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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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SEP-9(C) "ユカリ"との決着(後編)

今回長いです。

遅れた理由はなるべく今回手に入るスキルをテンプレから遠ざけたかったからです。

気が付くと俺は、白い世界に倒れていた。


「........ここは?」


周囲には何もない。.......白い世界とは対照な犬以外は。

犬は3つの首を持っており、俺が起きたことに気づくとそばに寄ってきた。


「アオォォォン」


右の首が吠えると、音もなくバッ!と黒い石畳の道が俺たちの前に現れる。

マップが生成されるように、スッと石畳が引かれたのだ。

….恐らく、三つ首だしこいつは冥府の門番ケルベロスだ。

どういう理由でここに居るのかは分からないが、騙したり、悪いことを考えているようには思えない。

俺は道を進もうとする。

すると、俺のスカートをケルベロスが引っ張った。


「なに?」

「グルルゥ」


三つのうち二つの首が必死に背中を振り向き、正面の首がハッハッと舌を出して俺を見る。

尻尾もぱたぱたと振られている。


「乗ってほしいのか?」

「ワンッ!」


しょうがないのでケルベロスに跨る。

すると、ケルベロスは凄い速度で走り出した。

….凄いな、初速で80km/hくらい出てる。....多分。

しかし、石畳くらいしか無いので速度を測ることが難しい。

……….いや、速度なんてないのかもしれないな。

ここは恐らく霊界だし...


「どこへ向かうの?」

「グルルゥ!」


……いや、そう言われてもわからんが。

だが、とりあえず近い道のりではないのは分かった。

成程、死者が中々冥府にたどり着けないわけだよ。....霊界の道は果てしなく、長いのだ。

俺の魂からユカリの魂までの道は相当に遠いとみていいだろう。

俺は前を見据える。ただ白い道に黒い石畳が続いているだけだ。

ケルベロスは駆ける。白い世界のどこかへと.....


◇◆◇


しばらくすると、急に白い世界が晴れた。


「何だっ!?」

「ワンワン!」


驚く俺に、ケルベロスが吠える。

慌てるな、と言いたげだ。

その吠えに安心感を感じ、俺は素直に前を見る。


「アレは......!」


俺の目の前に、巨大な黒い球が浮いていた。

光すら通さない、黒い、黒い球体。黒い道は球体へと続いている。


「もしかして....」


もしやと思い後ろを振り返る。

すると、後ろには巨大な白い球体が浮かんでいた。

多分、これが俺の〈魂〉なんだろうな。


「ケルベロス、あの球体に入って何か問題はないの?」


もう色からして邪悪なものだし、そもそもあまり友好的ではない魂の内部だ。

息を吸えば侵食されそうで怖い。


「グルゥ」

「そうか....」


右の首が首を振った。

それぞれの首が何を指しているかは分からないが、恐らく信じていいんだろうな。

以外にも白い球体の内部と違って黒い球体までの距離は近い。

俺...いや、ユカリの魂の器である『世界』には赤い雲が浮いていたが、それらが黒い球体に近づくにつれ晴れていく。


「何だこりゃ....」


黒い球体から見るからに邪悪と分かる鎖が伸びていて、いくつかの鎖は俺の魂に突き刺さっている。俺がまた前に振り向こうとしたとき、ドォンと空気を揺るがす轟音がした。

慌てて振り返ると、黒い鎖がまた俺の魂に向けて放たれるところだった。

しかしそれは、突き刺さる前に白い壁に弾かれる。


「はぁ、危なかった......」

「ワォン!」

「え?」


俺が胸を撫で下ろすと同時にケルベロスが吠えた。

前を見ると、視界は黒で染め上げられた。

…..ついに黒球内部、”ユカリ”魂魄内に突入したのだ。


「あっ!」

「グルッ!」


黒かった道が光輝き、黒一色で他に何も見えない魂の世界で行き先を示してくれる。


「行こう!ケルベロス」

「.....グルル」

「ケルベロス?」


急にケルベロスは立ち止まる。

不審に思った俺だが、直ぐに意味を理解する。

黒い空間から、不気味な紫に覆われた黒い俺....というかユカリが湧き出してきたのだ。


「......ガオオオオゥ!」


ケルベロスが吠えると、ユカリ群は吹き飛ぶ。

だが、直ぐにまた湧き出してくる。


「これじゃ意味がないな.....突破するよ」

「グルルゥ!」


ケルベロスは足に力を籠め、思い切り走り出す。

…..今のは初速140km/hかもしれない......多分。

リンドに乗って飛び立った時と同じくらいの感覚だったな。

まあとにかく、ケルベロスは魂の保護とでも言うべき存在達を振り切り黒い空間を進む。

時折進路をふさぐように、さっき鎖を防いだ白い壁の黒いバージョンが出現するが、


「グルゥゥァアアッ!」


バリィィン!


ケルベロスが黒い光を纏って体当たり....というか俺がケガしないように気を使ってくれているのか、完全に頭突きで壁をぶち破る。

そんな感じでユカリの影を振り払い、黒い壁をぶち破って進むこと数十分.....

俺は疲れてきたのだが、ケルベロスは全然そんなことはないらしい。


「なあ、いつ到着するんだ?」

「グルル!」


何故かはわからないが、その短い鳴き声で俺は察した。

俺がケルベロスに聞いたこのタイミングこそ、もうすぐ目的地なのだと。


「ワォォン!」

「分かった!」


ケルベロスの遠吠えで俺は伏せる。

そして......


バガアァァァン!


轟音と共に強烈な浮遊感。

ケルベロスと俺は壁をぶち破り、その向こう.....”ユカリ”の魂へと入り込んだ。


◆◇◆


俺たちが落ちたのは、白い神殿だった。

あの時、光の剣が刺さっていたあの神殿である。

だが、周囲は暗闇に覆われ、白い柱、床、天井全てに紫の不快な瘴気が纏わりついている。

そして、あの時光の剣が刺さっていた場所に........


「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い————————————」

「初めまして、ユカリ」


両手を鎖で縛られた、全裸の”ユカリ”が吊られていた。

全身には白い鎖が突き刺さり、何かを吸い上げているように感じた。

恐らく、スピリットバーニングの時俺がすぐ回復できたのも................

そしてその口からは、小さな声で怨恨の感情が込められた言葉が発せられ続けている。

俺はそれに向けて、軽く挨拶する。

すると、ユカリは俺をキッと見据えた。

黒く染まり、怨恨の感情だけを湛えた瞳が俺を睨みつける。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!許さない.....許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないぃぃぃぃぃっ!」

「まあ待て、俺の話を聞いてくれ」


俺が話を聞いてくれ、と言った瞬間ユカリに突き刺さっていた白い鎖と、ユカリを縛っていた白い鎖がジャラリ、と音を立てて外れた。

支えを失ったユカリは地面へと崩れ落ちる。

俺は崩れ落ちたユカリに駆け寄る。


「大丈夫か?」

「ううううううううううう.....うああっ!」

「うわっ!?」


俺は倒れたユカリに駆け寄り、介抱しようとするが、強い力で跳ね除けられる。

吹っ飛ばされた俺は、床を転がる。


「今更.....今更あぁぁぁぁぁ!散々僕から、奪った癖に!傷つけた癖に!」

「待って!俺だって、俺だって好きで奪ったわけじゃないんだ!」

「僕が受けた苦しみが、痛さが微塵もわかりはしない癖に!お前もこの痛みを知ればいい!」


ユカリから黒い波動が放たれる。


「クリエイトウェポン!ホーリーシールド!.....あれ?」


てっきりここは霊界だからスキルは使えないと思っていたが、そんなことはないようだ。

白く輝く盾が生み出され、俺の身を護る。


「な、何だよ!それはぁ!死ね!死ね死ね死ね!僕を自由にしろ!」

「嫌だね。空転・雷動....あれ、駄目か。じゃあ.......」


何故か空転術は使えない。.....ユカリ由来だからかな?

俺は地面を蹴り、一気にユカリへと肉薄する。


「は、はやっ.....!」

「話し合いをしないか?」

「だ、まれ!」


俺は再び黒い波動を放とうとするユカリを盾で殴りつける。

勿論、相手をスタンさせる盾スキル〈シールドバッシュ〉だ。

それをまともに食らったユカリは、動けなくなりその場に崩れ落ちる。


「手短に言う。俺はこの世界を救うためにお前に宿った。...俺は別の世界から転生してきたんだ」

「そんな嘘が.....」

「じゃなきゃ、何でお前に憑依なんてするんだ?それに、俺はそんなこと微塵も望んで無かった!」


殆ど本当だ。

嘘はこの世界を救う、という部分だけだな。

俺が何のためにこの世界に来たのか、皆目見当がつかない。


「まさ、か....本当に?」

「そうだ。俺は.....俺は向こうの世界で死んで、お前の存在に.....上書きされた。」

「じゃあ、悪気があって僕を....私から全てを奪ったわけじゃない?」

「そうだ。お前が俺に影響を及ぼすまで全く気づかなかった。」

「.......分かった。じゃあ、私に身体を返して」

「それは出来ない」

「何で!」


決まってるだろ。

身体を失えば死ぬしかない。

だが、ひとつだけ選択肢はある。俺がユカリの支配下に置かれることだ。

だがそれは…ユカリの状態を見れば無理だろうな。

だから…


「身体は返せない。だが、お前を自由にしてやる事はできる…制限はあるけど」

「えっ!?本当?」

「ああ。俺のスキルの分身にお前の魂を移せば、お前は自由に行動できるはず…多分。」


その言葉にユカリは一瞬迷いの表情を見せる。

騙すようで居た堪れないが、俺も自分の命が掛かってる。


「ねえ、自由になれたら…あの王子様と結婚してもいい?」

「良いけど…なんでその話を?」

「あんなに熱烈に愛してくれる人もそうそう居ないと思ったから…あと、僕にお腹いっぱいお菓子を食べさせてくれたりする?君と一緒に居たから、お金持ちだってわかってるんだから…!」

「勿論だ。俺は約束は破らない」

「分かった。僕は君に従う」


俺の決意をはらんだ声を聞き、ユカリは微笑んだ。

それと同時に、辺りを覆っていた黒がカーテンを開くように取り払われ、夕焼けの空が現れた。


「何が起きて…?」


俺が問いかけるとユカリは不思議そうに訪ねてきた。


「え?僕を改変しているこの魔術…君のじゃないの?」

「魔術…?」


まさか幻獣の罠か!?

と身構えると、何処からか声が降ってくる。


〈魂魄体:ユカリ・フォールの承認を取得、魂魄体を擬似星幽核に変換します〉


これは、レベルアップの時に聞こえた声!?

すると、ユカリの姿が変わっていく。


「なるほど…僕は魂から精神だけの存在になるんだね…」

「は?」


全く話について行けない。

俺はスキル欄を開き、詳細を調べる。

あった!〈疑似星幽核:ユカリ〉というスキルが。

詳細をなんとか調べようとすると、頭に声が響く。


『なるほど、こうやって君にアドバイスも出来るのか…今までの恨み辛み…君を困らせることで晴らしてやろう…ふふふ。というわけで、〈疑似星幽核〉というのは僕がアドバイスや解説をするスキルらしいよ』


あれ?さっきまで俺のこと親の仇レベルに恨んでたような…やけに距離が近くないか?

もしかすると、誰かは知らないがこれをやった存在はファインプレーという事か?

魂から擬似人格のような存在になったことで、怨恨は消え去ったのかもなあ…

まあ、思ってた結末とは違うけどこれもまあまあ良い結末かなあ…?


『えへへ、君に対する昏い憎しみは消えちゃったけど、恨みは残ってるよ?絶対逃さないからね〜』


訂正、最悪の結末だな。

俺はとりあえず、帰ることにした。


「ケルベロス、帰りはどうすれば?」

「クゥゥン」

「そっか、帰りたいと願えばいいのね」


俺は心の中で強く、帰りたいと願う。

すると、俺の全身が光に包まれる。


「僕も一緒に帰るね」

「ちょ....」


ユカリが消え、そこには黒いオーブのようなものだけが残った。

これが星幽核なのかな?

すると黒いオーブは俺に向かって飛んできて、俺に最接近すると俺の周囲を周遊し始めた。

ふとケルベロスを見ると、寂しそうな表情をしていた。

多分呪王が遣わしてくれた護衛なんだろうけど、お礼ぐらいはしとかなきゃな。

俺は三つの首を順番に、頭、顎を丁寧に撫でてやった。


「クゥゥン....」

「またな!....では、帰還!」


俺は完全に光に包まれ、意識を失った。




そして俺は、ユカリの意思を守りつつ身体を保ち続けることに成功して、

新たなスキルも3つ手に入れた。

そのスキルとは....(byムスビ(ユカリの事)解説付き)


〈疑似星幽核:ムスビ〉

独自に思考できる存在。各スキルを許可を与えることで自由に使用でき、分身に意識を飛ばすことも可能。ただし、思考には脳のコピーを使用する為、ユカリ以上のことはムスビには出来ない。ではあるが、ユカリの脳には一切影響がない。

〈神眼〉

これはスキルと言うかなんというか....

ユカリとムスビで「物質鑑定」とかその辺の鑑定スキルを混ぜてみたらどうなるのかという実験をしていたら、自然に取得したスキルである。

当然、ゲーム時代はこんなものは無い。

〈魂魄保護〉

魂魄に直接影響するスキルを阻害または無効化する。

これはまあまあ、この先使う時が来そうな感じはするけども.....

今はよく分からないな。


そして、今回レベルが上がったスキルも複数ある。


〈並列思考:Lv4〉

◆ドッペル・カレイドスコープ:Lv--

〈並列意思:Lv2〉

最大三体にまで分身に自由意思を持たせることができる。


これで、俺は今までよりずっと強くなれた。

自分を克服して強くなるとか、少年漫画かよって感じはするが悪くはない。

何しろ、この間幻獣と戦った時も....ギリギリで勝てたからな。

あのスキルを受け止められていたら勝ち目はなかった。

マルコシアス、ガルムと来れば、その他のもっと強い奴らがいるのは明白。

俺はもっと強くならなきゃいけない。


「よし、まずは訓練だ!」

『今日はもう寝たほうがいいとボクは思うけどなあ』


俺はベランダから飛び出し、夜の訓練場へと向かうのであった.......




ユカリ・A・フォール 職業:ウェポンマスター Lv:125



HP29000/29000

MP4400/4400



攻撃力:224

防御力:182

魔法力:196

魔法防御:210

etc…

[スキル]

〈一次〉メイクウェポン-LvMAX

〈二次〉ビルドウェポン-LvMAX

〈二次〉ウェポンリビルド-Lv--

〈三次〉クラフトウェポン-LvMAX

〈三次〉ドッペルシャドー-LvMAX

〈四次〉クリエイトウェポン-Lv3

〈四次〉ドッペル・ツインミラー-Lv2

〈特殊〉ドッペル・カレイドスコープ-Lv–-(スキル自動効果)

空転術-Lv8

ホープウェポン・クリエイション(非表示)-Lv--

[バフ]

〈二次〉リミットオーバー-Lv6

〈三次〉ソウルバーニング-Lv3

[パッシブ]

ウェポンマスター-Lv4

エアージャンプ-Lv--

マジックリュース-Lv--

マジックサルベージ-Lv--

マジックリデュース-Lv--

ワールドツリーブレスト-Lv1

龍滅ぼし-Lv1

一騎当千-Lv--

遺物の破壊者-Lv2

迷宮を統べるもの-Lv--

並列思考-Lv4

並列意思-Lv2

幻獣殺し-Lv2

希望齎す者-Lv--(非表示)

星幽従えし者-Lv–-


〈鑑定〉に〈思考サポート系スキル〉.....

当初入れる予定はなかったんですが、ユカリの戦闘がちょっと寂しすぎるので入れてみました。




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