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世界はラヴ&ピースの光でみちている! by魔王

 魔王城には情報収集のために異界モニターと呼ばれる魔導具が置かれている。

 我々のわかるもので言えばテレビのようなものだ。

 周辺の国を映したり会議室を映したりとようはなんでも覗き見できてしまうものなのだ。

 それがなぜ異界モニターと呼ばれるかというとこことは違う世界も映せるからである。

 そんな異界モニターの前で盛り上がる二人組を見ながらマリアベルジュは頭を抱えていた。

 別に見ている二人が問題なわけではない。魔王城にいる物なら書類を提出すれば誰でも使用可能なのだから。

 ではなぜマリアベルジュが頭を抱えため息をついているのかというと。


『プリティプリティ! 世界よ! 愛の光で満ちなさい!』


 声の出処に視線をやると異界モニターからやたらと露出度の高い衣装を着たカラフルな髪をした女がこれまたキラキラした杖のような物を振り回し、痛い決めポーズらしき物をした後に戦っている敵であろう全身黒ずくめの奴らをバカスカと殴り始めていた。


「よし! プリティレッド! 悪者をやっつけろ!」

 ガシャガシャ!


 そんな異界モニターを見ながら興奮したようにして声を上げているのは魔王城の主、ソロティスである。よほど熱が入っているのか両の手を握りしめながら夢中に見入っている。

 そんなソロティスの横には首からボードを下げた真紅の鎧がソロティスと同じように拳を握りしめながら熱心? に見ていた。

 ソロティスの言葉を聞いている限りではこのカラフルな女は正義の味方なのであろうとマリアベルジュは結論付けた。黒ずくめの悪役は集団での戦い方がうまいのかすぐさま徒党を組んで反撃、カラフルな女が一気に窮地に立たされていく。


『必殺! ジャスティスデストロイブレイカー』


 直後カラフルな女が正義の味方とは思えない必殺技名を叫びやたらとデコレーションされていそうな魔法が放たれる。ピンク割合がかなり高い色の魔法が色の割りにはえげつないくらいの威力で黒ずくめの奴らを消し飛ばし、周囲を一気に血の雨が降る戦場へと変えていく。

 一瞬にして瓦解している黒ずくめの集団へカラフルな女が嬉々として襲い掛かっていく。

 何人かの黒ずくめがスクラムを組みながら突撃して行くがカラフルな女にはまだ、二人も仲間がいるのかそちらが参加し始めると黒ずくめは手出しすることができず一方的な虐殺が開始され始める。

 やがて、黒ずくめが全て血の海に倒れるとカラフルな女達が再びよくわからないポージングを決めながら叫ぶ。


『今日の敵も手強かった! だけど正義の心を持つ私たちは負けないわ!』

「いや、あなた達ただ、虐殺しただけではありませんか」


 あまりの理不尽な戦闘光景についマリアベルジュはツッコミを入れてしまう。

 その心情はよくわかるというものだ。彼女たちは赤く染まってはいるがその全てが返り血であり、自身の傷は一切ないのだから。


『次週はあなたの街へ悪魔ゴミ掃除に行っちゃうぞ☆ 応援よろしくね〜』


 いかにも物騒なセリフを残し、異界モニターの画面が変わり、


「あなたの街の悪魔ゴミ募集☆

 ハガキに住所、氏名、年齢、あと悪魔ゴミのいる住所を書いてこちらの宛先に送ってね♥︎

 抽選で選んで殲滅天使パリリンがあなたの街の悪魔ゴミを掃除しに行っちゃうぞ

 ○○○ー○○○まで

 応募まってるよー」


 とやたらと丸文字で表示される。


「メモメモ」


 ソロティスが慌てたように表示されている住所を記入し始める。そんなソロティスを見てマリアベルジュは微笑みを浮かべかけるが首を振り、微妙な表情を作る。

 そんなマリアベルジュを他所に、



「今週の〈殲滅天使パリリン〉おもしろかったね!」

 こくこく!

「あの悪党を吹き飛ばすエフェクトもよかったね」

 こくこく!


 おそらくは彼女達にとっての悪魔ゴミ指定である二人が感想を言い合っていた。と言っても一人は頷いているだけなのだが、幸せそうに見えるのは不思議なものでである。


「異界モニターは番組は見れないはずですが?」


 異界モニターはあくまで通常では景色を映したり、会議室を映したりするだけで通常は番組を見ることができない。

 通常は、だ。」


「それは小遣いでカネパネェ商会に……」


 カネパネェ商会。

 お金があれば幸せ買えます! を志にしている魔界で一番大きな商会である。お金さえ払えばたいていのことはしてくれるとう商会である。

 そのカネパネェ商会にソロティスは他チャンネルを見れるように契約したのだ。当然有料である。


「小遣いからなら文句はいいませんが」


 そう言いながらソロティスの横に座る真紅の鎧に視線を流す。


「あなたまでなにをやっているのです? ワイン」

「?」


 頭に疑問符を浮かべるかのように音を鳴らしながら緋騎士ワインは首を傾げる。


「いや、首を傾げるんではなくですね。今日の〈人間の里を襲おう係〉はワインでしょう?」


 〈人間の里を襲おう係〉

 なにもしないと舐められる。たまには魔王軍強いんだぜ! っとアピールするためにランダムに選ばれた村、街、国のどれかを襲撃する係である。ちなみに一週間経つと別の者に変わる。

 ワインは思い出したかのようにポンと手を叩くと首から下げてあるボードにどこからか取り出したペンで文字を書き始める。やがて書き終えるとそれをソロティス、マリアベルジュに見えるように向ける。


『問題ない。それがし、この番組を見るために昨日の零時になった時点で村を一つ潰しておいた。のるまに抜かりはない』


 そこまでしてこの番組が見たかったのか! という言葉をマリアベルジュは言葉にはせず、心の中で叫んだ。


「……魔王様はなにをされているのです?」


 マリアベルジュがソロティスに視線を戻すとソロティスは視線を落とし、何かを書いているようだった。

 当然と言わんばかり殲滅天使パリリンへの手紙である。


「送ったらパリリンが間近で見れるなら送らなきゃ!」


 ソロティスの言葉にワインが衝撃を受けたように固まり、しばらくするとペンを取り出した時同様にどこからかハガキと何故か習字道具を取り出した。


(なぜ習字道具を?)


 マリアベルジュが疑問に考えていると、ワインは固形墨を硯で瞬く間に削り、毛筆を浸す。


「なにをしているのです? ワイン……」


 なんとなく想像がつくが否定してほしい気持ちを胸に抱きつつマリアベルジェは怖怖と尋ねた。

 すると墨汁に浸した毛筆を置き、再び、ワインはボードに文字を書き、マリアベルジュにボードを見せる。


それがしもぷりりんに手紙を……』

「あなたまで……」


 マリアベルジュは頭を抱える。

 ワインは毛筆をハガキに滑らせる。ハガキにはみるみる内に達筆と呼ばれるような文字が描かれて行く。


「なんですか、その無駄なスキルは」


 瞬く間に書き上げられたハガキを満足上げ?に見ているワイン。

 なんというか全身鎧であるワインが筆をもっているのはとてつもなく奇妙な光景である。


「僕も書けた」


 ソロティスは満足気な表情を浮かべ手にしたハガキを見つめている。

 マリアベルジェが覗き込むと確かにきっちりと問題なく、いや、見方によっては問題ある(・ ・ ・ ・)文書が書かれているが。


「さっそく応募しにきゃ!」


 ソロティスは楽しげにしながら軽く右腕を振るう。

 それだけでソロティスの右手の上に黒い鳥が現れた。


「そういう小さい魔法は得意なんですね」


 マリアベルジュが小さく呟きソロティスの腕にとまる黒鳥。あれは闇魔法の下位魔法、伝書黒鳥ホーミングバード。離れた場所にいる相手にメッセージ、または書物などを届けさすことができる。大半のモンスターが習得しているスキル《テレパシー》よりも下位に位置する魔法である。

 当然、ソロティスは《テレパシー》を習得していない。

 ソロティスはその鳥にハガキを加えさせるとまた腕を振るう。

 伝書黒鳥ホーミングバードはしばらく部屋の中を飛び続けると闇に溶け込むように消えていった。

 横のワインも同じように伝書黒鳥ホーミングバードを放ち手紙を放ったようだ。

 同様に闇に溶け込むように消えたのを確認し、マリアベルジュは手を叩く。


「では、今日はファンファンニールの『誰でもできる人を殺せる死霊術』の授業です」

「今日はプリリンたちのおかげでやる気がでたらからがんばるよ!」


 魔王とは思えない屈託ない輝くような笑みを浮かべたソロティスがスキップをするような身軽さで部屋を後にする。


「ワイン、あなたも魔王様を甘やかすのはほどほどに」


 ソロティスについで部屋から出て行こうとしたワインにマリアベルジュは釘を刺す。

 ワインはガシャガシャと音を立てながら首を縦に振り部屋から姿を消す。


「……」


 マリアベルジュは誰もいなくなった部屋に一人残る。

 素早くドアに近づき、耳を押し当て足音が聞こえないことを確認するとつぎは窓へと向かいカーテンを閉め、外から覗かれないように阻害魔法ノイズカーテンを使い完全にに阻害する。


「これでいいですね」


 完全に一人になったのを確認したマリアベルジュは異世界モニターを起動させ、リモコンを弄る。

 するとこの部屋が映し出される。ただし、一時間前のものであるが。

 その画面には機嫌良さそうに現れたソロティスが画面の前に陣取る。


「ああ、魔王様、可愛らしい」


 今にも鼻血を吹き出さんと言わんばかりの顔でマリアベルジュが恍惚とする。

 当然、異世界モニターにはもちろん存在しない。


「有料で外部ユニットをつけてよかったわ」


 やっぱりここにもカネパネェ商会の常連さんがいるようだ。マリアベルジュは慣れた手つきで画面を停止したり編集したりとしていく。


「こちらはMKMのメンバーに配布、こちらは物販にまわして、ああ! この素敵な笑顔はわたしのマイフォトアルバムに!」


 隠し撮りした映像を編集していくMKMのMことマリアベルジュの趣味の時間はこうして過ぎていく。


 ソロティスのだした手紙、それが厄介なことになるということは趣味に没頭するマリアベルジュの頭の中から完全に消えていたのであった。

変態だ! 変態がいるぞ!

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