Ep-763 最悪なコンビ
『ここは......』
「転移かっ!」
ダンタリアンとハルファスの二人は、転移に気付き即座に対応する。
だが、レジスト出来なかったことから、別の場所へ転移してしまった。
「ダンタリアン、分散型のようだ」
『ベルと分断されたな』
「恐らくはペアで飛ばす方式だろう、問題ない」
『だが、許せるかは別の話だ』
「こちらも業腹だがな」
魔法体になったダンタリアンが、自分そのものである魔杖を握り締めた。
それを待っていたかのように、空間に声が響く。
『魔王.........あなた方には罰など不要。この場で、死んでいただきます』
「舐められたものだな、聖女一人に何が出来る」
『それが出来るのなら千年前にやっておけ』
煽り倒すダンタリアンとハルファス。
それに対して、パレシアの声質は変わらない。
『裁きを』
「来るぞ」
『ふん』
空間に収束された光が、ダンタリアンを狙って放たれる。
だが、ダンタリアンはそれを、無詠唱で放った稲妻で迎撃した。
紫電が、ダンタリアンの周囲に走る。
『〈七玉崩雷砲〉』
七つの雷球を基点に、雷撃が攻撃を防ぐ。
それを見ながら、ハルファスは別の詠唱を始めた。
『我にばかり撃たせる気か?』
「そう急ぐな、ダンタリアン」
ダンタリアンの背後で魔法陣の構築を済ませたハルファスは、それを起動する。
「〈万物創築・変容〉」
『何をする気だ?』
「知れた事」
ハルファスは右手を腕ごとさっと払う。
腕が描く軌跡に乗って、魔法陣が描かれる。
「遊技は不利をも打ち砕く....まぁ、楽しむがいい」
魔法陣の上にはカードのような魔法物体が生成され、ハルファスはこれを手に取った。
「爆発、か」
直後。
パレシアが爆発する。
投影されていた魔法体の術式が爆発したのだ。
ベルに差し向けたようなゴーレムを呼び出しながら、パレシアは魔法体を消す。
『やはり、神の尖兵をもって打ち滅ぼすとしましょう』
「バカなのか? この私の前で――――〈乱造崩落〉」
だが、ゴーレムは完成途中で崩壊する。
築城に特化したハルファスは、その妨害にも長けている。
「では、もう一枚と行こう――――纏雷」
ハルファスはもう一つの魔術を構築する。
それが発動し、雷を纏った壁が創り出された。
『それが何だというのですか? 神の裁きの前にはいかなる防壁であろうとも――――』
「防壁? 私の壁は守るだけではない」
壁が正方形のブロックに分かれ、パレシアへと追いすがる。
パレシアはそれを聖技による砲撃で破壊しようとするが、纏っていた雷がそれを弾く。
『神に唾吐く――――魔族共が.....!』
「それが本性か、どちらが悪なのか分かりはしないな」
『負けた方が悪、世の定めを知って死ね....〈集束轟雷砲〉』
ダンタリアンの魔術が発動する。
七つの雷球から雷を収束した魔法陣が、強力な稲妻を放った。
一瞬で直撃したそれは、パレシアの魔法体を破壊する。
「――――『再起』」
その瞬間に、ハルファスはカードをめくる。
効果を失ったはずの雷撃が復活し、ハルファスの制御によって広範囲に拡散する。
「〈不沈城防壁〉」
続けて発動された魔術により、ダンタリアンとハルファスは雷から守られた。
この二人は最悪のコンビである。
何故か?
それは、唯一ハルファスだけが、他の魔王との権能に干渉せずサポート役に回る事が出来る存在だからである。
ダンタリアンはサポート役を必要としない歩く戦略兵器だが、ハルファスと組めば120%の実力を発揮できるのだ。
『見えたぞ、そこだ』
「増幅」
ハルファスが引いたカードが、雷を増幅する。
増幅された雷は、壁面を破壊しそこに刻まれた術式を焼き払っていく。
『やめなさい、魔王! 神への祈りを冒涜する気ですか!?』
「文字を刻む事が祈りなら、我々など魔術を使うだけでユカリ様への信仰となるぞ」
『信仰を望む方ではない、だからこそ理想なのだ』
ダンタリアンが術式を焼き払うと、パレシアの魔法体が完全に消滅した。
消えていく文字を読むハルファスは即座にそれを看破した。
「投影に、擬似聖力か? この遺跡全体が巨大な聖遺物と見える」
『ならば、全て破壊すればいい』
「術式が複雑に絡み合っている、不用意な破壊は全体の崩落を招くぞ」
『ならば、解析する...〈賢王之羅針盤〉』
「看破」
ハルファスがそれに合わせてカードを引き、それと同じ効果がダンタリアンの魔術に乗る。
看破の魔力が周囲を俯瞰し、神聖文字同士の繋がりを鮮明なものとする。
それでもまだ複雑だが、ダンタリアンには『視えて』いる。
『愚かな魔王たちよ、神はお怒りになられました。この場にて、真の裁きを』
「砂上の楼閣」
ダンタリアンとハルファスの周囲に、先程のゴーレムが複数出現する。
だが、ハルファスは意に介せずにカードを引く。
カードに描かれた崩れ落ちる砂の城の絵柄が輝き、周囲のゴーレムが砕け散る。
『バカな...あり得ません、聖なる祈りが、このように...!』
「超位魔術、〈魔札盤戯〉。それを発動したに過ぎない」
ハルファスは平然と言い切る。
だがそれは、あり得ないことだった。
『超位魔術であれば、魔法陣を構築する時間が...』
「無知蒙昧な聖女、私は築城の魔術師だ」
ハルファスはその手に魔法陣を浮かべてみせる。
それは構築されたというよりは、最初から完成していたように見える。
「魔法陣くらいのものを創造できずにどうする?」
『見つけたぞ、パレシア...貴様の動力源を』
そして、ついにダンタリアンがそれを見つけた。
その手に破壊の雷が迸る。
『極雷』
ただそれだけで凄まじい勢いの稲妻が生まれ、壁を破壊して遥か先へと続く大穴を開けた。
『行くぞ』
「加速」
ハルファスがカードを切り、二人は速度を上げて動力源へと向かうのだった。
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