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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都王宮編 前編

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Ep-77 レベル上げ4(後編)

レベルが上がるのはユカリさんよりベルのほうが大きいですね。

エリアの敵を全滅させても経験値は微々たるもの...

まあ、元ネタ重視ですね。

ユカリ:Lv105→Lv107

ベル:Lv72→Lv81

暗い森に声が響く。


「開け、水神の顎門よ!大海はここにあり!タイダルウェイブ!」

『天よ來て、黒き雷の戦槌よ!ミョルニル・ジャッジメント!』


ベルと魔王ダンタリアンの同時攻撃により森が水で洗い流され、そこに空より黒い雷が降り注いで正確に魔物を貫いていく。

タイダルウェイブは食塩水と同じくらいの塩分濃度の海水をぶっ放す技なので、雷撃はより良く通るわけだな。


「そんな…古代の魔導書にもない魔法…?それに、なんて精度。余程鍛えなければここまでの精度は身につけられなかったと思うわ」

『ふはははは!古代の魔王を舐めるなよ~!』


ダンタリアンは雷をどんどん降らせて魔物を倒している。

本人が言うには元々はレベル664だったらしいので、ここの魔物なんて雑魚中の雑魚だろうな。ベルにとっては格上だけど。

ちなみに今雷で一撃死した蛇の魔物は確か推奨レベルが110。

ん?よく見ると雷に打たれていないのはベルでも倒せるレベルの魔物だけか?


「ダンタリアン?」

「何だね、人間の女」

「ユカリだよ。それよりベルでも倒せる魔物だけを撃ち漏らしてるのはどういう了見だ?」

「なにっ!?貴様なぜ分かった!?」


見りゃわかるよ。リンドも驚いているので、後でベルに伝えて良いところを見せたかったのだろう。まあ、それはいいけど同格より少し上と戦ったほうが経験値はより多く貰える。

本人の成長のためにも、高レベル者は黙っていてもらおう。


「ダンタリアン?」

「お、おうベルよ、何用かね...?」

「余計な手出しは要らないから。強化魔法だけかけて頂戴。」

「ほっ...」

「リンド、何で黙ってたのかしら?後で覚えておきなさい」

「うっ...」


ベルは学者根性故か、曖昧な作業や非効率な作業、下手な誤魔化しを嫌う。

ダンタリアンはかつてのアムドゥスキアス...クソ長いから今度からアムドゥにしよう。

アムドゥのために配慮したのだろうが、やっぱりダンタリアンは女心が分かってないな。だから結局アムドゥと結ばれず終わったんだよ..........

リンドも、初恋の相手がいるようだが女心が分かってないな。

相当気さくな相手だったようで配慮もクソも無い。

女の子の前で生理のことを平気で口に出しそうな雰囲気である。

….そういえば、何故か俺は来ないんだけど、これなんかヤバイのかな?


「私も負けてらんないな!」

「おい待てユカリ!何をする気だ...」

「ブースト・クリエイトウェポン!バースト・クラスターキャノン!」


かつて飛竜の群れに使った、禁断の砲身が俺の手元に現れる。

昔はこれ相当に重かったけど、ステータスの影響か今は物凄く軽いな。


「スキルセットチェンジ、セットキャプテン!....クラスターマグナム!」


空に向けて撃ち出した砲弾は、空中で弾けて小爆弾を撒き散らす。

このままだと俺らも巻き込まれるからな...


「エッジ!」

「了解」


既にクリエイトウェポンとスキルセットチェンジを済ませたエッジが影から飛び出し、不沈盾を構えてスキルを発動する。


「ガーディアンフィールド!」


そして小爆弾が降り注ぎ、森が炎で包まれる。

ガーディアンフィールドにぶつかった爆弾は大爆発を起こすが、何の問題も無い。


〈レベルが上昇しました〉

〈レベルが上昇しました〉


森は火の海に包まれたが、これで確実に魔物を殲滅しただろう。


「ちょ、ちょっとユカリ!私の倒す魔物がいなくなっちゃったじゃない!」


ん?何を言ってるんだ。”ちょっと格上”を倒しても得られる経験値は微々たるものだぞ?

ダンタリアンが”ちょっと格上”をほぼ全滅させてしまったせいで、経験値効率は最悪だ。

なら.......


ゴゴゴゴゴゴゴ...


「ね、ねえユカリ、何をしたの...?地響きがしてるんだけど...」

『..........俺は突っ込むべきなのか?』

「やめておけ。彼女に何を言っても無駄だ」


突如地響きが発生し、ビリビリと空気が震える。

それについてダンタリアンの魔杖が淡く光り、小声でリンドに相談するが、

諦め顔のリンドに一蹴されていた。

そして地鳴りの音は大きくなっていき...


ジャアアアアアアアアアッ!


俺たちの前の地面が下から昇ってきた何かによって砕かれる。

それは、蛇。

虹色の鱗を持つ蛇は、俺たちをその眼で見つけると、牙を剥き出しそのまま襲い掛かってきた。


◇◆◇


さて、この蛇の名前は何でしょ~か~?

正解者には経験値1%ポーションを贈呈いたします。

正解は...


虹蛇 Lv???

〈スキル〉

????


虹蛇でしたぁ~!

ちなみに、これは俺の新しい能力...というかメニューの機能で、

3秒以上見つめた魔物の詳細を知れるというものだ。

もっとも、強力すぎる魔物は詳細が表示されず名前だけ見れる。

ヘルプを見る限り、何度も戦ったり長時間交戦したりすると解析が進んで詳細が見れるようになるのかもな。


「な、なんて大きい...」

『おお、そこそこの強さだな』

「ユカリ、これをベルに倒させるのか?」


勿論。

ただ、エリアボスはレイドボスと同じで1人ではどう頑張っても無理だ。

だから俺たちがいる。


「出てこい!エッジ!エッジ2号!3号!」

「了解」

「2号って...もっといい名前が」

「あるけど付けたら本体が覚えるのが大変よ」


俺はドッペルシャドーの分身を3体出し、ベルの周囲に配置させる。


「いつも通り、分身が虹蛇を削るから援護をお願い」

「...うん!分かった」

「トドメはベルが刺さないと意味ないからね」

「...分かった」


ベルはあんまり元気がないようだが、どうしたのだろうか...

まあいいや、行くぞ!


「行け!分身たちよ!」

「「「了解です(よぉ)!」」」


俺の号令に合わせて分身が一斉に飛び出す。

虹蛇は魔力で強化されたピット器官を持っているので、熱源がしっかり存在する俺の分身でなければ直ぐに見破られてしまうだろう。


ジャアアア!


虹蛇は2号に襲い掛かり、その牙で噛み付こうとする。

2号は短剣装備なので、一番優先度が高いと判断したのだろう。


「ほいっと!お返しシャドウスクラッチ!」


しかし虹蛇の攻撃はあっさりと躱され、返し刀に黒い刃を受ける。

それでも止まることなく、虹蛇は素早く2号から離れる。

そしてそのまま素早く離れ、口腔を開く。


「危険です」


ジャアアアッ!


虹蛇は口から毒の吐息を吐き出した。

それらがベルに届く前に、盾を構えたエッジが立ちはだかる。


「フロートシールド」


エッジからさらに前に、ガラスのように透き通る盾が出現する。


「ストームシールド」


そしてその盾から竜巻が飛び出し、毒の吐息を巻き上げてそのまま虹蛇に衝突する。

虹蛇は全身を切り裂かれ、その場に横たわる。

勿論...


「まだまだ元気でしょう?バレバレなのよねぇ。ホーリーメイス」


ジャアアアア!?


やられたふりをしていたようだが、容赦なく3号の持つメイスで頭蓋をたたき割られていた。もうHPは1割も残っていないだろう。

俺はベルに振り向き、言った。


「さ、後はベルがやっていいよ。多分10レベルくらい上がるから」

「...................うん....」


ベルはどこか寂しそうな顔で、ニュークリアフレイムという魔法を放ち虹蛇を焼き尽くした。レベルが足りないので、虹蛇を殺すことは出来ても死体が焼かれることはないようだな。安心安心、素材もしっかり頂ける。

ホクホク顔で、素材がいくらで売れるか妄想していた俺は、ベルの異変に気付かなかった。


◇◆◇


私は強い。

古代魔術を身に着け、常人では辿り着くことさえ難しいレベル60の領域に、若くして辿り着いた。

私は強く、格上にもそうそう負けないだろう。いや、そもそも私の格上と成り得る魔物などそうそういないだろう...と思っていた。少なくとも昔は。

しかし、私は出会ってしまった。圧倒的実力者たちに。

まず、ユカリ・フォール。出会った当初はレベルこそ自分より低いと直感で感じたが、その物腰、姿勢、態度。何を取っても私より上だった。

更に、ユカリの仲間となった者たち。

最近まで無才の長男、エストニアの恥と言われていたアレックス。彼は圧倒的な剣技で自らの欠点を補い、ユカリと会った後急にスキルが使えるようになり、培った剣技をスキル付きで扱えるようになった。次にクレル。軽い感じの男だが、常にその瞳は静謐な知性で溢れていて、常に警戒を怠らない。どんな戦いをするのか皆目見当がつかないが、ユカリによれば以前に地竜をいとも容易く倒したとか。次は...いや、やめておこう。キリが無い。

とにかく私は、自身がいかに魔力と既存の魔法に頼っていたかを理解させられた。

今日のことだってそうだ。私が悠長にタイダルウェイブ等を使って魔物を倒そうとした矢先、レベル600だという雷の魔王ダンタリアンが、空から黒い雷を降らせて魔物を一掃してしまった。

何より恐ろしいのは、ユカリもリンドもそれを当たり前のように受け止め、ユカリに至っては先ほどよりも大きな破壊を簡単に齎してしまった。

人と言うのは不思議なもので、遠くの人が才を発揮したり、活躍していると妬みややっかみ、悔しさ、そして無感情を抱くだけで済む。だが、身内がそういった人間であると、不思議と寂しい気持ちにさせられるのだ。

そしてユカリは言うのだ。


「さ、後はベルがやっていいよ。多分10レベルくらい上がるから」


と。

そのすべてを知り尽くしたような口調に、私は自身の無力を悟った。

自身が無力なのはもとより分かっていたことだが、それでも辛いものがある。

親しい仲の人間は、自分よりはるかに遠い...まさに〈超越者〉だと。

リンドも、ダンタリアンも、ユカリも、地形を破壊し生態系を根こそぎ破壊する自身の技など、些事に過ぎないのだ。

帰り道、私はユカリに話しかけた。


「ユカリ、あなたは....強いのね」

「..........まだまだだよ、こんなものは真の強さじゃない」

「でも、私はユカリに勝てないわ。何一つ....どうやったら、そんな強さを身に着けられるの?」


つい口を衝いて出た言葉を、ユカリはしっかりと吟味して答えた。


「んー.......ベルはさ、遺跡荒らし...遺跡ハンターでしょ?」

「何か言ったかしら?」

「何でもない....それで、私は冒険者を主軸にしてる」

「ちょっと待って、何の話?」

「クレルは三男だから、独立するために技術を磨いてる...一回も戦ってるとこを見たことないけどね。アレックスは...どうなんだろうね。」

「どうなんだろうね...って」


私はいまいちユカリが何を言いたいのか理解できず、混乱した。

しかし、次の言葉で私は大きな感銘を受けることとなった。


「まあ、悩む必要はないってことだよ。私はこれから、この間戦った幻獣のような強大な敵と戦っていくけど、ベルは遺跡探索者でしょ?隣にとっても強くてイケメンが2人もいるんだから、無理に強くなる必要はないよ。今まで通り、好きなことをすれば?」

「.............」


….やっぱり、ユカリの考え方は真似できない。

私はいつの間にか、嫉妬を抱いていたんだ。よくよく考えたら、100年以上を生きる〈竜帝〉リンドヴルムや〈雷の魔王〉ダンタリアンに劣等感を抱いてもしょうがないもんね...

よし!さっぱりした!明日から頑張ろう!


「どうしたの?」

「ユカリ、あなたやっぱ天才」

「?????」


困惑顔でフリーズするユカリを引きずって、私は寮へと戻った。


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