世界は正義&視聴率の光でみちている byマスターP
今回は裏方のお話
「はい、四カメ入りマース」
「次CM明けからゲスト出していきますよ!」
きらびやかなライトがいくつも灯されたスタジオ、幾人もの人々が出入りを繰り返していた。
そのスタジオとは別の階にに備え付けられた会議室。
そこに数人の人が集まり会議をしていた。
彼らこそが魔王ソロティス、ワインなどがキャッキャウフフしながら見ていた番組、〈殲滅天使パリリン〉の撮影スタッフ達である。
「今週の〈殲滅天使パリリン〉は視聴率よかったですね。特に異世界からの視聴率が異常に高かったです」
「〈殲滅天使パリリン〉は我が正義局での一番の人気番組ですからね」
正義局。
正義の味方をプロデュースしたり魔族、モンスターの引き起こした被害、災害などを面白おかしくニュース、番組などを制作し放送ているモニター局だ。
〈殲滅天使パリリン〉も正義局がプロデュースした『正義の味方』であり、今や正義局の看板番組と言えるものだ。
「ファンレターや、メールもたくさん来ていますからね」
「正義の味方にきてほしい地域もたくさんありますかね」
そういい会議室には笑い声が響く。
正義の味方という響きはとてつもなく甘美なものだ。なぜなら相手にするのは全て敵、悪魔なのだから。
そういった悪魔のいる地域に〈殲滅天使パリリン〉を派遣、その地域の悪魔を掃除し、それを撮影、そして放送する。
若干過激な放送にはなっているのだがそのダイレクトな映像が視聴者には受けるのだ。
「またせたな」
遅れてくるように一人の男が入ってきた。
その男は迷うことなく一つだけ残った最後の席に座る。
「では次の派遣地域を決めようか」
その言葉に会議室の空気が変わる。
自分の推薦した地域に派遣し〈殲滅天使パリリン〉の視聴率が上がればそれはそのまま、その地域を推薦した者の評価の上昇に繋がるからだ。
「では私から」
一人が手を上げ立ち上がる。
「うむ」
鷹揚に頷きながらなんだか偉そうにするおっさんが先を促す。しかし、誰もこの人に不快感をもってはいなかった。彼こそが色々な番組を作り上げ正義局を大きくした立役者であるマスターPと呼ばれていることはこの場にいる全員が知っているからだ。
「私が推薦する派遣地域は紛争地帯です」
「ほう?」
「〈殲滅天使パリリン〉は今まで幾多もの悪魔を倒してしました。それは読んだ字のごとく彼らが悪だったわけですから。ですが、悪というのは悪魔だけではありません。私は戦争を起こす人も悪だと考えています」
会議室のあちこちから「確かに」「一理あるな」などと言った肯定的な発言が目立つ。
それに気を良くした男は続ける。
「そこで! 紛争地帯への派遣です! 彼女達の活躍により紛争は終結される! しかもうまい具合に再来週は特番が組める三時間放送です。〈殲滅天使パリリン〉の一軍、二軍をも共に参加させれば容易く片付けれるかと」
〈殲滅天使パリリン〉はチーム名である。
ちなまに軽く内情を説明すると一軍は五名、異界モニターに映り敵を倒したりするのは一軍の仕事である。
二軍は約二百名。一軍より煌びやかさ、戦闘力は落ちるが一軍に欠員が出た場合はここから選ばれたりする。敵の数が多ければ彼女達も出撃する。ただし、正確に難があるのも多いのだ。
まぁ、いってしまえば体育会系なのだ。
「うむ、〈殲滅天使パリリン〉を紛争地帯への派遣か、アリだな」
マスターPのアリ宣言で会議室が揺れる。
手柄をもって行かれたと感じたのだろう。
「だが、一つ目から決めてはつまらん。他のものの推薦場所を聞き、吟味してからだな」
マスターPのその言葉に何人かの者がホッと胸を撫で下ろす。
「では次は私めの案を」
「聞こう」
その後次々人が変わり〈殲滅天使パリリン〉を派遣する地域は続々と候補地が挙げられていく。
あっという間に会議室に備え付けられた魔法で文字を書くマジックボードが埋め尽くされる。
マジックボードには、
村周囲のモンスター壊滅、ドラゴン討伐、スライム討伐、街の嫌われ者リンチなとetc etc
やたらと暴力で解決するような企画ばかりである。
他局の二○四時間モニターのようなボランティアや博愛主義の映像では視聴率は取れないのだ。
「こう見ていると紛争地帯への派遣が一番視聴率が取れそうだな」
マスターPが退屈げにつぶやく。どうやら彼としてはいまちな企画らしい。
「しかし、もっとこう! 熱いものはないのか!」
テーブルをバシバシと叩きながらマスターPは叫ぶ。
「でしたら、このハガキなんてどうすか?」
今まで会議に参加してい人達とは明らかに違う口調をした男がへらへらと笑いながら手を上げてそう告げる。
マスターPは訝しげな表情を浮かべながら男が差し出してきたハガキを受け取った。
「こいつは?」
「自称、魔王様らしいですよ」
「魔王?」
すでに表情は訝しげというよりは疑いの表情である。
それでも一応は受け取りハガキを眺める。
そして眉を潜めた。普通の紙ではなかったからだ。
しかし、受け取ったからには一応はハガキを読んでみるマスターP。
「番組をいつも拝見さしていただいています
僕の名前は魔王ソロティス。魔王をやらしていただいています。
この度は僕の魔王城に〈殲滅天使パリリン〉をお招きしたくって、これ本当に魔王か?」
普通に見ていればイタズラだと思われるだろう。なにせ魔王の癖にやたらと丸文字を使っているし、一人称が僕である。どうかを考えても魔王らしくないのだ。
「そう思ったんですけどね? このハガキなにでできていると思います?」
「材質か?」
普通の紙ではないことはわかったが何かまではわからない。
「こいつ、最上級悪魔の皮すよ」
「最上級悪魔の⁉︎」
その言葉で会議室はそう然とする。
悪魔のトップクラスに君臨する悪魔のこと最を上級悪魔呼ぶ。当然、その皮など安安と手に入るものではない。
「ほ、本物なのか?」
「鑑定スキルまで使いましたからね。あとこの下に書いてある住所ですけど、これ確かに存在するみたいっすね。隠蔽魔法で隠されていましたけど異世界ですがその位置にありましたよ。魔王城」
「本物の魔王からハガキだと……」
最上級悪魔の皮で作られたハガキを手にしながらマスターPは震える。
「ではこの魔王ソロティスというのは……」
「確かに実在する魔王です。魔王協会にも問い合わせました。ちゃんとリストに乗ってましたよ二代目魔王ですね」
「実在する魔王なのか、しかも魔王城。魔王協会が嘘を付くわけないしな」
連絡すると現在存在する魔王を教えてくれる転生後の勇者様がお立ち寄り確実な施設である魔王協会。どの異世界にも存在する安心と実績がある協会でだ。
その協会からのソロティスという魔王は『存在する』という意味は大きい。
「こいつは視聴率がとれるぞ! 紛争地帯なんかよりよっぽどな!」
テーブルを両手で叩き、椅子をひっくり返しながら興奮した面持ちでマスターPは立ち上がった。
なにせ相手は魔王である。
大手を振って正義の味方ができるというものだ。
「〈殲滅天使パリリン〉は全員行かすぞ!」
「ぜ、全員ですか? 」
「ああ、一軍、二軍関係なしにだ! これはとんでもないチャンスだ」
魔王協会のリストに載るということは言わば賞金首である。それはかなりの凶悪性を持つという意味でもあるのだが。
「もし、魔王が討伐できたのであれば〈殲滅天使パリリン〉は一気にスターになれるぞ? 賞金が入るぞ! 賞金が!」
なんというか後半のセリフにやたらと重みがあった。
「し、しかし、全滅した場合はどうします?」
〈殲滅天使パリリン〉も万能ではない。今までの殲滅でも少なくない被害がこちらにも出ているのだ。まして次に相手をするのは魔王である。不安に駆らられるのは無理もないことだった。
「そうならないために情報を集めろ! 些細なことでもいい、家族構成、好きなもの、大事な人全部だ」
調べているものがまるで犯罪を起こす前の犯罪者と同じということを誰もが思ったがマスターPの異様な迫力に飲まれ誰もいい出せなかった。
「この住所に隠密行動が得意な奴を派遣して内部をマッピングさせろ。異世界モニターも使い、魔王城の内部を丸裸にするんだ」
「それは俺がやらしてもらってもいいすっか? なんだか楽しそうなんで」
「いいぞ、この企画がうまく行けばお前昇進できるぞ」
「おお、それはありがたいッスね」
トントン拍子に進んでいく会議にへらへらした男とマスターP以外の人物は不機嫌そうに顔を作る。
突如として出された企画が通るとなればそうなるであろう。
「あ、先輩方、俺こういうの苦手なんで手伝ってもらっていいっすか?」
へらへらした男が頼み込む。すると不機嫌そうにしていた人達は途端に笑顔になった。
「よし、後輩のために我々もがんばるか」
「資料作りはこっちに回してくれ」
と協力的になった人達を見てへらへらした男は頭を下げる。
「ありがとうございます。先輩方。あ、俺が魔王城の内部調査しときますね」
「いいか! 今度の三時間の特番、何が何でも成功させるぞ!」
『はい!』
異様な熱気に包まれた会議室から次々と慌ただしく仕事へと向かう人達。
それを見ながら男は口元を歪め、笑う。
その瞳は赤黒く輝いているように見えまるで、
魔族のように見えた。
こうして〈殲滅天使パリリン〉は魔王ソロティスの希望通り、マリアベルジェの嫌がる通りに魔王城への派遣が決まったのであった。
正義の味方も視聴率次第という身も蓋もない世界ですね。
次の更新は二日後になります。
また魔王様サイドに戻りますよ




