SEP-9(B) "ユカリ"との決着(中編)
予想以上にギャグパートが長くなったので中編です。
遅れたのは没案と現行案で迷ったからです。
没案だと前後編でした。
俺は再び女子寮へと戻ってきた。
あちこち回ったが、結局解決できそうなのは女子寮にしかいないって、
青い鳥みたいだな....
女子寮は三階建てで、三階にタツミの部屋がある。
俺は黙って階段を上がる。
「はぁ、はぁ......」
いつもはステータスの関係かあまり苦じゃないが、やっぱり階段って辛いな.....
今はただでさえ体全体が言うことを聞かないから、辛さは二倍だ....
階段を上がると、三階の共有スペースにたどり着く。
魔導暖炉とかがある、休憩スペースとか憩いの場とかそんな感じだな。
「えーと、タツミ先輩の部屋は......どこだっけ?」
多分右奥の、手前から3番目の部屋だったはず。
タツミはルームメイトが居ないんだっけ?
俺は右に曲がり、手前から3つ目の部屋の前までたどり着く。
そしてノックする。
「はーい、今出まーす」
少し遠くから声が聞こえた後、ドタドタという音と共に扉が開かれる。
「あら?ユカリちゃんじゃない....」
「タツミ先輩.....何ですか?その恰好」
タツミはホットパンツに丈の合っていないシャツという、無防備すぎる格好で出てきた。
俺がその格好の真意を聞くと、タツミはてへへと笑って頭をかいて言った。
「今日は来客の予定とかなかったから....ほら、寮の暖房って調節できないじゃない?だから暑いのよね......」
それは....まあ、分からなくも無いけど。
寮の暖房って多分中央の暖房機から各部屋に熱した空気をを伝えてる仕組みだから、好きに調節できないんだよね。特に、管はそれぞれ違うみたいなんだけど、三階行きの暖房管は距離による冷却を防ぐために相当熱されてるみたいで、暖房を入れると真夏のように熱くなり、入れないと寒すぎるという負の連鎖が発生しているようだ。
「まあまあ、入って入って」
「お邪魔しまーす」
とりあえず、寒い廊下でそれも男子生徒も入れる場所でこの格好はまずい。
俺とタツミは部屋の中へ入った。
◇◆◇
「えっ?そんな事が.......」
「そうなんで————えっ!?」
俺はあったことを脚色なしで説明した。
そしたら抱き着かれた。..........???????
「せ、先輩!?」
「ごめんね!ユカリちゃん....私、そんなに辛い目に合ってたのに相談相手になってあげられなくて!それに、廊下で話した時も!辛そうだって気づかなかった...なのにあんな長い時間立ってお話ししちゃって.......ごめんなさい!」
「先輩が謝ることじゃないですよ...!」
色々気まずいので、俺は必死にタツミを弁護する。
クソっ、この後輩ラブ先輩に心配をかけるようなことを言わなければよかった....
と思ったが、これ話しているうちにボロが出て、
『私に心配かけないように隠してたのね.....こんな先輩でごめんなさい!』
とかなりそうだな.....
どっちにしろ、タツミは人が良すぎる。
押し売りに騙されかねない性格してるよなぁ...
「せ、先輩!大丈夫です!先輩ならもしかするとこの症状を治せるかもしれないって思って!だから包み隠さず話しただけなんです!」
「そ、そうなの.....?でも、私にできることなんて...」
「呪王と話させてください」
俺がそう言った瞬間、奥の扉が開く。
そこから、マントだけがふわふわと飛んできた。
『やれやれ、《視る》からに存在感のおかしいお主がタツミを訪ねて来たんじゃ、どうせそういうことだと思っとったよ』
「呪王!」
「おじいさん!」
どうやら、俺が部屋に近づいてきた時点で既に俺の異常に気付いていたようだな。
ってか、呪王はおじいさんで良いのかね....?
まあ、千年以上人と触れ合ってなかったようだし会話ができれば自分の呼称なんてどうでも良いのかもしれないが......
「私の異常に気が付いていたと?」
『ああ。詳しく視ないと分からんが、お主の存在感はどう考えてもおかしい。霊波が異常な波長を示している』
「おじいさん、霊波って?」
『おお、タツミよ...霊波とは—————』
どうやら、霊波とは人間、いや生きとし生けるもの全てが発する波動のようなもので、それは植物すら発するものだという。霊波は視る者が視れば、色まで変わるそうなのだが....
『お主は全身が白....つまり、無常に溢れておる。...というのに、白を覆うように濃い紫.....怨恨が噴き出ておる』
「怨恨.....?」
もしかして、これ何かの呪いだったりするのだろうか。
今まで殺してきた魔物たちの怨恨の塊とか?
『とにかく、儂が視てみよう。少しこちらへ寄れ』
「.....」
呪王が診察してくれると言うので、俺は前に出る。
『....ほうほう』
「何か分かりましたか?」
『いや、タツミにも負けじと劣らぬ小ぶりな胸だと思ってな』
「エロジジイ殺すぞ」
『すまんすまん......じゃが、視とるのは確かじゃて....』
「あわわわ、ユカリちゃん、怒ると怖いのね」
いや、余りにも自然な流れでセクハラ発言をされたのでつい素が出てしまった。
これに怒るようじゃ元の世界に戻ったら社会復帰が大変そうだ....そもそも男に戻れるのかすらわかんないけど。
『....これは?むむむ、前例がないのう』
「胸の話だったら殴るぞ」
『いやはや、これは....ユカリ、今のお前には魂が二つあるように見える』
「魂が......二つ?」
呪王は衝撃の発言をした。
魂が二つか.....一つは俺自身のものだろう。
なら、もう一つは?....それはもう分かっている。
俺、相原恭介の魂ではなく......俺が上書きした”ユカリ”本人の魂だ。
『どうする?儂の力ならお前の魂を保護し、その魂だけを排除することも容易い』
「ユカリちゃん、どうする....?」
二人が”ユカリ”の魂を破壊しようと提案してくる。
だが....
「嫌だ」
『........何と?』
「え?」
俺は呪王に尋ねる。
「魂を安全に隔離する方法はありませんか?」
『.....あるにはある。だが、それには危険が....』
「やります!」
「ユカリちゃん.....」
もし”ユカリ”の魂が残っているのなら、ただ排除するだけでは俺の望む結末は得られない。
俺の行き場が無くなる以上、体は返すことはできない。
だが、何らかの形で魂を隔離して、分身にでも移せれば....
『だが、それをするにはお前を霊界へと移さねばならぬ。それでもいいのか?』
「霊界?」
『よいか?お主は魂と身体がくっついておるじゃろう。だが、二つ魂があると、もう一つの魂は身体と結合しておる故、剥がすのは困難を極める。....じゃが、お前の精神を霊体とし、魂との対話を試みればそれも容易になるかもしれん』
「ではそれを!」
『分かった...では、どこかに横になるがよい』
俺を止められない事が分かったのか、呪王が俺にどこかに寝るように促す。
俺はそれに従い、ソファーに横たわる。
「ユカリちゃん、本気.....?」
『やめておけ、タツミよ。この顔を見よ、自分なりに何かの決着を付けようとしておるのじゃ。......冥府の王よ、彼の者に冥府の道を渡る権利を譲り、彼の者が冥府へと渡ることのないよう冥府より来たりし門番を付けよ』
呪王の呪文と共に、俺の意識は闇へと沈んだ。
そして、不思議な感覚と共に.........俺はどこかへと飛ばされた。
憑依、転生.....よく聞きますが、乗っ取られたほうはどこへ行ってしまうのでしょう。
自分はこれを放っておいたまま物語を進めるのに違和感を覚えました。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




