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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
43/112

43.くされ縁


 樹くんと公園にたどり着くと、そこにいたのは、かつての空手仲間たちだった。

 自販機の前で制服姿で、だべっている。


「おい。あれ、小春じゃね?」

 

「ほんとだ。レンジャーやってんぞ」


「ちゃんと仕事してんの?」


 小太りで偉そうな健太、お調子者の大貴、すかした野郎の結人だ。


「あ! みんな! 久しぶり! 見てよ、この成長した姿!」


 六連星のピンクの戦闘服を着ているので、ドヤ顔で自慢げに見せびらかす。

 懐かしい顔ぶれに、嬉しさ半分、面倒な事になる予感半分だ。


「小春、お前さぁ、怪獣のくせにヒーローやってんのか?」


「ゴリラ型エイリアンだろ?」


「見たよ。ぶりっ子して写真なんか撮っちゃって」


 三人は馬鹿にしたような口ぶりだ。 

 しかも、結人に至っては、お尻をペチンとはたいてくる。


「なっ! すぐそうやってバカにして! 私は精一杯やってるんだから!」


 ムキになって怒ると、余計に彼らが調子に乗るのは分かってるのに。

 小さい頃からの仲間なんだから、夢が叶ってよかったなとか、がんばれよとか言ってくれたっていいのに。


「レンジャーなら出世したんだろ? ジュースおごってくれよ!」


「昇格祝いだ」


「先に道場辞めた奴が、なんかおごる約束だったよな」


 どうしてお祝いなのに、私がおごらなければならないのか。

 道場を辞めたら何かおごるというのは、私たちの中で、弱音を吐いた仲間に喝を入れるためのお馴染みのセリフだ。

 

「もう! わかったから! ジュースおごるから、捜査に協力して。最近、この公園で何か不審な物を見なかった? よーく思い出しといて。学校の友だちにも聞いてみて、何か情報があったら私に連絡すること!」


 自販機にスマホをかざし、飲み物を買う。

 健太はサイダー、大貴はビタミンジュース、結人はコーヒー牛乳と⋯⋯


「樹くんは何か飲む? 前におごってもらったの、まだ返してなかったし!」


 さっきから無言の樹くんは、怖い顔をしている。


「いらない。そんな気分じゃないから」


 腕を組んだまま、顔を背けてしまう。


「そう? じゃあ、私はメロンソーダにしよ。はいどうぞ」


 健太のサイダーの缶がたまたま少し凹んでいたのを、ゴリラが握りつぶしただのなんだの文句を言われながらも、気を取り直して三人に話を聞く。

 

「そういや、友だちがここで犬のエイリアンを見たって言ってたな。砂場の砂を掘り返してたって」


 健太は真面目に協力する気になったのか、情報を提供してくれた。


「砂場か⋯⋯それは初耳だよね? やっぱり何か探してるのかな」


「わかんないけど、有力な情報だね。ご協力感謝します」


 樹くんは健太に向かって、頭を下げる。


「これぐらいお安い御用ですよ。小春はガキの頃から、ガサツでオタクで可愛げのない女ですが、どうかよろしくお願いします」


 健太は保護者気取りで樹くんに頭を下げる。


「ビシバシしごいてもらって大丈夫です! 身体だけは頑丈なんで!」


「最近、妙に色気づいてますけど、中身は男ですからね」


 大貴も結人もひどくないかな?

 とってもスネたい気分だ。

 でも、この人たちは私がむくれてたって、からかうだけだし、泣いたりなんかしたら、ますますバカにしてくる人種だ。


 せめてもの抵抗で、無言を貫いていると樹くんが口を開いた。


「みなさんと小春さんが気心知れた仲だというのは、よく分かりました。けど、それなら、さっきからこの子が傷ついた顔してるの、気づかないふりするの止めてもらっていいですか? では、俺たちは急ぎますんで。情報提供ありがとうございました」

 

 樹くんは三人に向かって会釈した後、私の腕を引いて歩き出す。


 三人はポカンとした顔していたけど、私は何も言わずに樹くんについて行った。



 公園の隅まで移動し、チラリと後ろを振り返ると、三人は居なくなっていた。

 樹くんもその事に気付いたのか、歩みを止める。


「樹くん、ごめんね? あの三人、強烈だったでしょ? けど、バカにされてたのは私だけで、樹くんに何かしたわけじゃないから⋯⋯」


「それはわかってる。けど、なんか、めちゃくちゃ気分が悪かったから。きっと、三人とも小春ちゃんのことが好きなんでしょ。それで牽制し合ってる内に、小春ちゃんのこと、けなすのが当たり前になってる感じ。小学生かよ」


 樹くんは砂場にしゃがんで、その辺に落ちてた棒で、砂を突き回しながら言う。


「いやいや、幼稚園児の時からあの調子だから、好きってことはないよ。あの三人も好きな子にはもっと優しく出来るって! って言うか、もしかして樹くんは、私のために怒ってくれたの?」


 その言葉に樹くんは、呆れたような顔でこちらを見上げた。


「はぁ? さっきの俺のセリフ聞いてた? 他にどういう意図があるわけ?」


 確かにそれ以外の意図があるようには聞こえなかった。

 そうかそうか。樹くんは私のモヤモヤを感じ取って、かばってくれたのか。


「樹くん。私、樹くんのそういうところが好き! 好き好き!」


 ハイタッチしようと手のひらを見せると、樹くんも両手を挙げた。

 ぱちんと手のひらを合わせると、勢いのあまり、樹くんは尻もちをつく。


「最悪。服が汚れたんだけど」 


 樹くんは怒ったような口調だったけど、向けられた笑顔は優しく見えた。

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