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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
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54.恋の効力

 光輝くんから告白されて一週間が経った頃。

 この日は、寮住まいの光輝くんの部屋に遊びに来ていた。

 光輝くんのお部屋は、全体的にモノトーンのカーテンや家具、カーペットで揃えられていて、落ち着いた印象だ。


 壁には、海外のファッションリーダーたちのポスターや、六連星のみんなで撮った写真、光輝くんと同期の隊員たちの集合写真などが飾られている。


 クローゼットには、仕事道具とも言えるお洒落な服が収納されていて、ここに入り切らない分は、トランクルームを借りているとのこと。

 


 今は、テレビの前の床に座り、話題になったラブコメ映画を見ているところだ。

 

『如月くんの生徒手帳、早く返しに行かないと! あっ! 待って!』


 ヒロインは片思い相手でクラスの人気者の如月くんの生徒手帳を偶然拾い、本人の元に返しに行こうとするも、転んだ勢いで生徒手帳が宙を舞い、トラックの荷台に乗ってしまう。


「いやいや、そうはならんやろ〜!」


「アクロバティックな転び方でしたね!」


 光輝くんとは、同じシーンで笑えるし、同じところで感動出来る。

 もしかしたら結構、相性がいいのかもしれない。


「あ〜小春ちゃんが家におるとか、最高の気分や」


 後ろから抱きしめられ、ほっぺにちゅっとキスされ、すりすりと頬ずりされる。


「好き好き。大好き」


 光輝くんのあまりにも真っ直ぐな愛情表現に、ドキドキが止まらない。


 恋心とはお花のようなものだと、誰かが言っているのを聞いたことがある。

 愛情の水をたっぷり浴びて、芽が出て膨らんで花が咲く⋯⋯

 この調子だと時間の問題な気もする。


「ちなみに光輝くんって、今まで何人の人と付き合って来たんですか?」


 初心者としては、彼の手慣れた様子に恋愛能力格差を感じ、少し不安がよぎる。


「こんなん言っても信じて貰われへんやろうけど、実は付き合った事ってなくって」


 光輝くんは頭をかきながら答えた。


「10歳で城西からこっちに出てきて、防衛隊での昇級試験に忙しかったし、15歳からはモデルも始めてますます忙しかったし。器用な人間は『恋愛は別腹』みたいな感じで上手いことやるんやろうけど、俺の場合は、特別な関係になる前に自然消滅って感じかなぁ」


 確かに、学業以外にもやることがたくさんあると、それどころじゃないのかもしれない。

 ハートを奪うのは得意だけど、恋愛との両立は苦手と⋯⋯

 

「じゃあ、なんで小春ちゃんには告白したかって? それは俺が好きになったから」


 いつもは少し眉と目尻がつっている光輝くんの目が、子犬みたいに垂れて、瞳がうるうるしている。

 胸の奥をぎゅっと掴まれたような、慣れない感覚がする。

 

 まずい。なんだか分からないけど、とってもまずい。

 光輝くんと恋をしてみるとは決めたものの、我を忘れるほどのめり込むのはNGだ。

 慎重に、慎重に⋯⋯


「そっ、そもそも、六連星って恋愛禁止だったのでは⋯⋯?」


 冷静に戻ろうと、自分の中のブレーキを探す。


「それは樹が勝手に言ってるだけやん。現に歴代の六連星内夫婦は、活動期間が終わったからって、みんなすぐに結婚してるし。それはさすがに活動期間中から付き合ってないとムリやろ〜」


 確かに、先代の珊瑚お姉さまと烏丸朔太郎も、任期中に結婚が決まっていた。

 私たちは、あの二人とは任命時の年齢も違うけど、そうか。いずれ、そんな事になる可能性も⋯⋯


 まだ付き合うかも決まっていないのに、どこか浮かれてしまうのだった。



 そして、その浮かれ具合は本業の方に、良い影響を及ぼしていたようで⋯⋯


「小春ちゃん、でかした! ディア能力が10回復してる! この調子だね!」


 米谷さんはバシッと肩を叩いてくれた。


 あれから、一部のクラスメイトによる嫌がらせは、樹くんと海星くんが目を光らせてくれているからか、鳴りを潜めているし、光輝くんが私の事を思ってくれているというその事実が、心を支えてくれる。


「これが、恋の効力⋯⋯」


「なに!? 小春ちゃん、恋してるの!? それは良い心がけだね! 相手は誰かな? 必ず成就するように、僕が工作してあげるよ! そしたら、200超えも夢じゃないね! お願いだから、絶対に失恋なんかしないでよ!? 失恋するくらいなら、恋なんてしない方が良いんだから!」


 米谷さんは、ディア能力中心の偏った考えを披露してくる。

 必ず両思いになれる工作ってなんだろう。

 ちょっと怖いなぁ。


「とにかく、君たちの年代はデリケートなんだから! メンタルの管理にも気を配ること!」


 米谷さんからの注意喚起に、気を引き締めるのであった。

 

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