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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-780 灼熱を後に

こうして、ジングの故郷を巡るあれこれは一応の解決を迎えた。

とはいえ、村人たちは住む場所を失った。

私は仕方なく、生き残ったべシュームに、御神酒の残りを与えた。


「これを水に垂らせば、水源まで浄化が行き渡るはずです」

「ありがとうございます」


村人たちは住む場所を失い、元いた集落に戻ることになった。

それは決して楽な道のりではないけれど、砂嵐や魔物は私たちが排除したのだから少しは楽になるだろう。

ジングが苦しんだ分には届かないとは思うけど、目一杯苦しんでほしい。


「ジング、本当に未練はない?」

「...ああ」


戦いが終わった後、ジングはベシュームから貰った名簿通りに墓を建てた。

墓地には水神と海神、炎神...つまり私とプロメテウスの祝福が宿って、魔物から認識されなくなっている。

コルで試したので大丈夫だ。

闘気眼で視るまではコルにも分からなかったらしい。


「じゃあ、行こうか」


ジングは流石にこの先の戦いについて行けそうに無かったので、私が持ってる中で最上級の装備を与えている。

少しだが魔法も使えるようにはなったし、魔剣士としてやっていけると思う。


「ユカリ様、昇降機は既に発見しております」

「ほんと!? どこにあるの?」

「ジング様が住んでおられた村の南西にございます、反対側ですね」

「うーん...まあ、しょうがないか」


移動はあの船を再利用すればいい。

ちょっと時間はかかるけどね。


『ユカリ様、あのポータルアローというスキルは使われないので?』

「...いや、忘れてただけ」


存在を忘れてた。

ポータルアローがあれば...ってそうか。


「...そういえば、アレは記録しないと転移できないんだった」


流石に世界間の転移はできないようで、ここに来てから使ったけど地上には出れなかった。


『...そうでしたか』

「ごめん」


移動系のスキルや魔術はもう少し増やしておきたいのだけど...あ、そういえば。


「ハルファス、塔を建てて転移できる?」

「可能ですよ」

「じゃあ、そうしよう」


ハルファスの魔術は、塔を建ててそこに転移できる。

私と同じで地上には飛べないみたいだけど。


「〈万物創築(デミウルゲイン)〉」


ハルファスが塔を建てて、そこにみんなで入る。

全員入ったのを確認したら、行きに使った昇降機の側に塔を建てて転移する。

転移が終わって外に出ると、遠くに集落が見えた。


「...ああ、帰ってきたのか」

「やっと上に行けるのね...ここ暑いし、ユカリがいないと大変なのよ」

「贅沢言わない」


塔をダンタリアンとプロメテウスが破壊して、全員で徒歩移動する。

集落を通り抜けて、その際にジングは物資を回収。

逆に私たちは救難物資を置いて、そのまま通過。


「...こんな所に...知らなかった...」

「うーんまぁ、仕方ないと思うよ」


高い岩山が複数連なって、その背後に隠れるようにして昇降機が存在していた。

私たちは昇降機を確認する。

最近影の薄かったバーンとゴッツだったが、


『うん、まだ使えるぜ』

『問題ねぇ!』


どうやら、使えるらしい。

この灼熱地獄ともお別れか...


「プロメテウス」

『悔いはあるが、未練はねぇ。...オレを頷かせたのは、姐御だろ』

「...まあね、ミレアはこの一行に抵抗はない?」

「問題ないです! ルシ...ユカリ様がいらっしゃるだけで、大抵の問題は片付きますから!」


そういうことじゃないんだけど。

なんで火属性はみんなこう単純なのか...


「なあ、ユカリさん」

「ユカリ、でいいよ」

「ユカリ、ここは...空の向こうに行けるのか?」

「うん、空の向こうに行けるよ」


私は上を見上げた。

赤っぽい光を相変わらず齎している壁。

それを唯一超えることのできる手段がこれだ。


「じゃあ、乗ろうか」


私はみんなの方を振り返り、そう言った。

誰も反対しない。

そりゃそっか。

私たちはそこそこ手狭になってきた昇降機に乗り込む。

起動した昇降機は、ゆっくりと上に登っていく。


「あ......」


ジングが小さな呟きを漏らす。

それを私は聞き逃さなかった。

ジングの視線を追うと、その先には彼のいた集落が見えた。

昇降機が一定の高さに達すると、砂漠が見渡せるようになった。

プロメテウスが苦い顔で、半壊したピラミッドを見ていた。


「プロメテウス」

『言ったろ、後悔はあるが、未練はねぇ』

「...うん」


プロメテウスの魔法体が消え去り、アイが携えた魔剣の中へと戻った。

もうすぐ通過点だ。

天井を通過する。

何故か、この昇降機だけは天井を突き抜けられるんだよね......

遺跡にしては不自然だし、なんでここにあるんだろう?

ま、いいか......







「着いたのか?」

「そうみたい」


毎度毎度、出るのには苦労するのだが....今回は大丈夫だ。

今までずっと岩の中を通ってきて、ようやく地上に出たという感じだ。

扉を開けて......


「すごい....」


感嘆した。

あちこちに結晶が生えている。

それは、天井からも。

結晶の鍾乳洞のようだ。


「ユカリ様!」


その時。

警告するようにハルファスが叫んだ。

一体何が起きたの?


「魔術が使えません」

「えっ?」

「発動はしますが、効果を発揮する前に消滅します」

「うそ.....〈堕天之(ルシファール・)魔皇剣(グラディウス)〉....発動するよ?」

「いえ、放出系等です」

「...マジックミサイル! あ、本当だ....」


新しい環境。

中々に癖が強いようだった。


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