Ep-746 全力戦闘
都市があった場所の天井が、綺麗に吹き飛んだ。
久方ぶりの上からの光を浴びつつ、私は空を舞う。
魔力が尽きることを心配したのだけれど.....
「魔王の魔術って凄いなぁ....」
『四陣戦援盟約』という魔術を使い、ゼパル・ハルファス・ダンタリアン・プロメテウスによる魔力支援がされている。
それでも尽きないというのだから、魔皇の本来の魔力は底なしだろう。
「私も負けないように頑張らなきゃ」
とりあえず、〈八星錬魔弾〉で牽制する。
だけど、氷のように蒼いその体に傷がついてもすぐに修復されてしまう。
「治るなら――――治らないようにするまで! 〈業炎大刃〉!」
魔皇剣に炎を纏わせ、その密度を増大させる。
そして、あちらの攻撃が止んだ瞬間を狙って振り下ろした。
『甘イ』
「それごと潰すまでッ!」
ニーズヘッグが続けて放った氷柱の弾幕ごと、私は斬撃を放った。
炎の斬撃がまるで鞭のように飛び、氷柱を打ち払ったうえでニーズヘッグの身体を斬る。
『〈雷王電撃輪〉!』
『閃空覇刃!!』
ダンタリアンの放った巨大な雷の刃がニーズヘッグの傷跡に直撃し、飛び上がったゼパルが斬撃を飛ばしてそこを狙い撃つ。
だけど、貫通出来ない。
どうやら、ニーズヘッグの全身を氷のような鱗が覆っていて、その中はもっと硬いようだ。
「〈六皇護兵〉! トリプルリーンフォース・マルチ・マジックトレース!」
護兵に私の幻影を貼り付けて、その上で...
「ドッペル・カレイドスコープ!」
さらに分身を増やす。
魔皇剣を持たせることはできないので、幻影も含め全員灯火剣トーチブレードを装備している。
私も魔皇剣に幻影を投影している。
「「「「スキルセットチェンジ、セットソード」」」」
ムスビ、エッジ、ワンとツーがスキルセットを変え、一斉にニーズヘッグに襲いかかる。
魔力支援を受けているのは私だけなので、魔王たちからは本物が一目瞭然である。
「(水神の座を継ぎ、海神の宝冠を戴く我が命じる、理よ我に屈服し...)」
分身の中で暗詠唱する私だったけれど、そこで一旦止まった。
水系は相性が悪い...どうすれば。
一度宣言したからには、何かしないと。
「(.........)」
『ルシ...ユカリィ! “流れよ乱れよ”だぁ!』
「流れよ、乱れよ!」
そのとき。
唐突にプロメテウスから声が届いた。
私はそれにハッとして、ニーズヘッグにそれを仕掛ける。
『コレハ!?』
ニーズヘッグの鱗の修復が乱れる。
あの鱗は氷なので、水神の権能の影響を一部受けるんだ。
本当は氷神の領域なんだけど...
それにしても、プロメテウスはなんであんなことを...
『ソコカァ!』
「やばっ! クリエイトウェポン! 黄金盾ゴールデンシールド! スキルセットチェンジ、セットパラディン! ブレイズシールド!」
適当な盾を燃やして、ニーズヘッグのブレスを防ぐ。
そのまま盾を消して、オハンに切り替える。
「オハン、大瀑布!」
盾から噴き出した濁流がニーズヘッグに襲いかかる。
「アルビオン・スラスト!」
濁流が全て聖水の槍に変わり、ニーズヘッグの身体に突き刺さって行く。
「フレイムスラッシュ!」
「イナヅマスラッシュ!」
「エアスラッシュ!」
「ブラストスラッシュ!」
斬撃の波がニーズヘッグの鱗の下に入り込んでいく。
もしかして、鱗の下は治りが遅い?
『〈琰神之翼〉!』
そのとき。
下からプロメテウスが飛んできた。
その背に炎の翼を背負って。
「どうしたの!?」
『テメ...ユカリ、お前の神聖力がヤツを蝕んでいる』
「えっ、なんでそんなことまで...」
『いいから聞けェ。神聖力は魔物に蓄積すると害を及ぼす! ...まあ、そこの犬とキツネ野郎は違うらしいがな!』
なんか重要なことを言われてる気がするけど、それは戦闘中に言うこと?
とりあえず、効いてるって事はわかった。
『オレについて来い!』
「わかったけど...」
『おい貴様! 大魔王様の前で何という!』
『不敬だぞプロメテウス!』
緊張感ないなあこの戦い...
でも、それは皆と周囲の環境のおかげ。
ニーズヘッグは場所が狭くて暴れられないし、魔王たちが魔術で支援とニーズヘッグの拘束を行っている。
『〈真炎解放〉』
「〈真炎解放〉」
プロメテウスに合わせて、私も魔術を使う。
炎系の魔術を引き上げる効果を持つ魔術だけど、どうもそれだけじゃないような...
何度も何度も使ううちに、魔術の構造式を読み取れるようになってきた。
『ハハハハァ! 〈紅蓮七彩〉!』
プロメテウスが七色の炎を飛ばす。
それが爆発してニーズヘッグの全身を攻撃した。
『氷を吹っ飛ばす方が楽だと思わねぇか?』
「うん、だけど...」
『おい! 口調を直せ炎馬鹿!』
ダンタリアンが詠唱しながら叫んでいる。
確かに、プロメテウスは馴れ馴れしいけど...ルシファーならどうしただろう?
「おい、プロメテウス」
『な、なんだッ』
「私のことは姐御って呼べ」
『わ、わかった...』
久々の姐御キャラで行く。
こういうタイプは大体これで行けるはず!
「合わせな! プロメテウス!」
『おう、姐御ォ!』
私とプロメテウスは、同時に魔力を練る。
使う魔術は一つ。
「『〈陽炎爆縮〉!』」
私とプロメテウスの身体が炎と化す。
...といっても、本当に炎になっているわけではない。
ゆらめく炎を身に纏っているのだ。
『吹っ飛ばした方が早い!』
炎の爆発がニーズヘッグの鱗を吹き飛ばした。
水気になった鱗は、一瞬で蒸発して爆発した。
『オノレ!』
「今だ、一斉攻撃!」
私は指示を飛ばす。
それと同時に、既に詠唱していたダンタリアンが超位魔術を放った。
「〈紫電大鎖封縛〉」
都市の地面を覆い尽くした魔法陣が紫に輝き、そこから紫電の鎖が飛び出してニーズヘッグを拘束した。
ただの拘束じゃない、存在そのものをその空間に固定している。
「私も、攻撃用の超位魔術を使えるのよ! ......普通のやつだけど」
ベルに魔力が集中するのが視えた。
何か使おうとしている。
というか、戦闘中何もしてないなと思ったけど、魔法陣だけで超位魔術を使おうとしてたのか。
本来ならダンタリアンのサポートが無いと使えないはずだけど、やっぱりベルは他とは違うようだ。
「〈透光集束投〉!」
ベルが展開した魔法陣から光線が無数に飛び出す。
だけど、無数の光線はバラバラの方向に飛んでいく。
「どういう魔術なんだろう...」
『よく見るやつだな!』
光線は壁やビルに当たると反射して、それらが無数に都市の間を飛び交っていく。
閃光は結果的に一つに束ねられ、ニーズヘッグの右足を貫いた。
『グオオオオオッ!!』
『すげえ! オレは一回も成功したことないんだぜ!』
なるほど、瞬間的に反射軸線を計算して、それらを発射。
相手に反射光自体の軌道は読まれやすいけれど、収束軸線を読みづらくて防御しづらい。
『〈十二連装錬魔弾砲陣〉!』
ハルファスの攻撃魔術は毎回出来合いのものばかりだけれど、それでも堅実で強い。
一発一発がよく錬られた魔弾が魔法陣に詰められ、回転に合わせて連続で放たれる。
ニーズヘッグが迎撃に氷柱を飛ばすけれど、〈迅築戦塔〉の防御塔で結界を張っているようで、氷柱はその直前で何かに突き刺さって止まる。
「これなら...」
やれる。
私がそう思ったとき。
『ソコカァ!』
ニーズヘッグの動きが変わった。
私たちを無視して、鎖を引き千切ろうとしている。
何かに気づいた。
「とにかく止める! 〈黒炎大鎖封縛〉!」
『オレの知らない魔術...』
「即興!」
炎の制御が甘くて固形に凝縮できないけど、同じ構造式を使ってるから効果は同じなはず...
「何が起きてるかは知らないけど、全員で止めるよ!」
私はもう一つの魔法陣を描きながら叫んだ。
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