Ep-768 炎水練武(前編)
「姐御、オレと勝負してほしい」
翌日。
ピラミッド内部で久々の野営を済ませた私達だったのだけれど.....
朝ごはんを食べた後、プロメテウスは唐突に私にそう言った。
「ど、どういう事!?」
声を上げたのは私じゃなく、ベルだった。
当然だよね、脈絡がないもの。
だけど私は、頷く。
「プロメテウスとこれから肩を並べて戦う訳だし、力を見せて欲しいかな」
「わかった」
ちょっと強引な導入だったけど、ベルは黙った。
他の魔王たちも、介入しようとしたけど私が肯定的な事を目にして、コル共々黙り込む。
「アイ、頼める?」
「はい、勿論です」
プロメテウスは現在の特性上、アイに憑依して戦闘するのが一番力を発揮できる。
プロメテウスはアイに憑依し、その体がプロメテウスに適応して力を発揮した。
「場所はどうする?」
「外でやろうぜ」
「了解、ハルファス」
「はっ」
ハルファスに、外に平らな場所を作ってもらう。
その上に立って、二人で向かい合った。
「ルールは? このままだと私が大分不利じゃない?」
「ウソいうなよ姐御、ハンデを負うのはそっちだろ?」
残念、騙せなかったか。
私はため息を吐くと、魔皇剣を取り出して魔術で封をした。
「魔王の魔術は使わない、これでいい?」
「充分だ」
直後。
プロメテウスが私の眼前に迫っていた。
『〈爆焔烈刃〉』
「空転・雷動!」
振るわれた炎の刃を前に、私は避けるより先にスキルで回避に移る。
魔皇剣を握り、プロメテウスの背後を取って――――
「甘いぜ、姐御!」
「そうかな?」
魔皇剣にかかっていた隠蔽の魔術が解けて、オハンへと変わる。
私は空転・雷動を使うと同時に、魔皇剣を波浪盾・オハンへと切り替えていた。
「押し流せ、オハン!」
「くっ!!」
盾から水流が噴き出して、プロメテウスを押し流す。
私は水流をそのまま利用する。
「水よ、我に従え! アルビオン・スラスト!」
「〈火流焔獄〉!」
アルビオン・スラストを結界で受け止めるプロメテウス。
私は既に、次の手に移っているけれど。
「〈神聖武器創造〉――――神誅狩弓フェイルノート! 貫け、ピアシングレイザー!」
スキルセットを〈弓使い〉へ。
防御を貫く付与スキルで、神を射止める矢を強化する。
プロメテウスは回避行動に移らない。
「しゃら、くせぇ!」
「だよね」
「なっ!?」
プロメテウスは矢を弾き飛ばす。
結界は砕け散ったけど、プロメテウス自身は無事。
――――ただし、私が既に肉薄しているけれど。
「はァ!!」
「危ねぇっ!」
絶対顕聖鎚ジャッジメントを振るい、プロメテウスの回避を誘う。
その上でスキルセットを〈聖騎士〉へと。
「モーニング・スターッ!」
「ふざけんな、クソ! 圧縮焔盾!」
魔法の鎖をジャッジメントの柄に縛り付けた私は、それをプロメテウスへと投げた。
プロメテウスはそれを焔の盾で防ぐ。
だけど、僅かに押されているのが見えた。
「押し込む! 絶対顕聖槍クラウ・ソラス! スキルセットチェンジ、セットスピア!」
三点突きで、勢いをそのままに盾を押し込んでいく。
「こうなったらしょうがねぇ! 〈紅蓮之翼〉!」
手ごたえを失った。
私が上を見上げると、プロメテウスが空にいた。
「〈紅陽絶華〉!」
プロメテウスが、手に小さな赤い炎の球を生み出した。
それは彼から離れるにつれ大きくなって、地上に向かってくる。
「〈替智魔術時針〉! 〈舞夜之鴉羽〉」
黒い鴉の翼を背に生やした私は、空へと跳躍する。
そして、もう片方の手に――――
「アドベント・ウェポン! 〈七天破魔剣〉」
神魔術の媒体となる剣を呼び出した。
私の背後に、時計が出現する。
「ゆ、ユカリ様! それは......!」
「文句ある? ないよねっ」
それを見たことがあるコルが叫ぶ。
だけど、文句は言わせない。
これは本気の戦いなんだから。
「〈神之名於終ノ宣告〉」
時計が一周すれば、魔族を焼き尽くす天罰の火が世界を埋め尽くす。
プロメテウスに効くかどうかは微妙だけど。
「っ、させん!」
「〈光翼輝片投射〉!」
翼を構成していた魔力が破片となって、一斉にプロメテウスへと襲い掛かる。
それに合わせて、更に魔術を重ねた。
「〈九十九魔皇煌星群〉!」
翼の周囲に左右それぞれ三つずつ魔法陣が浮かび、そこから魔弾が無数に飛び出して、プロメテウスに向かって弱い誘導で追尾する。
「さぁ、どうする?」
「どうもこうもねぇ」
最大のピンチ。
だけど、プロメテウスはニヤリと笑った。
「魔王の力がねぇ姐御に、オレが負けるわけねぇからな」
「へぇ」
直後。
プロメテウスに凄まじい魔力が集った。
「何する気――――」
「自爆だぜ――――〈魔力覆殻大爆発〉!」
直後、プロメテウスが凄まじい光を放った。
思わず目をつぶった私は、自分が吹き飛ばされるのを感じていた。
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