誰とでも友達になれる
本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼
カドコミ(WEB)
https://comic-walker.com/detail/KC_006932_S/episodes/KC_0069320000200011_E
ニコニコ静画
https://manga.nicovideo.jp/comic/74034
詳細は活動報告よりご確認ください。
「工作って、どういうのが作れるんですか?」
「うーん……何でも?」
「例えば〜、好きな相手と手がくっついてしまう薬とかって作れます?」
「それは調薬かな。ジャンル外だよ。まぁ、薬品をかけ合わせて爆発を起こすくらいなら出来るけどね……ああ、煙幕弾ならすぐ作れるよ。っていうか護身用にいっつも首から下げてるんだ」
「ほあ」
あれからルモニエちゃんと会話をしながら旧校舎の中を進んでいくと、だんだんと彼女と打ち解けてきた。初めはあんまり話すの好きな子じゃないかもと思ったけど、自分の専門分野でお話しをするのは好きみたいで、オルゴールを自作していたり、家に帰ると工具の手入れをするのが趣味だとか色々聞いてしまった。もう友達だと思う。
「じゃあ、今度爆弾の作り方教えてもらってもいいですか? 量産できる手頃な感じの……」
「えぇ……現実が充実してる人間の冗談こわ……」
「いや冗談じゃないですよ。本気本気――あれ?」
やがて奥へと繋がる中庭に通りかかると、目の前に滅紫がかった黒煙がたちこめ、円を描き始めた。円はやがて人形を形成し始め、おどろおどろしいそれはこちらに近づいてくる。ルモニエちゃんは「おばけは管轄外……」と私の後ろに隠れた。
『立チ去レ……愚カナ人間ヨ……ココハ我ノ闇ノ隷属ガ支配スル領域……貴様ノ来ル場所デハ無イ。死ニタク無ケレバ、今スグニ……』
「おっ! おお!? そのお姿は……もしかして亡霊騎士様ですか!?」
私の言葉に、後ろに隠れていたルモニエちゃんが、「えっ知り合い……?」と目を見開く。
「いいえ、初対面ですよ? ただ私は亡霊騎士様の弱点が胸元の宝石だということは知っていますが……」
「へー」
『……』
亡霊騎士様は襲いかかってくる様子もなく、たずさえている剣の握りに手をやったり離したりしている。私は今がチャンスだと彼の元へゆっくり近づいていった。
「こんにちは〜、初めまして! 私スフィア・ファザーリと申します。亡霊騎士さんですよね? 今目の前にいらっしゃるのは分身で、本体はこの奥ですよね? 今からそちらにお伺いさせて頂きますね!」
『……』
「こんにちは〜、初めまして! 私スフィア・ファザーリと申します。亡霊騎士さんですよね? 今目の前にいらっしゃるのは分身で、本体はこの奥ですよね? 今からそちらにお伺いさせて頂きますね!」
『アァ……』
しぶしぶ、といった様子で透け気味の亡霊騎士が頷き、剣の握りからとうとう手を離した。
『死ヲ知ラヌガ故ニ自ラ災厄ヘト突キ進ム愚カナ娘タチヨ……コノ校舎ニハ積年ノ怒リ、苦シミ、嘆キガ染ミ付イテイル……精々怯エ、恐怖シ自ラノ浅慮ヲ呪イタクナケレバ……立チ去レ……!」
半透明の亡霊騎士の周りの黒煙が、ぐるぐると渦を巻き騎士と共に消えていった。「出てこないなら屋敷全体を浄化するぞ」と脅して出てきてもらうことも手段としてはあるけれど、助力をお願いするならきちんと礼儀正しく接するべきである。ここはきちんと、正面から亡霊騎士とぶつかるべきだ。
だから私は思い切り足を上げて、壁に向かって振り下ろした。小さな穴が開いて、そのまま穴を広げるようにバリバリ木の板をはがしていくと、すると途端に辺りに瘴気が立ち込め、亡霊騎士登場BGMとされている不穏な金切り声や断末魔が部屋に響き、今度は本体らしき、透けていない亡霊騎士が現れた。
『お主正気か? 何か魔法かけられてるのか?』
「えっ」
『えっじゃないから! 制服着てるように見えるけどお前蛮族か何か? 何できょとんとしながら穴広げてる? お前ここ、お前の家じゃないからな? 勝手に間取り変えるな?』
「一番奥の部屋に行こうと思って……」
『えっ、お主、扉見えてない? ドアを開く概念とかがない……?』
亡霊騎士さんはさっきとは打って変わって弱々しい。「あの、あなたにお会いしたいんですけど――」と声をかけると、沈黙した。
『……なんで?』
「実は、精霊にお願いしないと入れない場所がありまして、でも私は聖女だから精霊に協力が得られないっぽいんですね」
『お主完全に事故物件じゃん……精霊が聖女に手を貸したくないってよっぽどじゃん……何したわけ……? 精霊の泉に吐き散らかしたとかそんな感じ……?』
「いえ、期待の新星なので、皆、気後れしちゃったんですよね多分」
『自己評価死ぬほど高いじゃん……』
「今年の聖女は一味違うと有名なんですよ」
『警鐘だよそれ……何お主……王は何か言ったりしてないの?』
「期待してるぞ、と」
『我の事なかれ主義まで受け継いでるじゃん……血、濃ぉ……』
あれ、事なかれ主義を受け継いでるって、亡霊騎士は王家の血筋なんだろうか。不思議に思っていると私の後ろに立っていたルモニエちゃんが「初代ウーティエ王の壁画の甲冑と似てる……」とぼんやり亡霊騎士を眺めていた。
「えっ亡霊騎士さんが初代ウーティエ王?」
『……ああ』
「えっじゃあ何で王が誰もいない旧校舎の奥で暮らしてるんですか? 嫌われてるんですか!?」
『嫌われてなどいないわ!』
亡霊騎士――初代ウーティエ王がじたばたと暴れまわる。呆然としていると、後ろからルモニエちゃんがぼそっと呟いた。
「初代ウーティエ王……ボク読んだよ。可もなく不可もなくって言われてた」
『あーバカ! 君も初めて会ったけどなんにも我のこと分かってない! これだから民は! あのねぇ、王に大事なことって国を安定させることなの! 大きく繁栄させるなんて無理があるの! 我頑張ってた! アアアア!』
「そんなウーティエ王にお願いがあるんですけど、精霊になってみませんか」
『は?』
時間は有限だし、そろそろ本題に入らなければ。初代ウーティエ王は「我……幽霊ですけど?」と怪訝な声で首を傾げた。
「幽霊も怨霊も精霊も、似たようなものじゃないですか? 霊ってつくし」
『いや! そんなことないから! っていうか我、怨霊じゃないから!』
「では、幽霊と精霊の違いはなんでしょうか?」
『……いいことをする? 崇められるか、られないか?』
「初代ウーティエ王は、いいことをしないのですか?」
『え』
「いいことって、どういうことでしょう。相手にいいことだと思っても、自分にとって悪いこともあります。果たして広義的ないいことというのは、どういうことでしょう?」
『やめて! 哲学しないで! 洗脳されそう! こわい! お主怖いよ! 精霊に嫌がられる理由がすごい分かった! 怖いもん! お主、怖いもん!』
「聞いてくださいよ初代ウーティエ王、貴方はかつて王でした、そして初代ウーティエ王は貴方だけ、精霊の器でしょう! 貴方しか出来ませんよ!」
『わ、我が、精霊……? アワワワ』
「はい、復唱してみてください。我は、精霊!」
初代ウーティエ王は「我は精霊……」と繰り返す。すると、「なんか出来る気がしてきた……かも?」と目をぐるぐる點せ始めた。
「聖女様、変って思ってたけど、すごく変だったんだね」
「まぁ確かにヒロインですからね。フッ……面白いと思われるかもしれませんね」
「? うん。ボクにはよくわからないけど、そうなんだろうね」
『我は精霊……我は精霊……』
「ということで初代ウーティエ王……いや亡霊騎士様、私と契約して精霊になってください。といってもただ着いてくるだけの簡単なお仕事なので安心して欲しいです」
『ウン、分かっ――伏せろ!』
亡霊騎士の突然の怒鳴り声に、私もルモニエちゃんも瞬時に体勢を低くした。すると同時に頭部に凄まじい風が吹き、私達の頭上に激しい水流が通過した。
振り返ると後方にミアプラキドスが浮遊し、不敵な笑みを浮かべている。ただ、授業のようなマスコットサイズではなく、装いもそのままに、成人男性の姿をしていた。
「精霊ミアプラキドス……」
ルモニエちゃんがぼそりとつぶやくと、ミアプラキドスは死んだような目でこちらを見た。
「ああ、アンタレスと話してた地味メガネ……まぁいいや、敗北イベントは全滅ってあいつ言ってたし……聖女ごと倒すかぁ……」
「え? 私を倒す?」
聞き返すと、精霊ミアプラキドスはまっすぐこちらを見て頷いた。
「うん。ぼく、お前倒したら、田舎で楽に暮らすんだ。もう悪事はこりごり」
――だから、早く僕に倒されてよ。ミアプラキドスは笑って竜巻のような水流をいくつも起こし、こちらへと放ってくる。私は亡霊騎士様とルモニエちゃんをとっさに庇うけれど、その前にミアプラキドスが一瞬にして火だるまに変わった。
「え」
あまりの火力に呆然とすると、亡霊騎士様が私を人殺しを扱うように距離を取ってきた。慌てて首を振ると、『だって明らかにお主の背後から出てきたじゃん……?』と怯えてくる。
「違いますよ、私じゃなくて――」
「僕だよ」
コツ、と靴音を立てて、吹き抜けになっている二階から、黒い影が降り立った。この声は完全に――、
「精霊界は、もうきっと駄目なんだろうね。スフィアに協力しないだけじゃなく、攻撃までするなんて。滅べばいいのに」
そう言って、暗い顔をしたエヴァルトがミアプラキドスを睨みつけたのだった。
本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼
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