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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
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39.ハウンド型エイリアン

 6月24日。

 とうとう今日から私たち14代目六連星が、正式に活動を開始することになった。

 全国の書店やコンビニには、私たちが表紙になった機関誌が並べられ、テレビやネットニュースでも、連日取り上げられている。


 友だちや同級生たちからも、応援してるよだとか、サインをくれだとか、たくさんのメッセージが届いた。


 もちろん、秋人も、私の活躍を願ってくれている。



 寮の部屋から六連星の作戦会議室に行く途中の廊下にも、私たち六人のポスターが貼られていた。

 ちなみに、基地の正面玄関と広報部には、一人一人のポスターが額縁に入った状態で飾られている。


 ワクワクした気分で六連星の部屋に入ると、陽太さん以外の四人がいた。


 光輝くんはハイテンションで海星くんに絡み、冬夜さんがたしなめている。


 樹くんはいつも通り、澄ました顔で新聞を読んでいた。

 彼が感情を表に出したのは、パーティー当日の一度きり。

 翌日以降は普段と変わらない様子で振る舞っている。

 心配ではあるけど、そっとしといて欲しいって言われたし。


 そんな事を考えながら、ピンク専用戦闘服への更衣を済ませた。

 


 それから三十分近く経っただろうか、陽太さんが慌てた様子で入って来た。

  

「みんな、早速だが出動要請が出た。今から概要を説明したい」


 そのかけ声に、みんながテーブルに集まる。

 まさか、発足当日から事件が起こるとは。


「けど、緊急出動要請の放送は流れていませんでしたよね? あの時とは状況が違うんでしょうか?」


 あれだけけたたましいサイレンを、ここにいる全員が聞き逃すはずがないだろうし。


「それが実は妙な事が起こっているんだ。討伐対象は猟犬(ハウンド)型エイリアン。今朝、上守市の市街地での目撃情報が入り、現場に急行した隊員がハウンドの群れを確認。それ以降、危険区域、警戒区域はおろか、注意区域の住民からも複数の目撃情報が寄せられている」


 注意区域と言うことは、私の実家の辺りにまでエイリアンが出たって事だ。

 だいたいのエイリアンは危険区域内で駆除されるから、注意区域までエイリアンが来るのは比較的珍しいことなのに。


「監視システムには引っかからなかったということか」


 冬夜さんは深刻そうな表情をする。

 確かに、今までのエイリアンなら監視型ドローンが、その動きを追っていたはずだけど。


「さらに妙なのが、ハウンド型は人間に攻撃することはなく、何かを探すかのように、民家の茂みや公園などを徘徊しているそうだ。何かを仕掛けてくる前兆かもしれない。目撃情報を頼りに、しらみ潰しに倒す必要がある。人海戦術というわけだ」


 正面のモニターに、ハウンドが目撃された場所の位置情報が表示される。

 城の周囲の公園以外は、見事にばらけているし、数も多そうだ。


「二人一組、三班に分かれて行動しよう。僕たちの担当エリアは城周辺の密集地帯だ」


 陽太さんの指揮に従い、出動した。

 

 速やかに車庫に移動し、サイレンカーの元へ急ぐ。

 するとそこにはド派手な車が停まっていた。

 正面から見て、赤、黄、緑、青、ピンク、黒に塗られた車体。

 虹の輪をくぐった後みたいな色使いだ。

 これが六連星専用サイレンカー。


「かっこいい⋯⋯」


 内装は黒いレザーが貼られていて、少しリッチ仕様?

 座り心地もパワーアップしているかも。


「今日は小春が助手席か。頼んだぞ」


 運転席に座る冬夜さんから、放送用のマイクを渡される。

 夢中になっている内に、いつの間にか助手席に座っていたらしい。


「はい! お任せください!」


 元気よくマイクを受け取り、スイッチを入れる。


「緊急車両が通ります。恐れ入りますが、道をお譲りください。現在、上守市および護城市広域にて、エイリアン発生中。ご注意願います。ご協力頂きありがとうございました」

  


 上守城周辺にたどり着くと、既に住民の避難は済んでいた。


「ここで三組に分かれよう。僕と海星、光輝と樹、冬夜くんと小春くんだ。何かあれば適宜インカムで連携を」

 

 ここからは、過酷な犬探しが始まった。


 ハウンドは茂みを嗅ぎ回っていると聞いたけど、ざっと見渡したところ、生き物もいなければ、ガサゴソと動く怪しい茂みもない。


「一箇所ずつブレードで突くしかないな」

 

 冬夜さんはため息をついたあと、植え込みに近づいて行った。

 腰に挿していたブラック仕様のブレードを抜き、植え込みをグサグサと突き刺す。


 ちなみに私のブレードも、少し前からピンク仕様になった。


 私も冬夜さんにならって、犬が隠れられそうな場所をつついていく。


「迷子の犬を探すときって、名前を呼んだり、好きなオヤツやおもちゃで誘い出したりしますよね? エイリアンの好物って何でしょうね」


 エイリアンが食事をしているところも、楽しそうに遊んでいるところも想像がつかない。


「さぁな。ただ、ハウンドのDNAが加えられているのだから、本能的な部分は一緒なんじゃないか? 例えば、逃げるものを追いかけたくなるとか」


「なるほど⋯⋯」


 頭をひねり、考えを振り絞る。

 猟犬といえば、銃を持った人間と一緒に森の中に入って、鳥を捕まえたりするんだよね。

 

「じゃあ、犬笛が聞こえるとか、銃声に反応する⋯⋯とか?」


 冬夜さんはうーんと考え込む。


「試してみるか」


 冬夜さんはインカムでみんなに作戦を伝えた。

 みんなそれぞれ近くの塀に登ったところで、作戦開始だ。


「じゃあ、小春。撃ってみろ」


 広場の地面に向かって弓を構える。

 この弓はメテオシャワーという名前で、私の専用武器だ。

 今回はただのデストロイヤーを撃つんだけど、使い所によっては、追加効果も付与出来る仕様となっている。

 開発部にお願いして、弓の両端からピンク色のグリフォンの羽根が生えたみたいな、可愛らしいデザインにしてもらった。


「遠くまで音が届くように、強めの火力で⋯⋯」


 ひょいっと矢を放つと、目の前の地面に隕石が落ちたかのように、すさまじい爆撃音が轟いた。

 地面にぽっかり穴が空き、煙が上がっている。


 しばらくそのまま様子を伺う。


「こちら、鯰江(なまずえ)。交戦中のハウンドが、戦闘を離脱し南下中」


「こちら、天童(てんどう)。同じくハウンドの群れが北上中」


 上級部隊の隊長たちから、続々と報告が挙がる。

 それからまもなく、ハウンドたちが姿を現した。


 胴体や脚、首や、顔。全てが長くて細身のボディをしている。

 まさしくハウンドのDNAを取り込んだエイリアンだ。


 犬型のエイリアンだから、可愛いのかもしれないと思ったのは大間違いだ。

 毛がなく、灰色っぽい皮膚だと、それだけで不気味である。


 見たところ牙も生えてそうだけど、どうして人間を襲ってこないんだろう。


 ハウンドたちは、私が撃った矢に集まっている。

 色んな方向から匂いを嗅ぎ回っているみたい。

 どんどんハウンドが集まり、次々と穴に入って行く。


「今だ! 集中砲火!」


 冬夜さんの合図で、海星くん以外の五人で集中攻撃をかける。

 ピュンピュンという光線銃の音やグレネードの爆撃音が響く。

 ハウンドの数は瞬く間に減っていき、全てを討伐することが出来た。

 

 後は中級隊員の部隊が狩り残しがないかを見回ってくれるそうなので、私たちは引き上げる事になった。


 私たち六連星のデビュー戦は華々しくスタートを切った。

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