058 ようこそ同志
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――――ルーナシア王立学校内の一室
一人の男子学生がその部屋の前にいる。
――コンコン
扉の前に立ち、控えめに2回ノックする。
一呼吸の後、内側から声が聞こえてきた。
「身長」
たった一つの単語だ。
「138.7cm」
男子学生は扉に向かってそう答えると、引き続き中から返答がある。
「体重」
「34.2kg」
それに対して再びやり取りを続ける。
「契約グロリアの種族と名前と累計契約年月」
「レッドスライム。名前はスー。累計契約年月は7年だ」
男子学生は苦虫を嚙み潰したような表情でそう答えた。
――カチャリ
内側から鍵の開く音がする。
「ようこそ同志。いいところに来たね。新たにもたらされたスリーサイズについて今ちょうど議論しているところでね。さあ入り給え」
扉が開かれ、額にピンク色の鉢巻きを締めた男子学生が中から現れる。
「ん? 誰だお前は」
鉢巻きを締めた男子学生は見慣れない来訪者へと疑問をぶつける。
自らより背は低いものの目つきは鋭く、彼がいつもつるんでいる男友達とは雰囲気が異なっている。
なにより、来訪者の腕には特徴的な腕章が存在を主張していた。
「え、風紀委員会⁉ ぐえっ……」
「1名確保。これより突入する」
来訪者は鉢巻きの学生を部屋から引っ張り出し、後方へと引っ張り投げる。それに呼応して腕章を身に着けた数名の学生たちが現れた。
突然の騒動に部屋の中は混乱していた。
「風紀委員会だと、聞いてないぞ。今日ガサ入れがあるなんていう情報は聞いてない! おい会員番号三十、情報は、会員番号零からの情報はどうなっている!」
「しっ、知らない、何も聞いてない。今までこんなことは無かった。とにかく逃げろ会員番号十一!」
「全員確保しろ! 証拠物品は押収の後すべて焼却だ!」
悲鳴と怒号、それに牛のような鳴き声が飛び交う中、一人また一人とおそろいのピンク色の鉢巻きを巻いた男子学生達は腕章をした男子学生達に捕まっていった。
その騒動の後、校舎内の一室。
先鋒を切ってファンクラブの中に飛び込んだ風紀委員は一人考え事をしていた。
「集会場所が割れたとは言えあまりにも簡単すぎた……。それに会長、いや、教祖の姿はあの場に無かった……。そういえば会員のやつらが妙なことを言ってたな……。風紀委員会が来る日じゃなかった、などと……。俺達の情報が洩れることなど考えられんが……」
しばらく自問自答を続けていたが、座っているだけではこれ以上の答えを得ることは出来そうになかった。
◆◆◆
◇◇◇
◆◆◆
中庭で矢文事件があった数日後。
授業を終えたレナは、ミイちゃんナノちゃんとウィンドウショッピングに行くため合流場所の中庭に向かっているところだ。
ミイちゃんナノちゃんは午後は中央校舎での授業なので、先に集合場所で待っているだろう。
とてとてとてとお嬢様としてのたしなみを維持したまま出せる最高速度で女子校舎を出る。
「レナー」
ミイちゃんが遠くで手を振っている姿が見える。
その横にはナノちゃん。二人はもう準備万端のようだ。
二人の姿を見たレナは手を振り返し、校舎の外ならば、と駆け出すが、そんな三人の間にすっと黒い影が割り込んで来た。
先日矢文からレナを守ってくれた風紀委員のレイキ君だ。
「ブライスさん、少しお話が」
「お話?」
「ええ、先日あなたの崇拝教団を壊滅させました。詳しい話はここでは……」
レイキ君はちらりと後ろのミイちゃんナノちゃんを見る。
「ミイちゃんナノちゃん先に行ってて。後でレナも追いつくから」
「レナ……。分かったわ。あんた、レナに変なことしたらタダじゃおかないからね!」
「そんな事しませんよ。信用無いですね。僕は風紀委員ですよ?」
ミイちゃんがレイキ君に噛みつく。
「スーちゃん、レナちゃんをお願いね」
ナノちゃん任せておきな。俺の目の黒いうちはレナには指一本触れさせないぜ。
そうして二人と別れた俺たちは中央校舎に向かう。
風紀委員といえども女子校舎または男子校舎に入ることは許されていない。そのため男女混成メンバーの風紀委員会の拠点は中央校舎にある、という事なんだろう。秘密保持のためか、一般学生にはその場所は伝えられていないんだよな。
どうぞ、ととある一室に通された俺たち。
ここが拠点なのか?
なんだよ、暗いな。明かりくらいつけておこうぜ。
カチャリとドアの鍵が閉められる。
「それで話というのはなんでしょうか?」
早く切り上げたいのか、すぐさま本題に入るレナ。
すごく警戒しているのか余所行きの口調で、それでいて俺を抱いた腕を少しだけキュッと絞めている。
「ええ、先ほどお話しした通り、学生番号5382崇拝教団、つまりあなたのファンクラブは壊滅しました。これからは怯えること無く学園生活を送っていただくことができます」
「あ、ありがとうございます」
おお、さすがは風紀委員会という事か。俺が手を下すまでもなかったな。よしよし。
「その、お話はそれだけですか?」
薄暗い部屋の中。
レナの返答に、ピクリと僅かに眉を吊り上げたレイキ君。
「大切なことですよ。いつ暴発してあなたに危害を加えるか分からなかった奴らがいなくなったんです。そしてそれを成し遂げたのはこの僕。そう、あなたに平穏と幸せを与えてあげたのです」
ん、んんー?
なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。
おい、ちょっと、レイキ君、少しずつ近づいてくるんじゃない。
「レイキ君が、ファンクラブを?」
「そうです。やつらはかなりの人数でしたが、僕が風紀委員達を指揮し、壊滅に追い込みました。不埒にも暴力に訴える輩もいましたが、この僕の力の前に屈しました。やつらも二度とあなたに付きまとうようなことは無いでしょうが、その時は同じように厳しく指導するまでです。この僕が、あなたの平穏と幸せと……愛のために」
「で、でも、その人たちも悪気があったわけじゃないと思うの。レナは別に気にしてないから、これ以上ひどいことしないであげて」
――バンッ
うおっ、びっくりした。
レイキ君がテーブルを思いっきり叩いた。
「ブライスさん、いえ、レナ! あなたに平穏を与えたのはこの僕だ。あなたを幸せにできるのもこの僕だ! それなのに、それなのに、この僕のことよりあんなクズたちの事を想うなんて!」
あっあー、表情がいっちゃってる。




