Ep-85 総合大会
この退屈だが平和な日常をぶち壊す!
新たな戦いと騒乱の予感!
「総合大会?」
俺は執務室でそんな声を上げた。
いや、本当に声を上げるような事だったのだ。
何しろ、総合大会なんてゲーム時代は聞いたことが無いからな...
ここでもまたイレギュラー要素か...
「そうなんだよ、ユカリが女なのに下手な男より強いってのが信じられない貴族が、総合大会の武闘大会で優勝しろって言うんだ」
「そんなの放っておけばいいじゃん」
「そう言うわけにも行かねえよ。王子様がお前とくっつく邪魔になるだろ」
「いや、私はくっつく気はないから...」
「あのな、あのジルベール王子は王位継承権第一位だぞ?奴には王と死んだ前王しか意見できない。お前の意見なんて誰も聞いてないんだ。.....王妃だぞ?そりゃ俺だってユカリと.......たいが、王子に目を付けられたら終わりだ。大人しく王妃になれ」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
まだ童貞も消費してないのに異世界で性転換して好きでもない王子と結婚なんて嫌だぞ!
俺は元の世界で男に戻れなくてもいいから!日本で伴侶を見つけるの!
「で、総合大会って何?」
「そこからか!...まあいいや、総合大会ってのは一年に一度開かれる大会で、武闘、料理、剣技、魔術、鍛冶・錬金、美術の六大会の総称が総合大会なんだ。後、七種目目は一応あって、学院クラス対抗だな。アルマージ魔法学院の学年ごとの精鋭が雌雄を決する戦いで、毎年熱い戦いが見れるんだ」
「ふ~ん...で、クレルは出るの?武闘大会」
「うっ...俺は見るほうが好きかなあ....なんて...アレックスは今年の剣技大会には出るつもりみたいだけどな」
「へえ...武闘大会と剣技、魔術大会って何が違うの?」
「武闘大会は物理、魔術、呪術、薬...何でもありのガチンコ殴り合い、剣技大会は純粋な剣の腕と膂力のみを試し合う。魔術大会は......まあ魔法使いの変態共の術比べだな。」
へえ~...と俺が感心し、思考を巡らせていると、半ばはじけ飛ぶようにドアが開いた。
「その話聞かせてもらった!武闘大会だと!?面白そうではないか!」
「...リンド」
まずい!リンドが武闘大会に参加しようものなら人間なんてあっという間にボコボコにされてリンドの圧倒的な独り勝ちで終わってしまう!
俺もちょっと武闘大会に参加したくなってきたところなのに、台無しにされてたまるか!
「リンドはドラゴン族の大会とかあるでしょ?それで我慢して」
我ながら精一杯の愛嬌を乗せた笑顔で圧力をかけるが...
「同族と戦ってもつまらん。奴らは戦うことにしか頭に無いから、戦いを力と力のぶつけ合いと勘違いしている。もっと技に拘る人間と戦った方が面白い。それと、既に好いている女がいる男にそれはどうかと思うぞ。流石に似合わぬし、何より不気味だ」
「ッ.......」
流石に失礼すぎるだろ.......
リンドも俺が怒らないと思っての発言なんだろうけど、最近俺も精神が女の方に同調して来たのか、見た目や振る舞いに気を付けるようになった。
「リンド」
「何だユカリ」
「流石に怒るよ。親しき仲にも礼儀あり。....ずっと見た目のことを言っても怒らないからと言って、ある日突然無礼と言われてもおかしくないんだからね」
「あ、ああ....」
リンドのこんな反応を見れるとは思わなかったな。
ゲーム時代は常に尊大な感じで、絶対に地を出さなかった。龍神として降臨し、戦っている最中もだ。
ふふふ、そう考えると転生も案外悪くなかったのかもしれないな。
.........おっと、思考がわき道に逸れかけた。
「とりあえず、しょうがないからリンドは力を抑えて大会出場ね。私は....しょうがないから大会には出る。アレックスも出る....と。クレル、逃がさないよ。シュナと一緒でもいいから出なさい。たまには働きましょ?」
「....分かった」
俺はそれだけ言うと、二人を残して部屋を出た。
他の皆に確認を取るために。
◇◆◇
総合大会の結果はクランの実績に大きく響くらしい。
なので、俺は今のクランメンバー.....8人に確認を取った。
俺....ユカリ・フォール出場
クレル・アーサー 強制出場
シュナ クレルが出るなら出場するらしい
アレックス 出場
ユイナ 出場拒否
ベル 出場
リンドヴルム やる気満々で出場
タツミ 俺が出るなら出場するらしい
というわけで、ユイナを除く7人が出場するらしい。
ユイナは争いとかそう言った荒事が嫌いだから、しょうがないと言えばしょうがないか。
「ユカリ様」
「ん?なんだいヒショ―」
「ユイナ様の枠を私に譲ってもらえはしませんか?人間たちの技量、確かめてみたいのです」
「ああ、いいよ...」
ヒショー...秘書をやっているアークバットに名前をやったら何故か進化してダークバトラーバットという種族に進化した。がユイナ枠で出場したいと言うらしい。
ダークロードバットに進化していたら相手の選手を殺しかねないが、ダークバトラーバットならその能力は執事特化であろうから、何の心配もいらない。
「有難き幸せ。この喜び、我が忠誠にて示します」
と言ってヒショ―は恭しく礼をした。
やれやれ、全部俺のせいなんだが、今年の総合大会は中々に濃いメンバーとなりそうだ。
『ふふふ、今度王都で総合大会が開かれるそうだね』
「ああ、そうだが?」
『君は出ないのかい?”崩死”のアドラー』
「俺が出ると思っているのか?参加者を殺しかねんぞ」
『大丈夫さ、今回の大会は面白いよ?何しろ、僕らが数年かけて集めた人材を全員投入するからねえ』
「ほう...面白そうだな。なら、出てやってもいい」
『助かるよ、アドラー』
「見返りも大きいからな、幻獣マルコシアス」
『この関係がいつまでも続けばいいのにね』
「嘘をつくな、お前の感情などお見通しだ。この大会で俺に死んで欲しいんだろう」
『.....やっぱりアドラーは鋭いじゃないか。まあ、生き残ったら何か褒美をやるよ』
「本当だな?」
『うん...まあ、生き残れたら、だけどねえ』
今まで出て来たマルコシアスは全て同一個体ではありません。
ダークバトラーバットの討伐適正レベルは2200です。
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