Ep-740 意外な援軍
後で再度更新します。
幸いにも、解決策はすぐに見つかった。
ただし、これには二つの条件が必要になる。
それは、ベルの結界を高位の炎魔術で破壊する事。
次に、魂に干渉できるタナトスで、魂にへばりつくアレを切除する事。
そうして初めて、ベルを惑わすアレ....多分、悪魔の正体が明らかになる。
「前々から出来ないかと、思ってたんだよね」
私は天井付近でつぶやく。
眼下ではベルが立ち上がり、巨大樹を再起動しているのが見えた。
中断はさせられない、でも....それでいい。
「〈魔皇之武器創造〉....出でよ、魔皇魂奪鎌・タナトス」
ここまではいい。
次だ次。
タナトスは魔族由来だけど、私から湧き出る聖力に限っては私由来のはず。
つまり、条件次第ではタナトスに付与する事も出来るのでは?
光と闇が合わさり最強に見える、ってやつだ。
「降りてきなさい、この卑怯者!」
「卑怯? ベルはそんな事言わないよね?」
私はタナトスに神聖陣を纏わせて、詠唱を開始する。
「水神の座を継ぎ、海神の宝冠を戴く我が命じる。炎の神王よ、我の請願に応えこの武器に聖炎を与え給え。この武器は今我の味方なりて、神敵に在らず」
まだ存在しているかもしれない炎の上位神。
それに向けて、力を貸して! と願ったのだが......結果は意外な場所から来た。
「うわぁっ!? 空中!?」
『ユカリ!? 貴様ァ!! ぶち殺すぞォ!』
空中に開いた神聖陣から、見慣れた少年.....アイが飛び出した。
その手にはプロメテウスの宿った剣が握られている。
「大丈夫!?」
「は....はい!」
私は慌ててタナトスを放り投げて、アイをキャッチする。
顔を赤くしながらも、アイは私に答えてくれた。
何で召喚されたかは知らないけど、プロメテウスは怒るだろうな.....
「えっとね、プロメテウス....さん」
『この魔力.....貴様、何故ルシファーの魔力を......』
「この場合、どう説明したらいいか.....えっと、ダンタリアン?」
『今そんな場合だと思っているのかプロメテウス! 説明は後だ力を貸せ!!!』
『仕方あるまい....で、我に何をせよと?』
神性付与は失敗したけど、代わりに本物の炎魔術使いがやって来た。
これなら何とか行けるかな?
「アイ、ベル....は知らないか、あの真ん中にいる人の、結界だけを破壊できる?」
「大丈夫....出来る!」
『当然だ』
魔剣プロメテウスから、炎がアイに宿る。
髪や瞳が紅蓮に輝き、アイにプロメテウスが憑依する。
前のような乗っ取り形式ではない、完全にシンクロしている。
『ウオオオオオオ!!! 〈紅蓮之翼〉!!』
燃える翼を背に浮かべたアイが、ベルの元に突っ込んでいく。
私は内心で謝りながらタナトスを消し、詠唱を開始する。
「闇から響く暗渠の魔水よ、我が命に応え、今一度光を浴びて輝くがいい! お前たちは必要とされているのだ、何も恐れることなく、我が元へ集え! 水神の座を継承し、海神の宝冠を戴く我が命じる! 理よ屈服し、悪を打ち砕く鎌と成れ! 〈大年鎌〉!」
私は一挙に加速し、プロメテウスの背後に迫る。
『その力....貴様、海神を....』
「ごめん、訳があるんです」
『良い! 分かっている』
え?
プロメテウス、なんか丸くなった?
前はなんか、制御不能って感じだったのに....
まあ、それはいいか。
「ユカリいぃぃぃぃっ!!!」
地面から飛び出した木の根が、プロメテウスとアイに襲い掛かった。
魔王たちが苦戦したそれを、プロメテウスは――――
『フン』
たった一回の斬撃で斬り払った。
断面を赤熱させながら、木の根が地面に落ちる。
『プロメテウス! もっと慎重に斬れ! ベルに当たったらどうする!』
『知るか! お前も参戦すりゃいいだろォ!』
あ、口調が崩れた。
やっぱり、以前のプロメテウスとは違うらしい。
「邪魔!!!」
『アイ、アレを使うぞォ!!』
「は、はい!!」
地面から、木の根の壁が突き出て私達を妨害する。
ご丁寧に返しが付いていて、加速している私達では上昇するだけで回避は出来ない。
仕方ないので破壊しようとしたその時、
『「〈魔炎不死鳥〉」』
炎の鳥が飛び出して行って、木の根を突き破って消える。
その穴に、アイとプロメテウスが飛び込んでいく。
私もその後に続く。
「ハァアアアアアアアア!!」
木の根がめちゃくちゃに襲いかかってくる。
「『真炎解放』」
「〈真炎解放〉!」
私とアイは同時に炎を噴き出させ、木の根を焼き払って突き進む。
そして、ベルの元まで辿り着いた。
「ユカリ、死んでよ、死になさい!!」
「私は本当の言葉だけ聞くよ、後でゆっくりね!」
そんな策には引っかからない。
アイが炎の剣で結界を薙ぎ払う。
私は大年鎌を振りかぶる。
「刈り取れ!」
そして、ベルの魂......から少し逸れた場所を斬った。
声にならない悲鳴をベルが上げ、魂にへばりついていた邪悪な何かが分離する。
「アルビオン・グラスプ!」
私は右手を聖力で染め上げて、それを握りつぶした。
「地獄に堕ちろ!」
『...これで良いのかァ?』
「はい、ありがとうございます」
倒れ込むベルを急いで介抱しながら、私はプロメテウスに感謝する。
暫く沈黙が続く。
うん、ベルの身体と精神は無事だ。
魂の方の損傷も、癒着部分だけなのですぐに治るはず。
「...帰らないんですか?」
『帰れると思うか?』
動かないプロメテウスに聞いたら、意外な答えが返ってきた。
神ですら通れない世界の隔たりを突破してきたから、てっきり帰りも同じことができるかと思ってたんだけど...
『それよりもだ、貴様、色々と説明するべきことがあるんじゃないか!?』
「く、苦しい...コル!」
『くっ付くんじゃねえ!』
私はプロメテウスに襟首を掴まれて、慌ててコルに助けを求めるのだった。
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