Ep-87 Cランク昇格戦(前編)
遅れてしまい申し訳ありません。
そろそろCランクにしておきたいけど、ユカリというリーダー無しでランクアップもおかしな話だと思ったので、メインストーリー扱いで入れました。
「Cランクに上がるの?」
「ああ。けど、ランク昇格試験を受けるためには...」
「クランリーダーが同伴する必要があるの」
というわけで、俺はCランク昇格試験に挑むこととなった。
今までは別にクランマスターやリーダーは要らなかったらしいが、Cランクともなると国の依頼も受注する。つまり、しっかりとメンバー全員での実力が試されるという訳だな。貴族でCランククランリーダーってのが少ない理由だ。...実力が伴ってこないからなあ...
「で、試験内容は?」
「筆記半刻、その後王都東の大ダンジョンに潜って魔物を狩って戻ってくる」
「東ダンジョン....?」
俺は脳内でメニューを操作し、ダンジョン管理メニューを開いた。
.......やっぱり、王都の東ダンジョン(本当の名前は[悪魔の巣窟]だが、すっかり名前は忘れ去られたらしい)は俺の管理ダンジョンの一つだ。
多分この間ナイトが派遣してくれた追加人員のダークエルフはここ由来なんじゃないか?
まあ、つまり何が言いたいかと言うと......
気まずい。
◇◆◇
「うあ~.......辛かった」
「リンドが文字を書けるのは意外だったな」
「何を言う。我はユカリの命でずっと各地を調査していたのだ。文字くらい書けぬようでは疑われてしまうだろう」
「アラドはどうだった?」
「......ふっ、俺はこれでも元Bランク、懐かしみながら解いた」
午後。俺たちは筆記試験を終え、近くの飯屋で昼食を摂っていた。
ダンジョン探索はキツイので、俺でもない限りはしっかりとエネルギーを補給することが大切だ。
...といっても、フランスパンっぽい謎のパンと、肉がゴロゴロ入ったスープ、そして肉のステーキ、後はサラダ。こんなご馳走を食べたら余計きつそうな気はするけどな...
まあ、俺が先頭に立つから傷を負うことはほぼ無さそうだ。
「ちょっとお便所に」
「はいよ~」
そして俺は、トイレに行く。
別に大した用事は無いが、業務連絡を....
ドアを閉めて、鍵をかける。
そしてダンジョンメニューを展開してダンジョン通信を使う。
この間ダンジョンのレベルが30になった時に使えるようになった機能で、1分につき10DPを消費することで各ダンジョンや外からダンジョンに通信ができるというものだ。
『はい、もしもし?』
「ナイトか?」
『はい...なんでしょうか!?』
「突然だけど、今日これから抜き打ちで[悪魔の巣窟]へ向かう。私に倒されたくない魔物は撤退させろ」
『は、はいっ!』
それだけいうと俺は通信を切り、トイレから出る。.....おっと、一応ドアノブに触ってしまったし手洗いはしておかないとな。
王都は水道が通っているので、原始的な木製のコックを捻るだけで水が出る。
その水でバシャバシャと音を立てて手を洗う。
冬なので寒いけれど、面倒がって感染症にかかっても問題だからな。
戻ると、既に全員は食べ終えていた。
「んじゃ、行く?」
「ああ」
というわけで、全員会計を済ませて店を出る。
ここは東の大ダンジョンに一番近い飯屋なので、飯屋から歩いて5分くらいの場所にダンジョンがある。
ふふふ、今頃[悪魔の巣窟]は大急ぎで階層入れ替え、魔物の撤退、メンバー切り替えなどを行っているんだろうな。ナイト主導でダンジョン全体にマニュアルを作って対応するシステムになっているので、不測の事態にもある程度対応できるようになっているのだ。
例えば今回みたいな、急な調査隊の派遣とかな。
そんなことを考えながら、歩いていると....
「ユカリ、何ぼーっとしてんだ....もう着いたぞ」
「あ、うん....」
東ダンジョンの入り口へ到着した。
地面へと潜り込む形でトンネルがあり、そこから少しずつ地下に潜っていく形のようだ。
ダンジョンメニューによると、使われていない出入口はここの他にも4つあるらしく、
それだけの広さがあると思われる。
「こんにちは。冒険者の方ですか?」
入り口近くに立つ衛兵がそう呼びかけてくる。
ダンジョンから魔物が出てくることはそう言うイベントでもない限り無いが、
現実のこの世界ではそれを防ぐために衛兵が配置されているのだろう。
「ああ。今日はCランクの突破試験を....」
「なるほど!そうですか......Cランクの試験依頼内容は、3階層に出現するデビル・ソーサラーの魔石、レッサーサキュバスの魔石、エビル・エルフの魔石です。このうち2体は人型なので躊躇するかもしれませんが、倒せなければ不合格です。頑張ってください」
なるほど、相当キツイなこれは。
実力があっても知性があって人型の魔物を斬るのは辛いだろう。
ま、今日は既に知性ある魔物は消え、生まれたばかりの魔物だけだろう。
「じゃあ、行くか!」
「そうだな」
「ああ」
クレルとアレックス、アラドのその会話で、俺たちはダンジョン内へと踏み出した。
最初はとても楽だった。魔物は殆どおらず、ギミックもそこまで難しくはなかった。
途中アラドが罠を踏んだり、ダンタリアンが出しゃばって串刺しになったりとアクシデントはあったが、ダンジョン内とは思えないくらい楽しかった。
だが....2階層に辿り着いた時、地響きが聞こえて来た。
そして、パニックになりながら逃げてくる冒険者たち。
「助けてくれっ!」
「魔物の大群が....!」
「話が違うぞ!」
等と叫んでいたので、何かがあったのだろう...と思い、警戒しつつ8人で角を曲がると......
「おいおい、こりゃ無いだろ」
「俺も経験がないな、こういうものは.....」
「...........はぁ~」
角の先は、長い回廊だった。
ただ、回廊の先には大量の魔物が前進してきていた。
そして魔物たちは、俺を見つけると速度を速めた。
「戦うしかなさそうだね......」
「なーに、俺達なら余裕だぜ」
「よい腹ごなしだな」
だが、仲間は誰一人諦めてはいない。
覚悟を決めると、後ろの天井が降りてきた。
退路を塞がれたか。
「じゃあ....行くぞ!先手必勝!クリエイトウェポン、シューティングスターボウ!」
俺はそう叫び、手に星が象られた弓を呼び出したのだった。
支配したはずのダンジョンで、魔物たちがユカリに襲い掛かる......
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