Ep-92 アル
今回物凄く短いです。
腹痛で書く時間がほとんど取れなかったんです....
王宮での事件から数日後。
俺はアレックスの家から学院へと向かっていた。
ポータルアローを使えばいいのに...というアレックスの言葉を無視して俺は歩く。
ステータスのおかげで疲れることはないので、どうせなら歩いたほうがいろんなものを見れて楽しい。
「な、なあ....なんだってスラムなんて通るんだ?」
「何だっても何も.......ここしか通るところがないよ?最短だし」
俺たちが今通っているのは、王都のはずれにある学院への最短ルート、スラム街だ。
スラム街と言っても広うござんすというわけで、俺たちが今いるのはスラム街の中心部のマーケットだ。基本解放団のみんなのような所謂裏の世界の奴らがものを売り買いする場所で、朝はまだそんなに人はいないが、働きに出る人たちで混雑している。
「だからってわざわざ、転移じゃなくてこんなとこ通らなきゃいけないんだ?」
「それが楽しみなの」
「おわっと!?危ねえな...!だがユカリ、こんないつ襲われるか分かんねえところ通るのは馬鹿だと俺は思うけどな....」
今アレックスにぶつかったやつ怪しいな…
俺は影の中にいるエッジに追うように命じる。
影から俺そっくりだが髪型をポニーテールにしているエッジが飛び出す。
「おい、ユカリ?なんで分身を出したんだ?」
「今ぶつかってきたの、多分掏摸だね。追わせたから大丈夫」
「掏摸...?あっ、俺の魔法の袋が盗られてる!…今すぐ追おう!」
「いや、分身に任せよう」
「だって...!」
「遅刻しちゃうよ?」
「........................」
アレックスは心底理解できないという顔をして俺を見る。
俺がアレックスに目を向けている間に、2回くらいぶつかられたが、俺のポケットには何も入っていない。インベントリって最高だな。
◇◆◇
ユカリに命じられ、エッジは空転術を駆使してアレックスにぶつかった少女を追う。その速度はまさに台所のGの如き速度であり、隠形がなければ目立っていたはずだ。
女の子は、乱立するボロ家.....と言っても王都以外の貧民街よりは相当マシな家に入っていく。エッジは命令に従い、その家の前に降り立つ。
閉まった扉を見て、エッジは思考する。
(本体は、追えとだけ言った....つまり、この先の行動は自分に委ねられているのか?)
エッジはそうだろうと結論付け、扉を蹴破る。
家の中から悲鳴が聞こえ、ガタガタと何かを動かす音がする。
しばらくすると、家の奥から痩せた女性が出てきて、エッジに向けて喋った。
「あ、あの.......私たちの家に何か用でしょうか..........?」
「魔法の袋を掏られた。その犯人がこの家に確かに入っていった。返してほしい」
「掏摸....ですか?一体誰が?」
「痩せた茶髪の少女です。直ちに返却してください」
「ナーナが.....?ナーナ!」
痩せた女性は、誰かの名前を呼ぶ。
すると、魔法の袋を盗んだ少女が家の奥から出て来た。
「なぁに、お母さん.....?」
「何じゃないわ!盗んだ魔法の袋を返しなさい!」
「イヤ!」
「どうして!」
「あれを売ればお母さんが頑張って働かなくても済むから!絶対に返さない!」
「そうですか」
エッジはクリエイトウェポンにて、深紅に輝く鎌を生み出した。
「返還拒否に、敵対発言。到底許容できるものではありませんので....強制的に返していただきます」
鎌を見たとたん、親子は悲鳴を上げて崩れ落ちる。
「ど、どうかお許しを!私が代わりに死にますから、どうかナーナを殺さないでください!」
「大体この人、あの時魔法の袋を持ってたお兄ちゃんじゃない!...かすめ取ろうとしたって無駄なんだから!」
「そうですか。...私はユカリ・フォール様の忠実なる配下です。魔法の袋を持ってたお兄ちゃん、とやらの配下と同じなのですが........それでも返しませんか?あの方は貴族ですが....」
「証明しなさいよ!証明!どうせそうやって私の袋をかすめ取ろうとしてるんでしょう!」
「交渉は平行線ですか....仕方ありません、私が代わりになるものを何か独断で選んで渡しましょうか......それと交換ではどうでしょう?」
やっとエッジが最適解を導き出し(ユカリの意思は除く)、この騒ぎもおさまると思った時、奥から金髪の子供が出て来た。
「お母さん....この騒ぎは一体.......ああっ!やめろ!僕の母さんを殺さないでくれ!」
「アル!奥で寝てなさい!風邪が悪化するわ...」
「お母さんは黙ってて!その鎌、王宮に依頼されて僕を消しに来たんだろう!」
「はい?」
エッジは一瞬硬直した。
王宮とこの少年に何の関係があるのだろうか......?
「お母さんが話してた!現王のロイアハイト様がお母さんと交わって僕が生まれたって!だから王位継承権のある僕はいつか殺されるかもって....!」
「..............本体、至急援助要請!」
エッジはアルとよばれた男の子の発言を聞き、ユカリを呼んだ。
ユカリさんはよりリアルになったこの世界を心行くまで楽しもうとする変な人です。
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