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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都王宮編 前編

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Ep-82 ハンス解放団内部、大解剖!

大解剖と言いつつほぼ地下だけという

解説はついてます。

放課後、俺はその足で王都の中心部へと向かう。

カイと解放団本部で会う約束をしているのだ。

見慣れた街並みを歩き、この間と同じ道のりを歩く。

ただ、解放団は一応反政府組織だ。

王城とは反対方向にある。


「確か、この辺に法螺貝(ほらがい)亭があるんだよな」


あの不思議な店はかつての大通り沿いにあったらしく、解放団のある旧市街にある。

解放団もかつては誰かの家だったらしく、あの広さも納得できる。

ただ、法螺貝亭とは違って解放団はちゃんと道に面している。

解放団の前までたどり着くと、丁度いいタイミングで団のメンバーが出てくる。


「あっ、ユカリ様」

「どーも」

「カイ様がお待ちです、どうぞ」


そのまま俺は団のロビーへと通される。

ロビーと言っても各部屋につながる吹き抜けだが、

意外と解放団の建物の3割を占める大きさの部屋だ。

そんなロビーに、


「時間通りですね、ユカリさん」


昨日とあんまり変わらない姿のカイが、懐中時計を見ながら立っていた。

地下水道を歩いたそのシャツ、ちゃんと洗ってるのかな?

そして、その隣には一際大きな男がいた。

男と言っても、若さの絶頂という訳でもない初老だが。


「こいつが、お前の言うユカリとやらか?」

「そうだよ?どうしたの爺さん」

「そうか。見たところ丸腰だが?」

「武器はスキルで出して使うんだってよ」

「そうか—————死ね」


男はカイと何気ない会話を交わし...そのまま神速で俺に肉薄してきた。

は、速い!

俺は心の中で高速詠唱(クリエイトウェポン)を完成させ、黄昏(トワイライト・)籠手(ガントレット)を呼び出す。


ガイィィィン!


男が振り上げてきた拳を、籠手で素早く受け止める。

盛り上がった筋肉からして、相当の威力と見たので、受け流す態勢を取ったうえで。


「何のつもりだ」

「...!ノーラ爺さん!ついにボケたのか!?」


初対面でいきなり殺しに来るとは、一体どういう了見だ?

と思っていると、ノーラと呼ばれた初老の男はガハハ、といきなり笑った。

やっぱりこいつ、どこかイカれてるのかな...と思ったが、どうやらそうではないらしい。


「どうやら団長を誑かしただけの偽物ではないようじゃな」

「ノーラ爺さん、そういうことは最初に言ってくれよ!心臓が止まったかと思った...」

「がはは、すまんなあ...団長には秘密だぞ?」

「勿論。最悪亜人部隊が解体されてもおかしくないからな。」


どうやらこの爺さん、初対面の俺を試したようだ。

それにしちゃ目がマジだったけどな...

まあ、俺の力が大したことなかったらそのまま殺すつもりだったのだろう。

良くも悪くも、ハンスの忠臣という訳だ。


「それで?カイはこのお爺さんを呼んで如何したかった訳?」

「そりゃ勿論...顔合わせさ。団長以下のイルマ、ルドルフ、フィアス、俺は姐さんの強さと団長が惚れた理由がとりあえずは分かってる。だけど、最後の一人のノーラ爺さんが変な気を起こさないとも限らないからな、こうして顔を合わせる必要があったわけだ」

「なるほど」

「ワシもバカではないからのう、団長に女ができたと聞けば、誑かされたか、洗脳の類を疑った。...しかし、目出度いのう。ワシも『群れ』を離れて30年ほど経ったが、人間とは言え群れのボスに番が出来たともなれば嬉しいものじゃて」


うん?

あれ、俺ってハンスの女的な立ち位置なの?

冗談じゃない、極道の妻は映画だけで勘弁だ。


「待って待って、私は別にハンスとはそういう関係じゃないよ」

「ほう?そうなのか...残念じゃな。あの男、未だ昔の恋を忘れられんようじゃな。お前さんのような人間の女の中なら国の宝ほどの少女を囲わぬとは...」

「うん?昔の恋?」

「ああ、忘れとくれ。全て過去の事じゃし、団長も他人に喋るなとは言っておらんが、喋ってほしいわけでもあるまい」

「そうか....」


気になるな...あの筋肉巨漢が恋をするとはね...

しかし聞いても答えてくれそうにはないので俺は諦めることにした。


◇◆◇


「今日の用事はもうないが...ユカリ姐さん、この後どうすんだい?」

「そうだなあ...各部署でも見て回ろうかな?」


ここのマップはゲームの時は未実装または解放団自体が存在していなかったので、

俺はここの構造を知らない。

ちょっと見てみるのもいいだろ。


「そっか...じゃあ俺たちの亜人部隊の部屋から先に行こう」

「そうじゃな...こっちじゃ」


俺は早速やる気になったらしい二人の案内で地下へと向かう。

解放団は元々あった建物部分より、後から作った地下部分の方が大きいようだ。

地下は三階まで存在し、亜人部隊は地下三階全体が割り当てられている。


「ユカリさん、暗いからお気をつけて」

「こんな真昼間でも暗いからのう」


地下への階段は薄暗い。

一応壁際に魔道具っぽいランプが掛けてあるが、安物か長時間低コストで稼働できるもののどちらかなのだろう。光が弱く、階段全体を暗く照らすには光が足らなかったようで、階段が影になって転びやすそうだ。

おっかなびっくり階段を下りる。

毎日この階段を使っているカイとノーラは慣れたものでさっさと階段を下りていく。

階段を2つ降りると、地下一階へたどり着いた。


「ここは倉庫階だな。備品が入ってる。地上部分が吹き飛ばされても大丈夫なように地下にあるんだ。備品を出す奴の苦労も考えて地下一階にしてるんだ」

「へえ...」


そんな会話をしながら通り抜ける。

さらに階段をまた2つ降り、また似たような階へとたどり着く。


「ここは倉庫じゃ無いの?」

「違うな。ここは危険物や効果が不明な魔道具を保管・研究・実験を行う場所じゃな。階段で事故を起こさないためにこの部屋専用の小型魔導リフトが設置されとるぞ」

「はあ...倉庫の下、危険物の下...亜人部隊って相当追いやられてるの?」

「違うぜ?俺たち亜人は多種多様。生きているだけで普通の人間に害を及ぼす奴も、力の加減が効かないやつもいる。地下三階は上にある部屋のどれよりも広い。亜人部隊の基地のようなもんなのさ」

「へえ」


そして、また階段を降り...

亜人部隊のフロアへとたどり着いた。

重そうな扉をノーラが開くと...


ワアァァァァァ!


抑えられていた声が一斉に溢れだした。

扉の向こうは相当に騒がしく、音の爆発で耳が痛くなった....


「あっ、カイさん、ノーラさん!おーい皆!隊長と副隊長がお戻りになられたぞー!」


扉の向こうで受け付けのような机に座って作業をしていた男が、カイとノーラに気づいて声を張り上げた。そして、一斉に爆音のような返答が帰ってきた。


「「「「「隊長、おかえりなさーい!!」」」」」


物凄い轟音だ、ドアの枠がビリビリと震えた。

いつもの事なのだろう、カイとノーラは慣れた風に進んでいった。




そして、数時間後....

俺はロビーにいた。


「すまねえな、ユカリさん...他の部署も紹介したかったんだが」

「長い時間を取らせてしまったのう...すまんすまん」


俺は亜人部隊の皆に大歓迎され、各部屋を案内されてしつこいくらいに紹介された後、宴に強制参加させられた。...人間と亜人が仲良くできないのも、もしかするとこういう文化の違いがあるのかもな。人間の歓迎は亜人にとっては他人行儀すぎるし、人間にとっては亜人の歓迎は距離が近すぎる上に身が持たない。

ようやく解放されたが、時間はすでに夜の9時を回ってしまった。

これ以上はベルに心配をかけるし、さっさと帰ろう。

一応言っておくと、一階には武器庫とかがあって、俺が戦った大広間も別の部屋から繋がる階段で行けるそうだ。亜人部隊の部屋とも繋がっているらしく、有事の際はこっちを使うそうだ。部屋が破損するのでいつもは狭い階段を使うんだそうだ。

そして中庭は訓練場、二階はルドルフのような暗殺分野の人間がいる部署、三階はフィアスのような戦闘メインの野郎どもが集う部署らしい。四階はハンスの部屋と事務室があるそうだ。


「さて、じゃあ今夜はここで解散しよう」

「そうだね。ユカリさん、良い夜を」

「夜道に気をつけろよ~」


というわけで、俺は寮へと戻った。

遅くなることを伝えていなかったのでベルには説教を受けたが、夕食はしっかり俺の分も作ってくれていた。

しかし、この時の俺は知らなかった。

同居人ベルが、解放団と関わることになるとは...


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