好きな人がいるから『推し』の気持ちにも気付いていく
本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼
カドコミ(WEB)
https://comic-walker.com/detail/KC_006932_S/episodes/KC_0069320000200011_E
ニコニコ静画
https://manga.nicovideo.jp/comic/74034
詳細は活動報告よりご確認ください。
魔法薬テストを終え、さらに座学の授業を終えた私は早速西の森へと向かった。もちろん、魔災の書がある洞窟に行って、書物を燃やすためだ。
本当は亡霊騎士様を捕まえた直後に行きたかったけど、アンテルム王子にルモニエちゃんについて説明が必要だったことや、外出に許可が必要などの理由で叶わず今日やっと許可が降りた。
『あのさぁ、我、お邪魔じゃない?。我、洞窟に行って、魔災の文書を手に入れたい、悪用されないよう燃やしたいっていうのはさぁ、分かったよ? 我、必要だった?』
エヴァルトと一緒に亡霊騎士様を挟んで洞窟へ向っていると、亡霊騎士様がおろおろし始めた。今日、私は亡霊騎士様を誘って洞窟のある西の森へと出発したけど、気づくと後ろにエヴァルトがいたのだ。
「絶対必要ですよ。完璧な布陣じゃないですか。エヴァルトに亡霊騎士様。強いと強いでもっと強いですよ」
『それ絶対事故るじゃん……お主絶対美味しいと美味しいをかけ合わせれば美味しいと思ってるだろ……』
「はい!」
『ヒエ』
今日のことは、王家側に魔災関連の情報が入るとまずい。そして危ないところだから、リリーは連れて行きたくない。だからこそ、私は亡霊騎士様を連れてきたのだ。今、エヴァルトを見てドン引きしている亡霊騎士様の甲冑は、紫のオーラを身にまとっている。亡霊騎士様含む亡霊たちは、夜中になると強さが二倍になるのだ。
だから私は昼間、亡霊騎士様たちが弱体化しているであろう旧校舎に行った。そして今は日没ということで、亡霊騎士様は黒と紫の瘴気に包まれ、ぼんやり甲冑っぽいシルエットが見えるかな? という状態になっている。前世を生きていた時、ネットで亡霊騎士様の登場シーンに光補正をかけた画像を見ていなかったら、彼の正体を判断できなかったかもしれない。
『っていうかさぁ、ジークエンドの令息さぁ、お主が屋敷出てすぐ来たけど、前々から誘われてたの? 我、突然行こうとか言われたんだけど……』
「いえ、僕はスフィアのことは全て知りたいので」
「まぁ!」
『まぁじゃないからな!? 顔を赤くするな!? 今まさに自供したんだよ! この令息は! 付き纏いの! 現行犯!』
「今度は私に直接聞いてくださいね……エヴァルトと色んな話がしたいので……!」
「うん。でも、君のことはちゃんと君に聞くよ? 僕が無断で調べたりするのは、君の周りの人達だから」
『我じゃん! 標的我だったわけ!? うっそ! こわ! 何!?』
亡霊騎士様は『絶対生前だったら次会うの法廷なんだけど……』と鎧をがしゃがしゃ動かしている。私がエヴァルトに「そういうことはやっちゃ駄目です」と注意すると、彼は反省した様子で肩を落とした。
「ごめんなさい。スフィアの精霊さん。今度から、きちんとします」
『きちんとって何……? バレないようにとかじゃないだろうな……? んお!?』
「……っ」
亡霊騎士様とエヴァルトがさっと後ろに振り返った。エヴァルトが明らかに炎属性の詠唱を始め、私は慌てて止める。
「え、エヴァルト? どうしたんですか?」
「人がいたから……燃やしたほうがいいかなって……」
『やっぱ聖女こいつ危ないよ!? すごい澄んだ瞳で人間のこと燃やそうとしとるよ! 本物の狂戦士だよ!』
「熊ではないんですかね?」
『熊だから燃やしていいって発想やめよう? 自然と動物に優しくしよう!?』
亡霊騎士様の必死の訴えに、エヴァルトは一時魔法を中断した。こういう時は、私の出番だ。
「一応、癒やしの魔法で位置を特定してみましょうか」
『えっなにそんなこと出来るの!?』
「まぁ。魔法を発動したら、光の粒子がブワァって出るんですけど、人の傷とか人間のほうに行くんですよ。だからこんな風に……」
癒やしの魔法を発動すると私の右手が真っ白な光に包まれた。そして光は小さな粒子となって、さらさら後ろの木陰へと流れていき不自然に止まった。
「そこにいます」
『よし、ひとまずジークエンドの令息はむやみに血を流さず聖女と在れ、我が家賃の代わりに働く』
亡霊騎士様は私っちを守るように立ち、剣を鞘から抜いた。しかし「違う!」と木の裏に身を潜めていた人物が顔を出す。
「怪しいものじゃねえ!」
ばっと飛び出してきたのは、次期宰相候補で攻略対象のレティクスだ。彼は王家よりだけど、魔災の書物に関する行動は取らない。どうしてここにいるんだろう。
「何故、キーリングさんがここに?」
「いや、あ、あれだ。聖女がこそこそ学園を出るのが見えたから……ジークエンドもついていってたみたいだけど……婚約者候補ではあるわけだし……ふ、二人きりは……ふ、ふしだらかなって……」
『なぁ……こやつ、一週間くらい前に暴れだしてたやつじゃなかったか? ビヤァみたいな奇声発して……』
レティクスは一週間前、奇声を上げて寮から飛び出した。しかしその晩「取り乱して悪かったな、自分でも何でああなったかよく分かんねえわ! 疲れてるのかもな、俺!」と帰ってきた。
アンテルム王子には失踪理由についてきちんと話をしたらしく、翌朝王子が「気にしないでやってくれ」とフォローに来ていたから、多分悪霊に取り憑かれて……はないと思う。私は亡霊騎士様にフォローを入れた。
「あれは大丈夫みたいですよ? 亡霊騎士様の子孫のアンテルム王子だって大丈夫って言ってたじゃないですか」
『でもさぁ、怖くない? 元々騒ぐの好きとかじゃなくて、突然騒ぎ出したんでしょ? あれが初めてでしょ? お主みたいなのが叫びだすとは違うよ? まだジークエンドの令息が叫びだすほうが怖くないよ? 頭おかしいって分かってるからね?』
「僕はスフィアに狂っているだけですよ」
『自覚症状ある状態でその惨状だったのか!?』
亡霊騎士様が狼狽えていると、レティクスが「あのー、あれだ、何だ」と、かなり歯切れ悪くこちらに近寄ってくる。亡霊騎士様はその様子に身構えて、レティクスはかなり傷ついた顔をした。でも、それも一瞬のことで、すぐにいつも通りの不敵な笑みを浮かべる。
「ほら、俺は土魔法が得意で別にほら、その、し、初代ウーティエ様の雷魔法とかジークエンドは、ほら、森とはちょっと相性悪めっていうか……て、手助けをしようと思ってな。ほら、俺ほら、一応魔法薬も持ってきたし、役には立つと思う」
「はい! 是非よろしくお願いします!」
レティクスは魔災の発生に関わっていない。だから安心はあるけど、目の前の彼に違和感を覚えないわけでもない。ゲームでの彼は、もっとこう堂々としていた気がする。でも今の彼はおどおどして、何かを異常に気にしているみたいだ。それが何なのかは、分からないけれど――。
◇◇◇
洞窟へ向かってひたすら歩くこと、三十分。それまで黙っていた亡霊騎士様が、『なあ聖女、この際だから聞くけどさぁ』と、重々しく口を開いた。
「はい、何でしょう?」
『お主、我のことどれくらい知ってる?』
「どれくらい……と言ってもなんて言えばいいのか良くわからないのですが、弱点は水魔法と鎧の真ん中についている青色の宝石で、夜中になると攻撃力二倍で、旧校舎のどの位置にいて、どんな間隔で校舎の中を徘徊するかしか知りませんけど……」
ゲームでは、亡霊騎士様が初代ウーティエ王だったなど、彼の詳細については書かれていなかった。だからウーティエ王だと聞いた時は驚いたくらいだ。
しかし今、私の隣を歩く亡霊騎士様は引き気味にこちらに顔を向けた。
『それだよ! それ! その断片的な詳しさがめちゃくちゃ怖いんだよ。完全に付き纏いのそれじゃん? お主我の弱点とかどこで知った? もしかして国中に流出しちゃってるとか?』
「それはないと思いますよ? キーリングさん、初代ウーティエ王の情報とか歴史って国にはどんな感じに伝わってますか?」
「戦いが起こると必ず前に出て剣を振るい策謀にも長けどんなに不利な戦いであっても国に勝利を導きこの世に生を受けたときから剣技の才に恵まれまた努力を欠かすことなく日々地獄の鍛錬を越え完全となった唯一の騎士であり晩年使い続けていた剣を魔剣カストル聖剣アルビレオに分け自らは魔剣をそして自分の力を込めた聖剣アルビレオを王家に代々伝えていき今もなおウーティエ王国を守っている剣王だな」
レティクスは初代ウーティエ王の歴史について、一切噛むこと無く説明していく。私の知らないことばかりで勉強になるけど、亡霊騎士様はぽかんとしていた。一方、エヴァルトは「僕も説明出来るよ」と裾を掴んでくる。
「それにしても、キーリングさんは亡霊騎士様について詳しいですね? お勉強されたんですか?」
「あ、いやぁ……そ、そんなこともねえよ? べ、別にただの教養だし」
レティクスは目を泳がせながら口角を引きつらせている。亡霊騎士様はそんな彼の様子に戸惑い気味だ。なんだろう、彼はもしかしたら亡霊騎士様のファン、とかでは……? なんだか私のエヴァルトへの情熱に似ている気がするし……。エヴァルトは亡霊騎士様とレティクスを交互に見ているし……。
私は不思議に思いながらも、そのまま森の奥へと歩いたのだった。
本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼
カドコミ(WEB)
https://comic-walker.com/detail/KC_006932_S/episodes/KC_0069320000200011_E
ニコニコ静画
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