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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都王宮編 前編

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Ep-80 ペリカ

前半:ユカリ視点

後半:カイ視点


なんかゾーン入ったので2話分書けました。

当分一日二話はありません。

薄暗い下水道を進む。

俺とカイは下水道を進んでいる。

前にレベル上げの為に下水道に行った時と同じ凄まじい臭気と、瘴気が俺たちを襲う。


「クリエイトウェポン、ボレアスシールド!....スキルセットチェンジ!げほっげほっ!セットシールド!.....ブリーズシールド!フロートシールド!」


俺は風の壁を作り出す為に盾を呼び出し、スキルにて前方に浮かべた。


「それが、団長の言っていたユカリ姐御の力....?」

「まあ、そんなもんだ」


スキル名は叫ばなくとも心の中で思うだけで発動できるのだが、ついつい叫んでしまうのは何故だろうか...


「凄いな、その盾の意匠...どこで手に入れたんだ?」

「ああ、これは...」


この盾、ボレアスシールドはとあるダンジョンのドロップ品だ。

高レベルになって〈超越者〉と出会うことが多くなってから、この盾を持ってる人に出会って記憶させてもらったものだ。ユニーク下位の武器で、風魔法への大補正が掛かる。


「とある人に貸してもらったんだ」

「そうか。その人に会わせて貰えるか?」

「いいや...」


俺は無理という意味を込めて首を振った。

元の世界に戻っても、もう引退してしまった人だから会えるかどうかは分からない。

あの人、苦労性だったよな。リアルでも元気かな....?


「あった。あの角を右だ...ここからは小声で」

(わかった)


そんな考えに耽っていると、カイが声を上げた。

どうやらもうすぐ目的地らしい。


「エッジ、隠せ」

『了解』


影から黒い霧が噴き出し、俺たちを暗闇に紛れさせる。

これはシールド系の支援魔法の一種、範囲隠密術のハイドフィールドだ。

エッジに事前に準備させておいたので、スキル名無しで発動可能だ。


(それは...?)

(魔道具みたいなものだ)

(なるほど)


そして、俺たちは角を曲がる。

そこには、地下とは思えない光景が広がっていた。

いや、ここは地下道につながったどこかの地下室のようだ。

大きな階段が見える。入り口は多分あそこなんだろうな。

そして、奥まったところに大きな扉があり、ごつい格好の男が二人立っていた。


(あれが護衛だけど...お前ひとりでも十分やれるんじゃないか?)

(あの奥は大部屋になってる。多分人数にして50人ほど、護衛や警備がいる。)

(なるほど...じゃあ、私が道を作るから、お前は一気に突破しろ。武器は?)


武器を尋ねると、カイはポケットに手を突っ込む。

そしてそこから、長い棒.....いや、槍か。三又の槍を取り出した。

なるほど、ポケットを魔法の袋にしているのか。

こういった創意工夫も新鮮だな。


(この槍で戦う。姐御は?)

(お前が突入してから行こう)

(分かった。じゃあ....行くか)

(おう)


よし、行こうか...

なに、どんな結果になっても問題ない。俺は念のためにアイテムボックスから取り出した仮面(効果は特になし)をつける。

そして...


「ヴィント・シュティメ!」


俺は武器スキルを発動しながらハイドフィールドから飛び出す。

盾の前面に付いた獅子の顎が開き、そこから荒れ狂う暴風が飛び出す。

暴風はそのまま警備の男たちごと扉と壁を吹き飛ばした。

轟音が鳴り響き、入り口が崩落する。


「行け!」

「了解!」


風を振り切り、カイが内部に突入する。

おっと、忘れてた。


「関係ない奴は傷つけるなよ!」

「分かってるよ!」


本当かなあ....


◇◆◇


絡みつくような風の抵抗を押し切り、ボクは大広間へと突入する。

そこは丁度、オークションの真っ最中だったようだ。

亜人だって人間だ。奴隷だって人間なんだ。同じ人間が人間に値段をつけて売り払い、それを買う奴がいる。.........虫唾が走る。


「何だお前は!」

「取り押さえろ!」


オークションの主催者らしき人物が叫ぶと、護衛と警備が一斉に立ち上がり、各々の武器を抜いてこちらに向かってくる。

取り押さえる気はないな。そう判断したボクは、魚人族の膂力を駆使して素早く槍を構える。そして、床を蹴って飛び出す。


「こ、こいつ飛びやがッぐはっ!」

「まず一人」


ボクはボクに一番近い距離にいた警備の頭蓋を槍で貫く。

これが大義なき戦いだったらボクはきっと殺すのを躊躇っていただろう。

だが、こいつらは亜人オークションの警備。

生かして返す理由はない。


「こいつ、やりやがった!」

「囲め!生かして帰すな!」


警備と護衛が共にボクを円状に囲む。

...これでボクを倒せるとでも思ってるのかな?


「ハハハ!これでお前はお終いだ!...ヒーロー気取りで入ってきたは良いが、1人しか殺れなかったなぁ!?死ねぇ!」

「ふっ!」


男たちは一斉に剣をボクに突き出してくる。

そんなもので.......ボクを殺す?


「亜人を舐めるなァ!」

「ぐぎゃああああああっ!」

「く、クソっ!」


ボクは突き出された剣を全て躱し、ボクに喋りかけて来た護衛の男の胸を一突きした。

引き抜く。

鮮血が迸り、力無く男が倒れる、...即死だ。


「こ、こいつぅぅぅ!各自、散開!殺せ!必ず殺せ!」


次は、こいつからだ!

ボクは槍を持って跳び、主催者を狙う。

しかし、主催者は逃げようとする。

逃げるな!

ボクが追おうとすると、背後から剣が飛んできた。


「行かせるかよ!」


どうやら、ちょっとは骨があるみたいだね。

けど、逃がすわけにはいかない!

ボクが再び足を動かそうとした時...


ザグッ!


そんな音が響いた。

余裕の表情で裏口から逃げ出そうとしていた主催者の胸が、剣で貫かれた音だ。

剣の持ち主は......ユカリさんだ。


「何を手間取っている?」

「........!」


主催者は胸を貫かれ、それでも僅かに外れたのか苦しみながら息絶えた。

ユカリさんは一瞬血溜まりに倒れた主催者を一瞥すると、直ぐに裏口から消えた。

ハンス団長は、ユカリさんのことを甘いと言っていた。きっと今回も、殺さず拷問すればよかったとか、考えてるんだろう。

前にハンスさんが話してくれた盗賊討伐の話を聞く限りでは、きっとそうだ。


「おらぁ!」

「遅い」


ボクはそんなことを考えながら、四方から振るわれる剣を避ける。

欠伸の出そうな攻撃だ。

ボクは、二人の男がぴったり重なるラインへと素早く移動し、槍で二人ごと貫く。

そいつらは悲鳴も出せずに絶命した。

残り二人。

ボクはその二人の方を向く。

靴からキュッと音が鳴り、ボクの攻撃の合図となった。

素早く振り被った槍を、思い切り前へと突き出す。


「ぎっ」

「があっ」


ボクは素早く貫き、素早く引き抜いた。

時間にして一瞬の後、二人分の悲鳴が響き、地下室は静かになった。

それと同時に、ボクは振り返る。

地下室は演劇の舞台のようなステージが一番奥にあり、それを眺めるような形で椅子が置かれていた。そして、ステージの上にて丁度オークションの真っ最中だった少女に、ボクは素早く肉薄する。猿轡が嵌められた口から、小さな悲鳴が漏れる。


「大丈夫だよ」

「んんん!んぅ....!」


ボクはポケットから取り出したナイフで猿轡を切り落とした。

少女の口が自由になる。


「貴方は、誰?」

「ボクは...ボクの名前はカイ。君の......騎士だ。十年は過ぎてしまったけれど...立派な男だと思うだろうか?」


彼女は覚えていてくれただろうか?

彼女はじっとボクの顔を見つめ...何かを思い出すような素振りを見せた。


「あっ!もしかして......よく林檎を買いに来てくれたカイ、カイ君!?」

「そ、そうだよ!告白の約束通り、こうして立派な男になって帰ってきたんだ!」

「立派な....男.....?」


あ、ボクの...魚人族の身体の成長が遅いってことを知らないのか。

ボクはそれを伝える。


「実物は...そこまで美形じゃなかった....ずっと、辛い時も苦しい時も、カッコよくなったカイが迎えに来てくれると信じてたのに..........」

「ぐはっ!?」


ボクはかなりのダメージを精神に負った。

致命傷だ。

しかし、彼女は言った。


「でも、私のために昔みたいな無茶をしてくれたんでしょ?だったら、私も約束を守らなきゃ」

「でも、ボクみたいなのでいいのかい?理想と違うようだし...」

「将来どうなるかわかんないでしょ!私はペリカ。猫人族のペリカよ。...末永くよろしく、私の騎士さま」

「ペリカ...」


ずっと聞けなかった少女の名前を聞いて、ボクは満足だった。

後は、彼女の拘束を解くだけだ。

ボクは彼女の拘束を解いてあげた。


「ありがとう。久しぶりに手が自由に動かせる」

「どういたしまして」

「おーい!もう撤収するぞ!」


いい感じの雰囲気だったボク達に、雰囲気を破る可憐な声が飛んだ。

声の方を振り向くと、他の奴隷を連れたユカリさんが立っていた。


「ここは誰にも知られずひっそりと役目を終える。ショーの参加者は私らの顔なんて覚えてないし、主催者は行方不明だ。奴隷はどこかに消える。奥にあった目録は処分したし、こいつらが狙われる心配はほぼない。...さあ、早く行くぞ!ポータルアロー!」


ユカリさんはそこまで話すと、壁に何かの矢を放った。

するとそこに光の裂け目が現れて、ユカリさんはそこに奴隷を運び入れていた。


「入り口は全部崩落している。こんな地下室で死体の仲間入りをしたくないならさっさと来な!」

「は、はい!ペリカ、行こう!」

「うん!」


ボクらは慌てて裂け目へと飛び込んだ。




後日。

ボクはユカリさんにお礼をしに行った。

だが、


「何もいらない」

「へ?」

「何もいらないって言ったんだ。欲しいものはただ一つ。...団長に更なる忠誠を誓え。その忠誠がやがては私のものとなる」

「ハッ!」


ユカリさんは、無欲で高潔な方のようだ。

ボクはますます尊敬を深め、ノーラ爺さんにもこの事を話してやろうと思った。

また、ペリカ率いる奴隷達は、何だかんだで子供好きな団長の好意によってフィアスに指導を受け、ボク直属の私兵として面倒を見てもらえることとなった。

けど、ボクは一つ思った。...これ、ユカリさんに頼まなくてもボク一人で何とかなったな...

と。まあ、失うものは何一つなく、ハンス団長に忠誠を誓うだけでいい。やっぱりあの人は、よく分からないな...


感想も、評価も、ブックマークも求めて書いてもらったりしてもらうものじゃ無いと気づきました。

でもせめて、感想だけは書いていただけると嬉しいな、と思ったり。

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スキル名は叫ばなくとも心の中で思うだけで発動できるのだが、ついつい叫んでしまうのは何故だろうか... ↑、まぁ・・・文字で表現する小説だと、不必要に今からする攻撃を宣言しないと、読者に伝わらないからね…
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