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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-744 都市の真実

二日後。

私はベルとシロ、ハルファスを置いて都市を離れ、ヘルのもとを訪れた。

家はちょっと溶けているように思えた。

私は家の扉をノックする。

答えが返ってくると信じて。


「入っていい」

「お邪魔します」


答えが返ってきたので、私たちは家の中に入る。

耐寒防御を解き、じわじわとした暖かさに触れる。


「座って欲しい、お茶を淹れる」

「はい」


氷でできた椅子に座る私。

アイもそれに続く。

ゼパルとダンタリアンは寒さを感じる存在ではないため、家の外で待っている。

ヘルは丁寧な仕草で茶を注ぐ。

アイの分のカップはなかったので、私が用意した。


「では、話を始めよう」


ヘルは重々しく宣言して、話を始めた。

まず最初に、自分の身の上から。

半魔...という存在らしく、人間と悪魔の間に生まれた存在だそうだ。


「ってことは、悪魔の親がいるって事?」

「そう。...でも物心つく頃には...いなかった」


ヘルは物好きな人間に育てられたそうだ。

その人間も、ヘルが迫害に遭うたびに苦労し、最終的にヘルは自分の意思で...


「わたしは弱かった。それを悔いるつもりはない」

「...」

「案ずるな。これはわたしの決断だった」


ヘルは人間と関わるのをやめた。

人間から離れ、離れ生活をしたらしい。

幸い、半分悪魔であるヘルは、魔物に好かれたらしい。


「悪魔の呼気は魔力。だからわたしは魔物に攻撃はされなかった」

「なるほど」


魔物たちはヘルを守る様子はなかったが、攻撃するようなことはなかったそうだ。

協力もしてくれたらしく、進んで縄張りに入れてくれたり、貢ぎ物のように食べ物を持ってきてくれたりもしたそうだ。

ヘルは優しさをもってそれに応えたが、それはあくまで冷徹な契約関係に過ぎない。


「人間が来た時、魔物はわたしを助けようとはしなかった。もとより魔物と悪魔の関係などそんなものだ」

「そうなんだ...ですね」


アイはそれを黙って聞き入っている。

プロメテウスは何も言わないけど、何か思うところはあるのだろう。

魔剣プロメテウスの宝石部分がわずかに光っているのが見えた。

ヘルの話は、人間たちに捕えられた所に移る。

悪魔である彼女は磔にされ、人間たちに辱められた。

その経験を真顔で語るヘルに、私はちょっと引いた。


「す、すみません、ちょっと外へ...」


アイは話の途中で出ていった。

外で嘔吐する音が聞こえていた。


「今のうちに話を進めよう」

「うむ」


ここから先は、アイには凄惨すぎる気がした。

彼も奴隷ではあるけど、凄惨な光景を見慣れているわけでは無いようだ。


「わたしは街の中心部で、覚醒した」

「悪魔の力に?」

「そうだ」


ヘルの親はかなり高位の悪魔だったらしく、その力は都市を飲み込みその地方を丸ごと絶対零度を超えた土地へと変えたそうだ。

魔力が弱い人間は、一瞬で魔力ごと凍りつくらしい。

どれだけ寒いか想像もつかないなあ...


「そう言えば...魔王にも氷の魔力を持つのがいたような」

「それはわたしとは関係がないはずだ」

「そうだよね」


ヘルはその後の事を語るべく、お茶を飲み干した。

私も、すっかり冷めてしまった最後の一口を飲み干す。

彼女が立とうとした時、私は戸口に立っていたコルを呼ぶ。


「コル、代わりに淹れてあげて」

「はい」


コルは丁寧な所作で茶を淹れる。

このバランスだけは真似できないね。


「では、続きを話そう」


茶を一口飲んだヘルは、重々しく口を開いた。




その後は、大分端折った内容だったが、数十年の孤独が語られた。

ヘルが何故ヘルと名乗るようになったのかや、ヘルだけになった地に何故生物が寄り付けなかったのかを。


「わたしの氷の力を制御する術を教えてくれるものはいなかった....」

「.....」


多すぎる魔力を突然手にした人間は、それに耐えきれずに死ぬ。

だけどヘルは、悪魔の部分があったために死ななかった。

死ねなかったというべきかな。

起こりえない状態になった彼女は、その力を制御できなかった。


「....分かります、いえ。分かってほしくはないとは思いますが」

「いや。分かってくれてありがとう」


ルシファーの記憶や権能なしに魔力に覚醒すれば、私は絶対に死んでいた。

ステータスというこの世界の者が持たない要素のおかげで救われたかもしれないが。

魔力は万能の力だが、同時に御しきれなければ命にかかわる。

その好例として、アラドがいる。

闘気も気力も、呪力も聖力も、邪力も神力も。

制御できなければ身を滅ぼす”便利な力”なのだから。


「だが、旧き王がわたしを迎え入れた。わたしは暫しの幸福を手にできた」

「でも、その幸せは今はないと....いうことですね?」

「そう。何かが起き、地続きだった魔界は隔てられた」


何が起きたかは私も知らないし、予想も出来ない。

ただ、魔界と人間界の微弱な繋がりさえも失われ、悪魔は人間界側からのアクセスポイントの形成に自らの力を注がなければ門を開くことが出来なくなり、人間界と魔界のつながりはほぼ失われたそうだ。


「....これが、その全てだ」

「ありがとうございます」


その時、アイが戻ってくる。

だが、その表情からアイではなくプロメテウスが入っていると私は確信する。


「ひとつ。解せない事があるなァ」

「何? プロメテウス」

「魂に根付いた力はそう簡単に切り離せるもんじゃねえ。どういうタネがありやがる?」

「ちょっと、失礼だよ」

「よい。旧き王は、わたしの力を分離して器に閉じ込めた」

「それこそ解せねえ。魔力そのものを封じ込められるモノなんて、生きているものだけだ」

「それ、ほんと?」


私はプロメテウスの方を見る。

アイの顔だけど凛々しい表情だった彼は、真剣な面持ちを崩さないまま頷いた。


「オレは嘘は吐けねえ、吐ける性分じゃねえ」

「...もしそれが本当なら」


私は嫌な予感を覚えた。

サマエルは生ける何かにヘルの魔力を封じ込めた。

それは、その時点では何もなかったのかもしれない。

けれど、もしそれが動けるような状態になったら...?


「戻ろう」

「ああ」


ヘルは襲われないとしても、私たちを襲ったあの氷の変動が、それによって引き起こされたものだったとしたら?

最悪の考えが浮かび、私たちは帰還を決意する。

この場合、危険なのはベルだ。


「プロメテウス、ゼパル! 先行しろ!」

「わかったッ!」

「御意!」

「ダンタリアン、ここを守って」

「承知しました」


私は素早く指示を飛ばす。

何もなければいいけど......!

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