Ep-81 日常と休校措置
最近バトルばっかやってたので、日常を入れます。
ただ、バトル要素が無いとどうしても内容が薄くなりがちに...
両立は難しいですが、頑張ってやっていきます。
俺がカイと一緒に闇マーケットを潰した翌日。
俺は学院長室へと来ていた。
理由は単純。俺も忙しくなってきたので、そろそろ学院長に頼んで休校扱いにしてもらおうと思っているのだ。
「あら、ユカリさん...この間はどうもありがとうございました」
「良いんですよ、私にできることをしたまでです」
「それはよかった。でも、フーすら手も足も出なかった相手を倒してしまうなんて、流石はユカリさん...という事なのでしょうか?」
学院長アルマは真面目な顔をしてそう言った。
確かに、フーが手も足も出なかったのは不思議だよな。
あの”マルコシアス”という野郎はそんなに強くなかった。
仲間と協力してやったのだろうか...?
まあ今は、考えても仕方ないな。情報が足りなさすぎる。
「さて学院長、本題なのですが————」
「休校したいんでしょ?いいわ、やっときますよ」
「いいんですか?」
「ええ。オルドさんが貴族なら忙しいから最大一週間まで何度でも休校してもオッケーというルールを作っているので...」
「そんなバカな...」
「いえ、あの方は貴族様ですからね...といっても、ユカリさんと会った頃くらいから別人のように性格が変わりましたが。ですが、このルール適用しないわけにはいかないでしょう?」
「だけど、それを適用すれば...」
「大丈夫です、このルールは今年で破棄します。一週間経ったら一日は来てもらえるので世間でも問題はありません...多分。」
「学院長...」
まさか学院長アルマがこんなに柔らかい性格だとは思わなかった...
エルフらしいし出会った時の態度もそうだし、あらゆることを許さない厳正な性格かと思ってた。....年齢は100越えらしいし。
「あなたは特別ですよ。これは私情ですが...」
学院長の家族は森都に住んでいたのだが、原因不明の膨大な魔力によって引き起こされた
魔法災害によって森都は壊滅したらしい。
幸い学院長の家族は生き残ったが、仲間たちは食糧難と魔物の襲撃によって命を落として行った。しかし、そこにリンドが現れたらしい。
「あの方は周辺の魔物を一掃し、私達が食べられそうな植物を集めてくださって、家族だけでなく残った私たちの集落まで救ってくださいました。そしてその直後に竜帝リンドヴルム様が入校して、ユカリさんと初対面から親しすぎるご様子...私にはすぐわかりました。ユカリさんが竜帝を派遣して家族を救ってくれたんだと」
いや、違うけど...
多分ちょっと前にリンドが言っていた、”風土ごとに異なる付き合い方”を実践したんだろうな。そのおかげでかなり感謝されているようで...
ただ、流石のリンドでも全員のエルフを救うことは出来なかったか。
まあ、エルフ関連のフラグは諦めよう...
「ですから、こういった形でお返し出来たら、と思います」
「学院長...」
『アルマはこういう所昔から甘いよね~』
「フー!」
『ふふん、アルマは年下の女の子の面倒を見てたから、どうしても甘いんだよね』
「黙りさない!フー!」
『はーい』
いつの間にか傍に来ていたフーがそのようなことを言う。
けど、年下の女の子って、アルマからしたら人間の老婆でも年下の女の子扱いなんじゃないのか?
エルフって大変だな...
けれど、こういうわけで俺は学院に縛られず活動できる。
◇◆◇
「というわけで、ユカリさんはしばらく定期的に休校します」
教室で担任の先生がクラス全体に言う。
当然ざわざわとクラスは騒がしくなる。
「え~、ずるい!休みだなんて」
「でも、あいつは貴族だし今じゃ王城に呼ばれてるってくらいらしい」
「王子様のお気に入りなんだって」
「いいなあ、私も王子様に見初められてみたい」
うーん、その王子様も怪しいもんだ。
王も王子に何も言わんからなあ。
洗脳されているのか本気なのか俺には計りかねる。
けれど、このまま王城に通い続ければ何時かは尻尾を出すだろう。....幻獣だけに。
「ユカリ、俺たちはどうなるんだ?」
「そうよ、私たちはどうやってユカリに会えばいいの?」
「あ、それでしたら私に考えが...」
「そうだ。」
集合場所や連絡について俺に質問する中、アレックスだけが全員に向けて話す。
「俺はエストニア家次期当主に舞い戻った。家族は地方のエストニア領に戻るらしい。どっちみち屋敷は半壊して応急処置をしただけだ。...そこを俺らのギルド拠点にする」
「「「おお~...」」」
そう、アレックスはいつの間にかエストニア家の次期当主の座を奪還していた。
その際父上と少年漫画ばりの大迫力バトルを繰り広げたようで、屋敷は半壊したらしい。
一体どんな戦いをしたんだか...
まあ、それはそれとして、アレックスの家族は父親と娘は地方にあるエストニア領に、次男のブラウトはアレックスの補佐に回り屋敷を管理するらしい。地方のエストニア領には三男がいるが、アレックスは名前も知らないらしい。
知らないうちに、アレックスが俺より偉くなってしまった...
俺の気のせいか、アレックスは出会った当初より一皮剥けたような雰囲気がある。
まあとにかく、泊まるところは学院寮、アレックスの実家になる。
ただこれって、俺がアレックスの家に泊まるってことなんだよな。
「まあこれからも、頑張っていこう」
「チッ...そうだな」
「そうね」
「そうですね」
クレルからの視線に耐えきれずアレックスがそう言って、俺たちは各自の席に戻った。
下校の時間が近づいており、もうすぐ冬の校舎には夕陽の光が差し込んでいた。




