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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
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48.平穏な学校生活


 防衛高校での生活にも少しずつ慣れてきた頃。

 この日は体育の授業があった。

 上が白、下がネイビーの体操服に着替え、グラウンドに出る。


 体育は男女別に分かれて、それぞれ一人ずつ先生がついてくれる。

 今日は、バレーボールの授業だ。

 

 みんなで協力して、体育館倉庫からポールとネットを持ってきて、コートの準備をする。


 最初はウォーミングアップも兼ねて、アンダーハンドパスやオーバーハンドパスの練習をし、その後は六人組を作って試合形式でプレーする流れになった。

 と言っても、ポジションなんかは決めずに、ゆるい感じだ。 


 同じ頃、奥のコートの男子たちも、試合をやるらしく、先生と女子生徒たちの視線が、自然と男子の方に注がれる。 


 

 一試合目は海星くんのチームだった。

 海星くんは、持ち前の機動力とジャンプ力を活かしてボールを拾い、チャンスがあればガンガン攻めていく。


「海星くん、かっこいい〜!」


「がんばれ〜!」


 女子たちは熱いエールを送っている。

 そんな中、海星くんは、一際鋭い軌道でボールを打ち込んだ。

 ボールは相手チームの誰にも触れられる事なく、バコンと音をたてて、床に叩きつけられた。


 あの角度で攻められたら、ひとたまりもないよね。

 

「さすが海星くん! 魔球だったね!」


 声援を送る女子に混ざって声をかけると、海星くんはこちらを振り返って、手を振ってくれた。



 一つ目の試合が終わり、次は樹くんのチームだ。


 樹くんはここでもサポーターの特性を発揮しているのか、自分がしかけるというよりも、仲間にとって良い位置にボールを上げるような動きをしている。

 本来なら目立つ役割ではないのに、きゃあきゃあ言われているのがすごい。


 身長も高い方だから、アタッカーでも良さそうなのに。

 そんな念が届いたのか、何度目かのゲームで、樹くんが前に出た。


「いいぞ! 樹くん! ドリルスパイクアタックだ!」


 樹くんが打ったスパイクは、相手チームの守備の人たちの間をすり抜けていった。


 なにあれ、超かっこいい。

 宙に舞う瞬間の足の筋肉の動き、綺麗に弓なりに反る背中、首筋を伝う汗⋯⋯

 推し疲れのせいか、また心拍数が上がってくる⋯⋯


「先生、ダサい技名をつけられるせいで、授業に集中できません」

 

 樹くんは挙手をして、大げさに先生に訴えかける。

 その瞬間、どっと笑いが起きた。

 男子担当の高畑先生もお腹を抱えて笑ってる。

 

 樹くんはこちらを振り返り、ふんっと鼻で笑って見せた。 

 ⋯⋯⋯⋯やられた。



 自分たちも練習試合を終え、水分補給休憩中のこと。


「ねぇねぇ、小春ちゃん。ちょっといい?」


 話しかけて来たのは、クラスで目立っている女子二人組だった。

 茶髪のパーマヘアの松前さんに、明るい茶髪のボブヘアの平沢さん。

 二人とも、ばっちり化粧をしていて、少し大人びた雰囲気だ。


 基地では見かけないから、防衛隊の隊員ではないのだろう。

 声と口元は笑っているのに、ものすごい殺気が出ているような⋯⋯


「小春ちゃんってさぁ、海星くんと樹くん、どっちかと付き合ってるの?」


 松前さんは、顔をひきつらせながら笑顔を作っている。

 改まった感じで聞かれるから、どんな事かと思ったら、そんなこと。


「全然! どっちとも付き合ってないよ? 私たち、そういうんじゃないから。どうして?」


 私が完全に否定すると、二人は嬉しそうに顔を見合わせた。


「そっか〜! そうだよね〜良かった〜! 小春ちゃんって、ずいぶんと二人に馴れ馴れしいから、てっきり彼女かと思っちゃった!」


 松前さんは、安心したみたいに笑う。

 なんだか言葉にトゲがあるような。


「樹くんも海星くんも、普段はクールだけど、誰にでも優しいもんね。別に小春ちゃんだけが特別なわけじゃないし!」


「そうそう! 樹くんは大人っぽいお姉さんが好きらしいから、小春ちゃんが彼女って事はないだろうな〜って思ってたけどね!」


 松前さんと平沢さんの言いたいこと⋯⋯分かった気がする。


 スクールカースト女子の部のトップに君臨するこの二人は、私がクラスの秩序を乱しているからと、注意喚起しに来たんだ。


 恋人にしたいランキング上位に食い込んだ樹くんと海星くん――この二人とお近づきになりたい女子がクラスにいてもおかしくない状況なのに、意外と表だって二人に話しかける女子は少ない。

 

 松前さんと平沢さんがこうやって和を乱す女子に声をかけることによって、二人の学園生活が守られているということなんだ。

 

「そうだよね。ちょっと馴れ馴れしかったよね。せめて二人には、平和な学園生活を送って欲しいよね! 私ったら、全然気が利かなかったよ。学校が終わってから、いくらでも話せるんだから、授業中くらいは大人しくしとく!」


 そう返事をしたんだけど⋯⋯


「良いよね、小春ちゃんは。ちょっと人より身体が頑丈だからって、二人と一緒のチームで活動できて」


「弓くらいなら、練習したら誰でもできそう」


 私は答えを間違えたのだろうか。

 松前さんと平沢さんの発言が、さらにチクチクしてきたような。


「平沢さんは、弓に興味があるの? だったら入隊してよ! 隊員募集中だから!」


「え、やだ。なんか、軍隊にいる女の子ってガサツそうだし。樹くんと海星くんとは学校でも会えるのに、入隊までするとか、意味分かんない」


 失礼な事を言い残して離れていく二人。

 なんだか最後まで、会話が噛み合わないのであった。



 放課後、基地への帰り道で、明里ちゃんと保奈美ちゃんに、先ほどの松前さんと平沢さんの話を尋ねてみる。


「うわ〜変なのに絡まれちゃったね。ほら、防衛隊って危険手当がつくから高給取りじゃない? それに、警察官とか消防士みたいに、制服好きの女子とか、守ってもらいたい系女子とかに、めちゃめちゃモテるんだよね。彼氏探しのために、防衛高校を選ぶ子も結構いるみたい」


 明里ちゃんは、呆れたみたいに肩をすくめる。

 

 『防衛隊員』の肩書をもつ人と付き合いたいとか、結婚したいという人も結構多いのだとか。

 

 まさか女子高生のうちから、そこまで計算して将来を考えているとは。


「とは言え、恋愛も悪いことばかりじゃないよね。恋人ができれば、ディア能力が飛躍的に伸びる人もいるみたいだし」


 保奈美ちゃんは少し照れたように笑う。

 なるほど。願いの力、ディア能力は恋愛によっても底上げ可能とのこと。


「ただし、上手くいかないと余計に下がる場合もあるから、気をつけないとね!」


 そういう明里ちゃんの顔は、恋する女の子のようにも見える。


 二人ともっと仲良くなれたら――明里ちゃんと保奈美ちゃんの恋についても、色々と聞いてみたいなと思った。

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