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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-733 分断

『ルシファー、お前は自由でいいな』

『? どういう事だ?』

『そのままの意味だ、俺は自由ではない』

『お前は自由だ』

『そういう意味じゃない、お前になら分かってもらえると思ったんだけどな....』

『俺には、わからない』

『....ああ、そうだな』

『お前は手足だって動く、俺と同じ。何故自由ではない?』

『.....俺はお前と違う、だから自由ではない』

『お前は自由だ』

『自由とは、自分の生き方を自分で決められる事だ、そうじゃないのか?』

『――――なら、俺は自由では、ない』







「ん.....」


目を開けると、頬を冷たい風が撫でた。

私....どうしてたっけ?

何で寝てるんだっけ?


「.....ハッ!!」


目を開けると、私は氷の上に倒れていた。

腕の中には、シロとコルが。


「断熱結界!!」


急いで結界を張り、内部を温める。

シロとコルに目立った傷はない。


「そっか....」


私がクッションになったらしい。

確かに、今の私なら巨人に殴られても大丈夫だ。

こんな形でとは思わなかったけど、二人を守れてよかった。


「みんなは.....」


周囲を見渡すけれど、誰も倒れていないし、誰かの気配もない。

どうやら皆とははぐれてしまったらしい。

上を見上げると、果てのない暗闇が続いている。

ここを落ちて来たらしい。


「........みんな...」


ベルのような魔力が莫大ではない人は、ダンタリアンとはぐれたら長くは生きられない。

それどころか、意識を失った瞬間に死が近づく。

急いで行かないと。

私はシロとコルを起こそうとする。

だけど.....


「コル?」

「クゥーン....」


シロは起きたが、コルが目を覚まさない。

揺すっても起きない。

聖力で治療を施しても。


「....しょうがない、シロ、コルを連れてってくれる?」

「ワォン」


私はシロにコルを乗せ、歩き出す。

この場所はどこかに繋がっているようで、上ではなく横から風が吹いてくる。


「.....不気味な場所」


氷の中にある横穴。

それだけで、ここが不気味だと感じた。

自然に生じる筈のない、明らかな人工物。


「......」


しかもこの場所、相当深いはずだ。

それなら、恐ろしい程に寒いはず。

なのに、頬を撫でる程度の涼しさなのはどうしてなのか。


「やっぱり、関係あるよね...」

「クゥン?」

「大丈夫、シロは気にしないで」


氷の中で笑った私。

あの直後に地面が割れた。

それに、割れた時に、大魔王の紋章が上手く反応しなかった。

もともと不完全だったのもあるけれど、あのタイミングでなぜ?

疑問は尽きないままだ。


「だけど......」


今は進むしかない。

魔皇之翼(エール)〉が使えなくても〈魔竜翼(フリューゲル)〉があるとはいえ、魔力の薄いこの場所では魔皇之翼をなるべく使いたい。


「〈堕天之(ルシファール)魔皇剣(・グラディウス)〉」


魔皇剣は正常に出た。

これなら魔皇之翼も使えるだろう。


「だけど、飛べたところで.....なぁ....」


ここの地理も分からないし、シロとコルを抱えた状態だと直ぐに魔力が尽きる。

何度も言われてるし、言ったけれど。

魔竜翼や魔皇之翼は、疑似的に飛べるだけで無理をしていることに変わりはないのだから。


「ううん、やっぱり先に行こう」


その先に何があるか確かめてからでも、遅くはないはず。

私は歩幅を大きくとって歩き出した。

歩き出してから、気付いた。


「....バーンとゴッツは元気かな」

『おう』

『いるぜ』

「わあああっ!?」


私の服の隙間から、ガス状の何かが飛び出す。

そしてすぐに、猫と鳥の姿を取った。


「い、いたんだ」

『俺たちは名前を貰ったからな』

『契約者の魂に引っ張られるのさ』

「なるほど?」


少しばかりの仲間を得て、先ほどより元気づけられた私は、氷の回廊を歩き続けるのだった。







同時刻。

同じく分断されたベルは、ゼパルとハルファス、ダンタリアンと共に行動していた。


「ユカリ、大丈夫かしら....」

『大丈夫であろう、これ程の事で負傷するほど弱いようには見えぬ』

「全くです」

「ベル殿は、ユカリ様をもう少し信じたほうがよろしいかと」


ベルはそういうものかと髪を弄る。

だが同時に、


「そうね、確かに....」


直ぐに納得をしてもいた。

ベルにとって、ユカリは特殊な存在である。

その関係はルームメイトから始まり、やがて友達に。

だが、どこまで行ったとしても......ベルは人間である。

枠外に飛び出してしまったユカリと、対等に付き合う事にコンプレックスを抱いていた。

それは別に、ユカリが嫌い、憎いといった感情ではない。

強くなりたい、という明確な願いだった。

幸いにも、ベルは凡人ではない。

自分の中には確かに、旧き魔王、アムドゥスキアの魂が宿っている事を、ベルは知っていた。

その記憶と魔力を取り戻しさえすれば、またルームメイトだったあの頃のように、対等な立場で話せる。

ベルはそう感じていた。

そして、その焦りを見て――――悪魔は微笑む。


『強くなりたいのか?』

「....っ、誰!?」


どこからか聞こえた声に、ベルは周囲を見渡す。

だが、怪訝そうにする魔王たちのほかに、何もいなかった。


「どうしたのですか?」

「...声が聞こえたような気がしたんだけど」

『魔眼に反応はない』


ベルは自分が過剰に反応していたことを恥じた。

同時に、自分にも魔眼があれば、何でもなかったことを直ぐに把握できたのにとも考えた。


「(強くなりたいか、なんて....バカなことよ)」


ベルは努力を知る人間だ。

だからこそ、努力の先にしか強さがない事は知っている。

前線に出ることを決意したその時から、考えは変わっていない。

だからこそ。

だからこそである。


『次のエモノはあいつだ』

『ヒヒヒヒ.......』


氷の中で、悪魔たちは蠢く。

心の弱い者の魂を貪るために。

王に眼を付けられた人間から離れ、分断された、魔人由来の力を持つ者達に囲まれた、凡人を狙って。


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