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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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Ep-93 前王の子供

とにかく、暇がない!

...ということで修正は後回し。

「はぁ!?」


俺は学院の門前でそんな声を上げた。

信じて送り出したエッジが、泥棒を追っかけて行ったら自称王族と遭遇したと『念話』で抜かしてきやがった。...分身は独自で思考できるが、まだ〈並列意思〉のスキルレベルが低いせいか初期命令から大きく外れることができず、自由意志もあるように見えて無い。だから、困って俺に助けを求めてきたのだろう。


「...エッジ、髪を降ろして私と交代して、代わりに授業に出ろ」

『了解』


俺はエッジに指定された座標へと、ポータルアローを使って飛ぶ。

分身でも行ったことのある場所に登録されるのはいいな。

入れ替わるようにエッジがテレポートで消え、門前に行く。


「え....今、同じ人が二人.....?」

「さて、王様と関係があるとかいう方はどちら様でしょうか?」

「ぼ、僕だ!殺すなら殺せ!」

「.........殺す?」


確かに、隣にいる女の子とその母親であろう人は茶髪なのに、叫んでいる少年は金髪だな。マジで王族かもしれない。


「あの~...そもそも、私はそこの少年を殺す気など一切無くてですね.....」

「じゃあ何が目的なんだ!」

「親友の魔法の袋が掏られたので、犯人の少女を追い詰めていただけなんですよ」

「っ........」


俺は奥で引き気味に座っている女の子をキッと見据える。

それだけで女の子はすべてを諦めたのだろう。

そもそも、空間を裂いて出てくる時点で相当ヤバい奴なので、逆らえば家族もろとも自分が死ぬことを理解しているのだろう。


「.....分かった、返す!返すから.....誰にも手を出さないで」

「いえいえ、罪は償ってもらわないと...」


せっかくだし、後々の不和の種は潰しておきたい。

この少年の人生にも早めに決着をつけてやりたいしな。


「でも、私たちには償えるようなものは何も....」

「いえいえ、その少年について少し教えていただくのと、1日連れ出す許可を頂ければ充分ですよ」

「それだけでいいのですか!?.....しかし、連れ出すのは......アルバートは今風邪を引いていて、あまり無闇に疲れさせるような真似は....」

「そうだぞ!僕をどこに連れていく気だ!」


俺はインベントリから、金色に輝く液体の入った瓶を取り出す。


「それは.....?」

「これは神薬酒ネクタル。ちょ~っといい気分になれるだけでなく、風邪だろうと呪いだろうと、死の病だろうとたちまち治ってしまいます。さらに、」


俺は少年に近づき、囁く。


「今日のお昼と晩御飯は、私が奢りましょう」

「......晩御飯はお母さんと妹にも奢ってくれ」

「いいですよ」


というわけで、俺は王子様?を手に入れ、その王子様?の誕生背景も聞くことができたのであった....


◇◆◇


ロイアハイト・カーラマイアは若かりし頃、大層な遊び人であったそうだ。

王位継承者が自分しかいなかったため、傲慢になり、酒池肉林の限りを尽くした。

下の方も元気だったようで、あちこちで身分を隠して優れた容姿で女性を誘惑し、ヤりにヤりまくったそうだ。お熱いことで......

幸い、その殆どが妊娠まで至らなかったそうだが、アルバートのような例外も存在する。

それらはロイアハイトが認知しなかったことで貧しさに喘ぎ餓死したり、赤ん坊のまま衰弱死したり、何も知らず一生を過ごしたりと散々だったそうで、アルバートも本来なら何も知らずにその一生を終える予定だったそうだ。だが、アルバートが妹のナーナの出自を知りたがったため、仕方なく話したのだそうだ。

これを話した時、ナーナも初耳だったのだろう、驚いていた。


「ってことは、私もお姫様に....?」

「なれるかもしれませんが、自由はありませんよ?」

「...それはちょっと、嫌かも」


まあ、お姫様も王子様も、子供の憧れだが、実際なってみると辛すぎて耐えられないだろうな.....俺も、貴族のお嬢様なんてもの甘いものでも食べてイケメンと結婚するくらいのイメージしか抱いていなかったからな.......

ま、実際は同族の貴族たちが忌み嫌う平民と一緒になって汚い臭い貧しいと揶揄される冒険者をやっているんだから、貴族のお嬢様ってのもちょっと違う気はするけどな....


「ぷはぁ....飲んだぞ!」

「しばらくしたら怠さと熱も収まりますよ」


神薬酒ネクタルは、貴重に見えるアイテムだが、ゲーム時代はいくらでも入手できた。

HPとMP、全状態異常を回復する破格の性能故、そこそこのお値段だが、正直レベル600を超えたあたりから1000個単位でまとめ買いするようになる。


「...本当だ、体が熱いけど、怠さと頭痛はしなくなった..........!」

「さて、王宮へ行きますよ~」

「あ、ああ......」


しかしこのガキ、初対面に対して結構無礼だなぁ.....

まあ、俺の見た目がうら若き乙女だし、武器も一見無くて丸腰に見えるしなあ。

..........まあ、子供はいつの時代もこんな感じかな?

俺はアルバートを連れてスラム街を歩く。

スラム街って言うとトタン屋根とかボロ板の家を想像してしまうが、そもそもこの時代じゃどこの家もそんなもので、ちょっと良くなってくるとレンガになるので、そこまで困窮しているイメージはない。普通の発展してない街、って印象だな。

まあ王都の住宅街と違って街灯が無かったり、石畳ではなくむき出しの地面だったりはするが.......

水道が発達していないエリアなので、側溝が掘られてそこに水が流れている。

水車とかがあって見ているだけでも面白い。

しばらくすると、家がまちまちになり、大きな川が見えた。

その川には大きな橋が架かっていて、兵士がいつも通り待機している。

兵士は俺の事を知っているので、俺が少年を連れているのを見ても、無言で通した。

こういうのを一々咎めても、相手が貴族だと関わった場合最悪自分が死ぬからな。

悪いことをしている気分になるが、傍から見たら俺は今ただ気に入った少年を連れ出すお嬢様にしか見えないはずだ。.......多分。

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