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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-740 意外な援軍

後で再度更新します。


幸いにも、解決策はすぐに見つかった。

ただし、これには二つの条件が必要になる。

それは、ベルの結界を高位の炎魔術で破壊する事。

次に、魂に干渉できるタナトスで、魂にへばりつくアレを切除する事。

そうして初めて、ベルを惑わすアレ....多分、悪魔の正体が明らかになる。


「前々から出来ないかと、思ってたんだよね」


私は天井付近でつぶやく。

眼下ではベルが立ち上がり、巨大樹を再起動しているのが見えた。

中断はさせられない、でも....それでいい。


「〈魔皇之(デモンウェポン)武器創造(クリエイション)〉....出でよ、魔皇魂奪鎌・タナトス」


ここまではいい。

次だ次。

タナトスは魔族由来だけど、私から湧き出る聖力に限っては私由来のはず。

つまり、条件次第ではタナトスに付与する事も出来るのでは?

光と闇が合わさり最強に見える、ってやつだ。


「降りてきなさい、この卑怯者!」

「卑怯? ベルはそんな事言わないよね?」


私はタナトスに神聖陣を纏わせて、詠唱を開始する。


「水神の座を継ぎ、海神の宝冠を戴く我が命じる。炎の神王よ、我の請願に応えこの武器に聖炎を与え給え。この武器は今我の味方なりて、神敵に在らず」


まだ存在しているかもしれない炎の上位神。

それに向けて、力を貸して! と願ったのだが......結果は意外な場所から来た。


「うわぁっ!? 空中!?」

『ユカリ!? 貴様ァ!! ぶち殺すぞォ!』


空中に開いた神聖陣から、見慣れた少年.....アイが飛び出した。

その手にはプロメテウスの宿った剣が握られている。


「大丈夫!?」

「は....はい!」


私は慌ててタナトスを放り投げて、アイをキャッチする。

顔を赤くしながらも、アイは私に答えてくれた。

何で召喚されたかは知らないけど、プロメテウスは怒るだろうな.....


「えっとね、プロメテウス....さん」

『この魔力.....貴様、何故ルシファーの魔力を......』

「この場合、どう説明したらいいか.....えっと、ダンタリアン?」

『今そんな場合だと思っているのかプロメテウス! 説明は後だ力を貸せ!!!』

『仕方あるまい....で、我に何をせよと?』


神性付与は失敗したけど、代わりに本物の炎魔術使いがやって来た。

これなら何とか行けるかな?


「アイ、ベル....は知らないか、あの真ん中にいる人の、結界だけを破壊できる?」

「大丈夫....出来る!」

『当然だ』


魔剣プロメテウスから、炎がアイに宿る。

髪や瞳が紅蓮に輝き、アイにプロメテウスが憑依する。

前のような乗っ取り形式ではない、完全にシンクロしている。


『ウオオオオオオ!!! 〈紅蓮之翼(イカロス)〉!!』


燃える翼を背に浮かべたアイが、ベルの元に突っ込んでいく。

私は内心で謝りながらタナトスを消し、詠唱を開始する。


「闇から響く暗渠の魔水よ、我が命に応え、今一度光を浴びて輝くがいい! お前たちは必要とされているのだ、何も恐れることなく、我が元へ集え! 水神の座を継承し、海神の宝冠を戴く我が命じる! 理よ屈服し、悪を打ち砕く鎌と成れ! 〈大年鎌(オオトシノカマ)〉!」


私は一挙に加速し、プロメテウスの背後に迫る。


『その力....貴様、海神を....』

「ごめん、訳があるんです」

『良い! 分かっている』


え?

プロメテウス、なんか丸くなった?

前はなんか、制御不能って感じだったのに....

まあ、それはいいか。


「ユカリいぃぃぃぃっ!!!」


地面から飛び出した木の根が、プロメテウスとアイに襲い掛かった。

魔王たちが苦戦したそれを、プロメテウスは――――


『フン』


たった一回の斬撃で斬り払った。

断面を赤熱させながら、木の根が地面に落ちる。


『プロメテウス! もっと慎重に斬れ! ベルに当たったらどうする!』

『知るか! お前も参戦すりゃいいだろォ!』


あ、口調が崩れた。

やっぱり、以前のプロメテウスとは違うらしい。


「邪魔!!!」

『アイ、アレを使うぞォ!!』

「は、はい!!」


地面から、木の根の壁が突き出て私達を妨害する。

ご丁寧に返しが付いていて、加速している私達では上昇するだけで回避は出来ない。

仕方ないので破壊しようとしたその時、


『「〈魔炎不死鳥(フェニックスバーン)〉」』


炎の鳥が飛び出して行って、木の根を突き破って消える。

その穴に、アイとプロメテウスが飛び込んでいく。

私もその後に続く。


「ハァアアアアアアアア!!」


木の根がめちゃくちゃに襲いかかってくる。


「『真炎解放』」

「〈真炎解放〉!」


私とアイは同時に炎を噴き出させ、木の根を焼き払って突き進む。

そして、ベルの元まで辿り着いた。


「ユカリ、死んでよ、死になさい!!」

「私は本当の言葉だけ聞くよ、後でゆっくりね!」


そんな策には引っかからない。

アイが炎の剣で結界を薙ぎ払う。

私は大年鎌を振りかぶる。


「刈り取れ!」


そして、ベルの魂......から少し逸れた場所を斬った。

声にならない悲鳴をベルが上げ、魂にへばりついていた邪悪な何かが分離する。


「アルビオン・グラスプ!」


私は右手を聖力で染め上げて、それを握りつぶした。


「地獄に堕ちろ!」

『...これで良いのかァ?』

「はい、ありがとうございます」


倒れ込むベルを急いで介抱しながら、私はプロメテウスに感謝する。

暫く沈黙が続く。

うん、ベルの身体と精神は無事だ。

魂の方の損傷も、癒着部分だけなのですぐに治るはず。


「...帰らないんですか?」

『帰れると思うか?』


動かないプロメテウスに聞いたら、意外な答えが返ってきた。

神ですら通れない世界の隔たりを突破してきたから、てっきり帰りも同じことができるかと思ってたんだけど...


『それよりもだ、貴様、色々と説明するべきことがあるんじゃないか!?』

「く、苦しい...コル!」

『くっ付くんじゃねえ!』


私はプロメテウスに襟首を掴まれて、慌ててコルに助けを求めるのだった。

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