Ep-759 ピラミッド?
「何か知ってるの?」
「いや....知ってる建物と似てるって言った方が近いかな.....」
砂嵐の先にあったのは、三角錐状の建造物だった。
ただし、石がむき出しな地球のピラミッドではなくて、全体が艶やかな石で組まれていて、魔法文字が掘り込まれた状態で機能している。
私たちの側から見えている二面には、特徴的な紋様が刻まれている。
『これは.....』
『バカな....なぜ今になってっ!』
その時、ダンタリアンとプロメテウスが同時に呟くのが聞こえた。
.....ここは、彼等にとっても何かしら思うところのある地らしい。
「とりあえず、中に入ろう。入り口は反対側かな?」
『違う、とりあえず玄関へ向かえ』
プロメテウスが言うので、私たちはエントランスの設置された場所へ向かう。
そこは壁が埋められていて、入る事が出来ないように思える。
『炎神たる我が命じる、隔たれた門を開け』
アイに憑依したプロメテウスが、詠唱する。
それと同時に壁に光が走り、その部分のレンガが消え去った。
「すごい.....これはお宝があるわ!」
「あっ、待って! ベル!!」
目を輝かせたベルが、突撃していってしまう。
とはいえダンタリアンがついてるし、危険はないか。
私は皆に目配せすると、中へと踏み出す。
「......広い?」
外と中の大きさが一致していない。
ベルが先に突撃していったからか、篝火が奥で消えていく。
一歩踏み出せば、私の左右に置かれている篝火が着火される。
「これ......物理的な炎じゃない」
『.....聖なる炎だ、邪悪な奴はこれで燃える』
「そうなんだ」
プロメテウスが解説を入れてくれる。
ということは、ここは炎神を祀る神殿?
「そういえば.....」
先日急に、私に炎神系のスキルが付いたね。
戦闘中のいざこざですっかり忘れてた。
「プロメテウス、聞こうと思ってたんだ。...プロメテウスは、炎神なの?」
『だからそう言ってるだろうが...』
プロメテウスはそれだけ言うと、奥に進んでいってしまう。
私はその後を追う。
篝火の通路を抜けると、祭壇があった。
大きな、大きな祭壇が。
「階段...」
登る前から吐きそうな長い階段が見えていた。
私は階段を、一段一段と登っていく。
そして、その上に辿りついて...
『私は、炎神プロメテウス様を信仰する聖女パレシア。ここに、炎神様への信仰と...憎悪を、示す』
その言葉を聞いた。
アイの手から魔剣プロメテウスが落ち、地面に落ちて大きな音を立てた。
「これは...?」
「映像みたい、なんか近付いたら出てきたわ」
「そうなんだ...」
ベルが言うにはそうらしい。
映像は私たちと同じ位置に降りてきて、語り始めた。
『ことの始まりは、炎神様が我々をお見捨てになった時...』
私たちはそれを、神妙な面持ちで聞き始めるのだった。
『我々は信仰を捧げてきました。神族のために命を捧げたのです。ですが、炎神は我々を裏切りました。炎神の都ハルキリュースを焼き払い、魔王に降ったのです。ありえないことでした、戦の神は相手欲しさに不利な方へと着いたのです。』
ふーん、炎神がねぇ...って、それがもし本当なら、プロメテウスって割とやらかしてない?
私はそんな感想を抱く。
だけど、話はまだ終わってなさそうだ。
『多くの者は炎神様を卑怯者と誹ります。ですが私には信仰があります。例え炎神教最後の都市...ここバルアが魔王に攻め滅ぼされようとも!』
ん? どういうこと?
前後関係がよくわからない。
だってこの場所は砂漠のど真ん中にあって、魔界ができたのはルシファーが台頭する遥か前じゃないの?
「ユカリ様、ルシファーとして貴方様が君臨された時も、バルアは占領されたのみに留まっております」
「あっ、そうなんだ」
ハルファスが口添えしてくれる。
助かるー。
『あなたを信じております、穢らわしい魔族の口車に乗せられただけの貴方は、再び勇猛な炎を従えこの地に舞い戻ってくれると』
「...」
『光神様にも神託を頂きまし...』
『知ったような口をぉオオオオ!』
直後。
映像装置を、プロメテウスが叩き斬った。
魔法陣が砕け散り、映像は乱れて消える。
「ぷ...プロメテウス?」
『オレが何故お前ら人間を裏切ったか! 信徒なら理解くらい出来るだろうが! これだから人間共は!』
その話は知っている。
プロメテウスの妻が勇者に殺された云々のやつだっけ?
いや、それはもっと後の話だったかな。
「プロメテウス...」
『後で話す! オレはキレてんだあああああッ!』
プロメテウスの全身から炎が立ち昇る。
うーん、なにがあったか聞くわけじゃないんだけどな、これ壊したらなんかヤバいんじゃないかと思っただけなんだけど。
『やはり...貴方は我々の信仰を受け取ってはくださらない...!』
その時、声があちこちから響いてきた。
やっぱり...
『我々は貴方に全てを捧げるつもりでいました』
『何故...何故...』
『神族を裏切るのであれば、理由を教えて欲しかった!』
「ねえ、これヤバくない?」
「だからさっきからそう言ってたんだけど...」
装置が振動しながら破壊され、そこから光が噴き出した。
光は形を取り、先ほどの映像の女性と同じ姿を取った。
『私はこの地にて、貴方様が還られる日をずっとお待ちしておりました』
「オレはオレの意思で裏切った! 魔族だ人間だってのは関係ないなッ!」
プロメテウスは啖呵を切る。
だけど、狂信者って怖いよね。
既存の理屈が通じないんだから。
『いいえ、貴方様を疑うことは致しません。けれど魔族は卑劣な術を使い、貴方様が気づかないうちにその心に憎しみをすり込んだのです』
「違うわ! オレに怒りがあっても憎しみがあるわけねーだろ!」
『可哀想に...今救って差し上げます、我らの神よ!』
会話になってない。
やっぱり人間って、信じたいことだけを信じるってことだね。
その時、パレシアが私の方を向いた。
『邪魔者には退場してもらいますが』
直後、床全体が輝く。
これは...転移魔法陣!? レジストできないっ!
視界が白に呑まれ、私たちは何処かへと飛ばされた。
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