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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
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42.ヴェルヴェルのボンボン


 将来に絶望するほどの病なら、ディア能力は下がると米谷さんは言った。

 けど、実際は桃葉さんのディア能力値は、持病の悪化で引退したとされる時期まで、安定して高い値を出している。


 朝倉統括の話では、桃葉さんは長く持病を患っていて、手の施しようがなく、引退直後に亡くなったと言うことだった。


 つまりそれは嘘ってこと? 

 米谷さんの言う、正義を貫く裏の犠牲って何?

 私も気をつけろって⋯⋯


「そんな怖い顔しないでよ。あと、絶対に目をつぶらないでね!」


 今度は眼圧を測るからと言って、彼は私の顔を両手で包むようにして、機械の上にセットした。 


「これって、風が目玉にビュッって当たるやつですよね? 苦手なんですけど⋯⋯」


 急に風が吹き付けられると、反射的に目をつぶってしまって、何回もやり直しになるんだよね。


「何か気が紛れるような楽しいこと考えててよ。小春ちゃん、そういうの得意でしょ?」


 米谷さんは機械の反対側から私の目をのぞき込みながら言う。

 楽しいことねぇ。


「そう言えば、米谷さんってヴェルヴェルの化粧水を使ってるんですよね? 最近、私も使い始めましたよ! 効果てきめんですね!」


 動画配信のコメントにも、肌を褒めてくれるものがあったんだよね。


「え? なんのこと〜?」


 米谷さんはとぼけたような声を出す。


「樹くんが言ってましたよ? 米谷さんが使ってるから、樹くんも使い出したって⋯⋯」


 それからたっぷり時間が空いて、彼はようやくその事を思い出したらしい。


「あ〜! ボンボンの化粧水ね! はいはい。使ってますとも、使ってますとも〜」

 

 なんだか、またワケのわからない事を言っているんだけど。


「ボンボン? ヴェルヴェルじゃなくて?」


「そうそう、ヴェルヴェル! いつもお世話になってます〜って樹くんに言っといて!」


 米谷さんとはそんな会話を最後にして、今月の検査は終わった。



 翌日。

 この日はハウンド型エイリアンの後始末として、再び出動命令が出た。

 

 なんでも、ハウンドがいったい何を嗅ぎ回っていたのか、全く見当がつかずに手詰まりとのこと。

 

 そこで、再び人海戦術を行い、何か手がかりとなる痕跡がないか突き止めようというわけだ。


 今日は私と樹くん、陽太さんと海星くん、冬夜さんと光輝くんのペアに分かれて、護城市内のフィールドワークをしている。


「小春ちゃんの家って、この近くなんだ。なかなか落ち着いた場所だね」 

 

 樹くんは住宅街を歩きながら、キョロキョロと周りを見渡している。


「そうだよ! 良いでしょ? 私の家はあっちで、今から行く公園がこっち!」


 ハウンドが嗅ぎ回っていたのは、主に公園と民家の植え込み。

 民家は一軒一軒、許可を取らないといけないから、まずは公園から捜査することになった。



「そう言えば、米谷さんが、ボンボンの化粧水使ってますとか、いつもお世話になってますって樹くんに言っといてとか、言ってたよ? 樹くんが使ってるのもボンボンってやつなの?」


 男性用の化粧水用語はよく分からないけど。


「あ⋯⋯⋯⋯そうそう。俺のもボンボン」


 樹くんは気まずそうに一言言ったあと、口をつぐんだ。

 なんだかあんまり触れてはいけないことだったのか⋯⋯ 


 それよりも問題は、桃葉さんのことだ。

 持病の話は嘘だったかもって、伝えた方が良いのかな?

 けど、じゃあ、真実は?と聞かれても、私は答えを持っていない。


 自分の中で整理をつけようとしている樹くんを、変に刺激するような気もする。 

 不確定な情報に、踊らされるのも良くないかも。  

 先にもう少し調べてみるか⋯⋯?


 真剣に頭をひねっていると、樹くんが口を開いた。


「小春ちゃんは、最近、光輝くんと仲良いの?」


 樹くんの声はいつもより少し硬く聞こえる。

 あれかな。スキャンダル警察かな。


「まぁ、普通に仲はいいと思うけど⋯⋯」

 

「そう」


 樹くんは短く一言返事をする。

 それからしばらく何かを考え込んでから、再び口を開いた。

 

「小春ちゃんは俺の恩人だから、一応忠告だけど、あの人は小春ちゃんの手に負える人じゃないから。六連星のことを抜きにしても、本気にならない方がいいと思う」


 私のハートが奪われないか、心配してくれているのかな。

 確かに光輝くんは、女子の扱いに長けているんだとは思うけど⋯⋯


「大丈夫だよ!」


「けど、この前、落ちそうになってたじゃん」


 即答したのに、それを上回る反射神経で返事をされる。


「まぁ、いいや。小春ちゃんも二学期からだっけ? 防衛に編入するんでしょ? 自分の目で確かめたら?」


 樹くんは、突き放すように話を終わらせた。


 六連星の活動と高校生活を両立するため、私は次の二学期から、防衛高校に編入することになった。

 実質あと二ヶ月程度か。


 米谷さんといい、樹くんといい、警告してくれるのは良いんだけど、どうしてこうも、ふわっとしているのか。


 なんとなく無言のまま、公園にたどり着くと、そこには見慣れた人たちがいた。

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