しかし、流石は開放団の幹部である。
体の自由が効かない中でも、赤い雷球を全てかわし切った。
遠くのベルが驚きの表情を浮かべる。
「さあ、これでネタ切れかい?…死にな!」
イルマは、四方から引っ張られる雷球地帯を、素早く駆け抜ける。
だが…
「これは…壁?」
イルマを阻んだのは、緑色に変色した雷球が別の雷球とを雷のラインで形成した結界であった。
「こんなもので、アタシの進路を塞ぐことは…え?」
イルマは隙間を通り抜けようとするが、ジジジ…と言う音を聞きつけ振り向いた。
そして、全ての雷球が先程の3倍まで膨れ上がっているのを目にした。
チュドオオオオオオン!
そしてイルマは、何十もの雷球が引き起こした爆発にもろに呑まれた。
雷球結界に閉じ込められていたため、殆ど逃げ場が無かった。
『クハハハハ、これこそ第六軍団長一万二千の奥義が一つ、〈千雷万彩〉よ!』
「えげつないわね…」
それを離れた場所で見ていたベルが、余りの圧倒的な強さに呆れ果てていた。
そう、この魔法を使ったのはベルでは無い。…魔王ダンタリアンだ。
ダンタリアンはベルが使う古代魔術を10000回放ったとしても1%も減らない魔力を持ち、自らも魔術を使える。そして、必要とあらばベルに魔力を渡すこともできる。ダンタリアンの魔杖ある限り、ベルに負けはないのだ。
『それよりも、油断をするな。あの女、まだ生きているぞ』
「えっ…」
見れば、巻き起こった土煙の中からイルマが這い出してくるところであった。
「………中々、強烈だったぜ」
「数百年前の魔王の魔法を食らって、生きてるだけ凄いよ」
「お褒めに預かり…光栄だッ!」
イルマはある程度近付いた瞬間、素早くナイフを投擲した。
そして、それはベルの喉笛に向かってまっすぐ飛び…
バキィイイン!
ベルが普通に投擲されたナイフを視認し、ダンタリアンで受け止めたのだ。
『うぐぅおおお…前々から大事にしろと』
本体である本(コアは本の装丁に付いている魔石)にナイフが深々と突き刺さり、ダンタリアンが恨めしげに声を上げる。
だがすぐにナイフはペッと吐き出され、イルマの足元に転がる。
「拾ってもいいかい?」
「いいよ」
イルマは屈んでナイフを拾う……姿勢のまま、ベルへと斬りかかった。
「やった!勝った!」
「ふふふ」
首にナイフを突き刺し、イルマが勝ち誇る。
だが、そこから一切血は出ず、ベルは微笑んだままだ。
「何を…」
次の瞬間、ベルが膨れ上がる。
そして、雷の大爆発が起きた。
『これが我が一万二千の奥義が一つ、〈換贋雷爆〉よ!』
「なんか、大体爆発するね。…もしかしてダンタリアン、あなた爆発大好き魔王なの?」
『そ、そんな事はない!ただ効率的にダメージを与えるのが爆発であるだけだ!』
そしてまた、離れたところでベルとダンタリアンの声が響く。
「でもさっきから、私は魔法を使ってないような…」
『何を言っている、お前の魔力を消費して使っているぞ』
「え、そうなの?」
『でなければ、今頃王都は最初の雷球爆発で消し飛んでいたわ。本来はそれほど強力な魔術なのだ』
「ひぇええ…」
そして、土煙が晴れたところからイルマが駆け出してくる。
「あの人も頑丈だね」
『そうだな…』
「ねえダンタリアン」
『何だ?』
「次は私が自分で仕留める。…開発したオリジナル魔術で」
『ほうほう、興味がある。やってみせよ』
「了解!」
イルマが近づくまで数十秒と無いが、ベルはそれまでに素早く詠唱を終わらせる。
「フリージングドラゴン!」
ベルの足元に青の魔法陣が開き、そこから冷気が噴き出す。
それは空高くまで噴き上がる。そして、冷気が徐々に形を成して行く。
冷気は東洋の竜を模したような形になり、空に向けて吼えた。
「コォオオオオォオオオオン!」
『ふむ、動物系の人工精霊核を埋め込んでいるな?…我の助言をしっかりとモノにしたか』
「そうそう」
氷で構成された竜は、そのまま首をイルマに向け…突っ込んだ。
轟音と共に、大地が振動する。
そして、大氷山が空き地のど真ん中に発生した。
『これは…凄まじいな。だが、人工精霊核を魔法の軌道調整に使うところは…嘆かわしい。だが、ベル。流石は魔王の生まれ変わりよ。過去にも作れるものはほぼ居なかった人工精霊核を、一部だけとはいえ再現してのけるとは』
「ふふふ、褒めてくれてるの?ありがとう」
そして土煙と水蒸気が晴れ…
氷漬けになったイルマが現れた。
「イルマ、戦闘不能!勝者、ベル・アムドゥスキアス!」
大きな歓声が上がった。
クレルに続く名勝負と言われた勝負になったそうだ。
数百年前の魔王が使うオリジナル魔術を何個も披露した勝負だからである。
イルマの風評は…神のみぞ知る。
『二次予選では一撃にして仕留めてやろう。本番まで本気を出すのが惜しい』
「そうだね…」
二人は話し合いながら、氷漬けのイルマを置いて観客席へと戻った。
完全なワンサイドゲーム…
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