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※虫の表現あります。注意。
修太はバ=イクを運転して、慎重に崖底へ降下していく。
だんだん薄暗くなってきた。
さすがに上から底が見えないだけあって、高い崖だ。
旅人の指輪から魔具のランプを取り出して点灯し、バ=イクのハンドルに引っ掛ける。次第に水音が響いてきた。
「川が流れてるのか」
グレイが面白そうに言った。
前に来た時は、たまたま止雨期だった。今日はまだ雨が降っていないものの、ミストレイン王国一帯には薄い雲がかかっている。いつ雨が降り始めてもおかしくない。
「雨降らしの聖樹が一年のほとんど雨を降らすんだから、すごい水量だろうな」
ザアザアと流れる川音を聞きながら、修太はつぶやく。ここに落ちたらあっという間に下流まで流されるだろうかと想像して、ゾクッとした。
川がはっきりと目に見えるようになると、グレイが壁際を示す。
「見ろ、歩けそうな場所がある」
「近づいてみよう」
壁際に進むと、川より五メートルほど上のほうに、馬車一台が通れそうな幅の岩場を見つけた。崖に沿ってずっと続いている。
グレイは試しに岩場に降りて、満足げに頷く。
「足場はしっかりしている。ここを歩けばいいな」
「それは良かった」
修太のバ=イクでは一人を乗せるのが限界だ。
グレイが後ろに乗りなおしたのを確認し、修太はまたバ=イクを発進する。
「一応、巨大蛾っていうのを探す?」
修太の問いに、グレイが首肯を返す。
「道沿いにゆっくり進め」
川をさかのぼっていくと、向こうから白いものが飛んでくるのが見えた。ふさふさとした白い毛におおわれた、巨大な蛾だ。羽まで合わせたら、馬が引いた幌馬車くらいの大きさである。
「あいつがそうなのか。でかいな」
グレイはつぶやくと、右手に構えたままのスローイングナイフを投げた。
トスッと音がして、巨大蛾の頭が飛ぶ。遅れて、緑色の体液が散った。なんともいえない草が腐ったようなにおいが漂い、吐き気がこみあげる。
「うえっ。上に逃げる!」
「賛成」
うんざりした低い声が後ろから聞こえた。グレイには相当な悪臭のようだ。
いったん上空に逃げると、においは風に薄れて消える。
「成虫もくさいのか」
「これはエルフの人達が嫌がるわけだよ」
修太も関わりたくないが、これを解決すれば、あの人間嫌いのエルフが喜んで手紙を運んでくれるだろうということだけは分かった。
巣穴の位置まで確認したい。道が見える程度に離れたまま、ゆっくりと遡上していく。
「見えた。あれかな?」
崖がえぐれて洞窟のようになっている場所に、白い繭がいくつも張り付いている。地面には黒い毛虫がうごめいていた。
「うえー、気持ち悪い」
悲鳴を上げるほどの虫が嫌いではないが、肌がぞわぞわとあわだつ。
「繭があるのか、よく燃えそうだ」
グレイの感想は、相変わらずというか、さすがだった。
ちょっとだけ更新。
ツイッターで断片の使徒の絵を見たいと言っていただいてうれしかったので、ちょっとずつ落書きしてます。久しぶりなのでだいぶ下手になってますが、まあそのうち戻るでしょう。




