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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-755 原生生物たち

ユカリは悠々と空を飛び、ハルファスと地上を走るゼパルを連れて獲物を探していた。

集落から30km以上離れた場所にあるオアシスなので、流石に水場が散見され動物たちが闊歩している。


「ゼパル、相手の種類はわかる?」

「恐らくは。...我々の時代に生息していたらしき動物の原種かと」

「注意事項はある?」

「いいえ、魔物でもない動物ですから...群れの仲間を殺されると凶暴化する以外は」

「充分。行くよ!」


ユカリたちは一斉に降下して、ゼパル曰く「ラベナコット」らしき動物に向かって魔法を詠唱する。


「ピアシングレイ!」

「ブーストマジック」

「...」


ゼパルはあえて何もしない。

想定外の事態が起きた時のためのバックアップだからである。

ユカリの放った光線は、群れの一匹の頭部を貫き...


「即死しない!?」

「いいえ、反射でしょう...〈閉鎖領域(クローズド・サークル)〉」


ハルファスは群れを素早く結界で捕える。

僅かな時間、ユカリは脳内で考える。


「(確か、暴れすぎると肉が美味しく無くなるはずだから...ここは、血抜きも兼ねてアレで行こうか)...水神の座を受け継ぎ、海神の宝冠を戴し我が命じる!」


水神と海神の権能が相互に起動して、閉鎖領域内の群れを一挙に対象へと引き摺り込む。


「...彼の獣らの体を流れる血よ、体液よ。純水に戻りて我が手の内へと還りたまえ」


生きてる相手を瞬殺するならこれが一番であると彼女は考えていた。

全身の血が一瞬にして消滅したことで、ラベナコットたちは窒息死する。

水分だけが消えたわけではないために、血抜きも終わっていた。


「よし、終わり」

「何をされたのですか?」


ゼパルが跳躍し、ユカリの元まで来てから空中に足場を作って尋ねる。

それに対して、ユカリはなんでもないことのように言った。


「水分を全部奪っただけ。血がなくなれば呼吸も動くこともできなくなるから」

「...それは、恐るべき力です」

「うん、分かっているよ。使うべき時は必ず選ぶ」


血の持つ「水」と「潮」。

二つの要素に干渉できるのは、両方の権能を併せ持つユカリだけである。

核兵器のスイッチを持つ者は、それが強い者だと知っているものの、同時に気軽に使うことのできない力だと知っている。

ユカリもまた同じことだ。

上手く使えば効率的に相手を殺せる魔術も権能も彼女は持ち合わせているのだから。


「よし。じゃあハルファス、解体お願い」

「お任せください」

「術式を見せて、私も使いたい」

「どうぞ」


ハルファスの本分は『〈万物創築〉(デミウルゲイン)』のため、彼はそれを補うための様々な魔術をマスターしており、強力な魔術に特化していたダンタリアンなどとは違い、日用魔法から生活魔術までをしっかり習得している。

ユカリにとっては、頼りになる存在でもあった。


「〈肉屋包丁舞踏(ブッチャー・ワルツ)〉」


複数の肉切り包丁が空中に出現する。

それに合わせ、ハルファスはさらに魔術を詠唱。


「〈万象握手(オムニハンド)〉」


見えない手がラベナコットの死骸を持ち上げ、包丁がそれを綺麗にバラバラにしていく。

ユカリはそれを、何も浮かばない目で見つめていた。


「これ、攻撃に使えない?」

「剣速が遅すぎます。それさえ改善できればあるいは」


ユカリとゼパルは魔術について話し合う。

別にユカリも不殺を掲げるわけではない。

アイデアがあれば出すのが彼女だ。


「ユカリ様、同じような攻撃魔術でしたら既にございます」

「あるんだ...ってそれはそうか」


八百年前の戦いでは、人間も魔族も余裕がなかった。

互いの戦力は一瞬張り詰めた縄のように拮抗し合い、そのためにあらゆる技術が大きく発展した。

現在ではその技術たちは復元不能のオーパーツと化しているものの、それを知るものがいれば習得・復元ができるのである。


「私も手伝うよ」

「...ありがとうございます」


止めても無駄と分かっているため、二人は暫し解体作業に没頭する。

その間ゼパルが周囲を警戒するのであった。







ラベナコットの死骸を綺麗な形で持ち帰った私たちは、集落に戻ってジングと話す。


「すげぇ...いつも皮も肉もグチャグチャになっちまうのに...」

「これでどう?」

「待ってろ、保管庫に入れたい」

「分かった」


村には地下があるようで、そこに私たちは死骸を運び込む。

冷暗室となっているようで、外の熱もここには届かないらしい。


「ユカリ様、端を」

「あ、本当だ」


ハルファスに言われてそちらを見た私は、暗室の端に魔法文字が刻んであることを確認した。

接続式で、周囲の魔力で稼動する魔法陣タイプだ。


「涼しいのは地下っていうだけじゃないのね」


ベルが呟く。

ここはやっぱり魔族の集落らしい、おまじないという形ではあるものの、魔道技術が生きている。


「ここに物資を溜めているの?」

「まあ、そうだな」


地下には様々な部屋があり、水や食料が残っていた。

水瓶は密封の魔法文字が刻んである。


「こういう...魔法文字は誰が刻んだの?」

「俺の祖母だ...確か、村の女たちはみんなそういうおまじないが使えるんだ」

「あなたは使えるの?」

「使えるかもしれないが、そんな余裕ないな...力仕事と戦うことだけが男の仕事だ」


そうなんだ...

つまり、村では女性の方が知識層になりやすかったって事なのかな。

それがまとめて居なくなった中で暮らすのは大変だったと思う。


「どうしてここに残ったの?」

「...あんたに話す義理はない、それだけだ」


私の問いに、ジングはそうとだけ答えたのであった。

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