表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1048/1053

Ep-776 後ろ指

「あの子は...ジングは、二十一年前に生まれました」

「それじゃあ、ジングは21歳って事?」

「はい」


ユカリは驚いたように口を手で抑える。

ユカリは今年の10月で21歳になるので、ジングと同い年である。


「当時の我々は、ジングを歓迎しました。五年も子供が流れていた中でしたから」

「そうなんですね」

「ですが、問題はジングが五つになった時に起きました」

「何が起きたのです?」


そこで、ベシュームは一旦言葉を切る。

そして苦々しい顔をした。


「ここに転がっている人々のような、症状の人間が出始めたのです」

「それで...?」

「その内、数人の子供たちが、遺跡に入っていくジングを見たと言い始めたのです」

「ああ.....」


それから、ジングに対する迫害が始まったのだそうだ。

彼の両親も含めて。

増えていく被害者、対策しようがない状況の中、ジングは悪魔の子と呼ばれ、蔑まれた。

その時、私は気付いた。

なんで、ジングがあんなに自活力が高いのか。


「ジングはしぶとく生きていました。幸か不幸か、彼に近寄ろうとする者はいませんでしたから」


呪いが移る。

そう言われて十年を孤独に過ごしたジングは、何を思ったのだろう?


「そして、ジングの迫害が始まってから六年後。水が原因だと、とある人間が気付きました」

「どうして気が付けたのですか?」

「少し遠出して、別の水源から得た水を数か月飲み耐えたんです」


そうか。

毒を排出するには、毒を含まない水を飲めばいい。


「ですが、誤解を解いたとしても、最早......我々の対立は、決定的なものになっていました」

「ただの排斥ではなく、差別や、根拠のない嫌悪になっていたんですね?」

「はい」


人種差別が起きるのは、何もそれを口にする者たちの無知からだけじゃない事を、私は学んだ。

最初は些細なことだった。

不信感から生まれるのは、特定の人物や人種に対する根拠のない嫌悪。

その空気が拡大して、迫害や差別につながる。


「当時のジング一家は、新たな子供が生まれていましたから、我々が関与しなくなった事にかえって清々していたのでしょう」


だけど、ここからジングにとって厳しい事が多発する。

両親を立て続けに失って、残された弟を守らなくてはいけなくなった。


「大人がいなくなり、発言力を失ったジングは、アロクを守るために身を尽くしました。.....そして私も、今までと同じように、ジングを陰から守っていました」

「あなたは....どうしてそこまで?」


口ぶりからすると、ジング一家を陰から守ってきたのはこの人のような気がする。

でも、それだけのことをする理由がない。


「さあ、何故でしょう。とにかく、あなたは恩人だ――――しかし、この村に彼の居場所は、依然としてないでしょう」

「........」


出来る、出来ないの話ではないのだと思う。

嫌いな奴、ではない。

ジングは呪われた子で、関わるべきではない。

そんな考えが浸透してしまい、彼はもうここにいるべきではないと、ベシュームは私にそれとなく伝えている。


「...声を張り上げようと思えば出来ました。しかし、私にも家族はいる、分かってください、聖女様」

「...聖女だなんて」

「魔力ではこの病は治せませんでした、あなたは聖女でしょう」


思ったより、情報は昔から伝わっているらしい。

私は、この人になら本当のことを話すべきだと感じた。


「私は聖女でもあり、神でもあります」

「なんと...」

「ジングはそれでも、私に助けるなとは言いませんでした。ですから、あの優しい青年を、こんなところに縛りつけない助けをしてくれませんか?」

「...分かりました」


決めた。

足手纏いだろうとなんだろうと、ジングは連れて行く。

まずはそのために、できることをしなければ。







それから数時間後。

集落の人々は全員回復した。


「ありがとうございます、聖女様」


怯える人々の中で、代表して私に感謝を述べたのは、ベシュームの妻らしいラシビアだった。


「魔女ではないのですね?」

「ええ。呪いはただの毒でしたから」


ラシビアさんがいくらそう言っても、ジングに集まった敵意の視線は消えることがない。

それに耐えかねてか、ジングは足早にその場を去ろうとする。


「逃げんなよ、ジング!」

「ベシュームさん、なんで魔女に頭なんか下げてるんですか!」


助けてあげたのに、何て失礼だ。

そう思ったけれど、彼等にとってはそんなことどうでもいいのだろう。

ジングに助けてもらったと思いたくない。

その一心で、滅茶苦茶な論理を展開している。


「.....申し訳ない、聖女様」

「いいんです」


もう旅立つから。

ただ、ジングの意志だけは確認しておかないと。


「ただ、私からこんなことを言うのは失礼かと思いますが。薬を提供したのはこちらのはず、それを無視して魔女と謗るのは如何なものかと思いますが?」


その時。

黙っていたハルファスがそう口にした。

威圧感に数人が黙り込む中、一番声が大きかった男が前に進み出た。


「ジングが連れてきたやつを、信用できるわけないだろ!」

「では、どうすればよかったのです?」

「黙れ。ジングと共謀して、最初から俺たちに呪いを振り撒いてっ! 毒を治して感謝されようとでも思ったんだろ!」

「それをするメリットが我が主人にはありません。ジング様も関係ありません。我が主人がそうしたいと願ったからこそ、あなた方の命は救われたのです」


ハルファスが言いたいことを大体言ってくれた。

それにしても、ハルファスがこんなにムキになるのも珍しい。

声大きい人は言い返したがってるけど、ハルファスの威圧感を前にして口が開かないらしい。


「もういい!」


その時、声が響いた。

私の背後にいたジングだった。


「感謝もないなら、そのまま生きればいいだろ! 対価も求めずに助けてくれたなら、それでいいはずだ! 仇で返すなら、その恥を抱えて生きればいい!」

「ジング...」

「俺たちを愚弄するか、恩知らずが!」


もうメチャクチャだ。

私はジングの手を引いて、広場を後にした。

いくつもの後ろ指が向き、怒鳴り声だけが私たちを追うように響いていた。

面白いと感じたら、感想を書いていってください!

出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。

レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。

どのような感想・レビューでもお待ちしております!


↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ