Ep-76 レベル上げ4(前編)
~らしい等と表記されている部分は基本的にこのオリジナルの要素だと思ってください。
俺が王子と謁見したという話は、瞬く間に王傘下の貴族たちに広まった。
この話が凄まじい速度で広まったのは、たった一つの理由だ。
それは、俺...ユカリが女性であるからだ。
女性は守られる存在で、政略結婚の道具。それは貴族の常識だ。
一応冒険者に女性はいるが、Sランクを除きそこまで強いわけではない。
そして、他国を除き貴族でBランク以上の人間はいない。
俺はBランク以上の実力を持った貴族の女性、しかも許嫁もいない。
...狙うしかないよね?鴨が葱を背負って来ると言う奴だ。
というわけで...
「ユカリ~、休ませてくれよぉ~...」
「これ処理しないと相手方に失礼なの!さっさとやる!」
「アレックス様。必要でしたら私がお手伝いいたします」
大量に来たラブレターの処理に追われていた。
もっとも、前世でクラスのアノ子に!というようなものではなく、
自分の家の名前付きで返信しないと面倒臭い形で送ってくる。
これが前世ならふざけんな身の程を知れ!と突き返すところだが、
俺自身に決定権はない。
なので父親の許可アリと言うことにするため印鑑を押さねばならないのだが...
木っ端貴族から大貴族まで俺に手紙を送ってくるのは面白い。
それだけ”ユカリ”の容姿が優れているということなんだろうけどな...
ああ、その美しさを前世の俺にください...
え?勘違いじゃないかって?いやいや、フォールランドに領土的価値はない。
木っ端貴族は自分より身分が上の者とは結婚したがらない。
大貴族は身分が下すぎる者と結婚すると何か弱みを握ったと揶揄される。
なにより、この世界の男は自分より強い女を嫁にしたがらない。
つまり、俺にそんな条件を越えて妻にしたいって奴が一杯いるってことだな。
こういうのは早い者勝ちってルールらしいし。
◇◆◇
ラブレターも処理したので今日はもう自由だ。
学院関連の溜まっていた資料はもう片付けたので、当分は大丈夫だろう。
優秀な秘書も手に入れたし。
「やっとレベル上げに行ける!」
「ユカリはレベル上げが好きだね。そんなに貪欲で何を目指してるの?」
何を目指していると言えば確かに何も目指してないな。
強いて言えば、相手を確実に生かして倒すために、圧倒的な強さを身につける必要があるということか。この世界は殺すか、殺されるかだというのは分かっている。
けれど、俺はまだその甘さを捨てられていなかった。
「....ユカリのレベルは幾つだ?」
俺の前にはアラドが立ち、レベルを尋ねてくる。
俺のレベルは今のところ105で止まっている。
レベル100にもなると相当頑張らないと一レベルでも上げるのは大変だ。
「105だよ」
「何!?流石に嘘だろう?」
「本当本当!仲間に嘘はつかないって」
今のところ確認した最高レベルはリンドの525だ。
100レベル上がるのに常人では10年近くかかるらしい。
それも、10年休むことなく毎日、限界ギリギリまで魔物を倒してである。
うーむ、一般人と俺とじゃなんか違うのかなあ?
常時経験値アップ状態とか?
詳細を見ることのできない「ワールドツリーブレスト」の恩恵かもしれないな。
しかし、それだとガンガンレベルに上がっている他の仲間の説明がつかない。
「でも、アレックスはレベルがどんどん上がってるんでしょ?」
「ああ。俺に比べれば微々たるものだが、アラドのレベルも上がり始めている。」
え?
アラドもレベルが上がってるのか。
やっぱり、全ての秘密はこの「ワールドツリーブレスト」に詰まってるんだろうな。もっとも、それが分かったとして帰る方法が分かんなきゃどうしようもないけど。
「とにかく、レベル100ともなるとこの王都周辺には無い。最近出来たというただの洞窟の変異洞窟ならば100に届く個体はいるだろうが…」
アラドさん!そこはレベル100どころか1000の魔物が彷徨く危険地帯ですよ…
と言うわけにもいかないので、なんとか別の方法を考える。
「リンド、どう思う?」
「んん?ああ、そうだな…」
「話聞いてた?」
「ももも、勿論だ」
俺は部屋の隅で大きないびきをかいて寝ていたリンドに話しかける。
リンドほどの達人なら寝ながら話を聞くくらいすると思うがどうやら聞いていなかった様だ。
「リンド、私はもうレベル100なんだけど、レベル上げに付き合ってくれない?」
「………なるほど、王都周辺ではなく、より強い魔物のいる場所に行くわけか。して、せいぜい我は足がわりか?」
「それもあるけど、リンドがそばに居ないと同格とのレベル上げは辛いから」
「はぁ…しょうがない、付き合ってやろう。ただし、ベルを同行させろ」
「分かった。」
そういうことで、俺は、俺たちは3人でエルドルム地方の更に南、ローカン地方へと向かう。そこには通称キリカの森と呼ばれる高レベル地帯が存在する。
地元の者たちだけが危険を知る場所で、外見はただの森だがレベル80から120の敵が彷徨いており、縄張りに入った者を容赦無く殺すのだ。
何度か討伐隊が組まれているが、全部失敗した挙句領土的価値がないとしてこの森はなかったことにされたらしい。ローカン地方に貴族家が少ないのも、王都から離れて凶悪な魔物が生息するエリアが多いからだな。
そんなローカン地方には、魔導飛行船で行くことはできない。
何しろ何も無いからな...
馬車で行くしかないが、それでは数か月の旅となる。
ゲーム時代に行ったことがないので、テレポートやポータルアローは使用不可能だ。
しかし、それでも数時間で到着できる方法がある。
「おお~、意外と速いんだな」
「ね、ねえ...」
「どうした?ベル」
「どうしたじゃないわよ!あなたは怖くないの!?」
「リンドは振り落とさないように気を付けてくれてるよ。大丈夫大丈夫」
「誰か助けてぇ~!」
あの後、ベルと共に校庭に行った俺を待っていたのは巨大なドラゴンだった。
まあ、リンドなんだけど。
そう、リンドを使えばローカン地方まで一気に行けるのだ。
もっとも、よくよく考えたらナイトが回収して今は番犬ならぬ番竜をやっているという火山竜、アカを呼べばよかったのだが、あんまり貸しを作るのも止めておいたほうがいいだろう。えっ?リンドのこれは貸しじゃないのかって?
多分リンドが龍神になったときに纏めて清算されるだろう。俺が死ぬか、リンドが死ぬかの2択でね。
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