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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
40/112

40.作れ! テーマソング!

 それから数日が経った頃。

 とある話が舞い込んできた。

 

 六連星作戦会議室にて。


「みんな! 聞いてくれ! この度、僕たち第14代目六連星のテーマソングを作ることが決定した!」


 陽太さんは、天井に向かって拳を突き上げた。


「お〜! 私たちのテーマソングですか! ではまた、ヒーローソングの父と呼ばれた、三木三喜夫氏、通称『ファザー』が、熱く、ねっちり、ギットギトに歌い上げてくれるって事ですか!?」


 御年六十三歳の三木三喜夫氏は、デビュー当時から歴代六連星のテーマソングを歌っている。

 爽やか路線だった若かりし頃から比べると、年々その脂っこさが際立って来ている。


「ねっちりとギットギトは、普通は褒め言葉とちゃうんやけどなぁ」


 光輝くんは呆れたように笑っている。


「そうだ。先日のパーティーで広報部長が話をつけてくれたらしい。作曲は今回も片山剣山氏だ!」


「来たぁ〜! ヒーローソング界の重鎮が揃いましたね! 作詞は、作詞は誰がするんですか!? まさかまさかまさか⋯⋯」


 陽太さんの腕にすがりつくと、彼は誇らしげに頷いた。


「もちろん、僕たち六人が作詞担当だ〜!」


 陽太さんはテンションが高まるあまり、その場でピョンとはねた。


「うはぁ〜!」


 私も陽太さんと一緒にその場でピョンピョン跳ねる。

 そこに光輝くんも加わり、甲子園の優勝が決定した瞬間の球児たちのように喜ぶ。


 対して、冬夜さん、海星くん、樹くんは、いつも通り、その場で拍手するのみ。


 この温度差に我に返り、再び自分の席に戻る。


「この中に作詞の経験者はいるのか?」


 冬夜さんは腕を組みながら、メンバーを見渡す。

 誰も返事をしないので、全員未経験と。


「作詞に関しては、それっぽく仕上げれば後は広報部と片山先生の方で調整してもらえるらしい。あと、大事な事を言い忘れていた。今回の作詞は小春くんにリーダーシップをとってもらいたいそうだ。キミならそれっぽく仕上げられるだろうと」


「そうか。もう品定めが始まっていると言うわけか」


 陽太さんと冬夜さんが言うことを要約すると、広報部長は私がヒーローオタクだと知った上で、ヒーロソング作成の中心的役割を任せたいと言っていると。

 

 そして、その成果によって、私の三年後の所属部署が決まるかもってことね。


「そうですか。自信はありませんが、ご指名とあらば、最善を尽くしましょう。ではまずは最近のヒーローソング事情について、みなさんの共通認識を得たいと思います。しっかりとついてきてくださいね」


 テーブルに両肘をついて、あごの下で手を組み、みんなの顔を見渡す。

 目を輝かせる者、呆れる者、無表情な者⋯⋯五人はそれぞれの反応で私を見ている。

 

「まず初めに、六連星のヒーローソングは概ね三パターンの曲調が採用されています。①ダーク系 ②爽やか系 ③良い子のみんな系です」


「はいはい! 良い子のみんな系ってなんなんですか!?」


 光輝くんが挙手する。


「いい質問ですね。良い子のみんな系はいわゆる、〇〇体操、〇〇マーチと言った、幼児向け教育番組の系統をなぞった曲です。13代目六連星がこの系統です。タイトルは『エイリアンなんて怖くない』」

 

 ズバリと言うと、光輝くんと陽太さんから歓声が上がる。


「ただ、エイリアンなんて怖くないには、一つ問題がありました。曲の一番のサビ前に、レッドの『歯磨き忘れないでね』と言うセリフが入るんですが、これが二番だと、ピンクの『良い子は寝る時間よ』に変わるんです。これが頂けませんでした」


 あえて勿体つけるように話すと、五人が固唾をのんだのがわかった。


「このピンクのセリフが曲の発表と同時に炎上してしまったんです。ピンクの声があまりにもセクシーすぎて、別の意味に勘違いする野郎どもが湧きまして。『珊瑚ちゃんと同じ布団で寝れるわけがない』『えちえちすぎて草越えてサンゴ礁』などとよく分からない書き込みをして、珊瑚お姉さまを汚そうとしたんです」

 

 全く、マナーの悪いオタクにはため息が出る。

 五人は何とも言えない表情をしながら、静かに話を聞いてくれる。


「つまり何が言いたいかと言いますと、歴代のヒーローソングは、先述の三パターンを順番に繰り返しているんですよ。ですから、私たちが作るべきは、①番のダーク系です!」


 机をバンと叩いて立ち上がる。


「注意点はわかった。ではここからどうやって詞を決めようか」


 陽太さんは困ったように首を傾げた。


「みなさんが、歌詞にしたい単語をあげてくださったら、私が繋げて提出しますよ」


 さぁどんどんどうぞと、煽るように手招きをしながら、ノートを机に広げる。


「え? 今ここで発言すんの? 結構恥ずかしいんだけど」


 心底嫌そうな顔をしながら待ったをかけたのは樹くんだ。


「そう? 別に普通の言葉でいいんだよ? 『正義』とか『希望』とか」


 しかし樹くんの反応はあまり良くないまま。


「⋯⋯⋯⋯投票箱」


 海星くんはぼそっと呟いた。


「そっか! 好きな単語やフレーズを書いた紙を投票箱に入れておいてもらえたらいいんですね! そしたら、誰が何を書いたのか分かりませんから。ではみなさん、今日中にこの箱に案を入れておいてくださいね!」


 こうして、みんなから集めたアイデアをまとめたものが以下のとおりだ。



――――――――――――――

BRIGHT FACT


作詞:第14代目六連星

作曲:片山険山


眠れない夜は 空を見上げてごらん

俺たちは そこに必ずいる


明るい未来 切り開き

夜空に輝く 6つの星たち


今は遠くに 見えたとしても

高く 舞い上がれ

小さな笑顔 守るため


※信じて欲しい この奇跡

平和を願う 正義の心

いま この瞬間から 君はヒーローだ!

 

※※ともに 戦おう

力 勇気 分け合って

必ず 側にいる

見失わないよ 君の光を

だから手を取って それが俺たちのBRIGHT FACT

(FLY! HIGH! SKY! HI! × 8)


太陽の きらめき

海の せせらぎ


春を待つ ウサギたち

悲しげな その背中

俺たちに 何が出来る?


愛の花を 咲かせよう

大きな樹 水をあげよう


誰だって 掴みとれる

この痛み 乗り越えた先


※繰り返し


※※繰り返し


嗚呼 今夜だけは

君を強く 抱きしめていたい


――――――――――――――


 深夜のノリで作成したものの、ほとんど手直しなしで公式発表されることになった。

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