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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第二章:恋のはじまり?(六連星始動準備期間)
30/112

30.夢はでっかく


 翌日、この日は防衛隊の基地がある護城市の広報誌の取材があったので、六人揃って会場である会議室に移動してきた。

 

 会議室にセットされた背景は、白とスカイブルーのチェックの柄に、防衛隊公式キャラクターのアトモちゃんのイラストとAtmosphereのロゴが印刷されたもの。

 防衛隊の記者会見でよく見るやつだ。 

 

 そして、驚くべきは、その背景の前にアトモちゃんが立っているということ。

 私が以前、一緒に撮影したぬいぐるみバージョンではなく、自分で歩いて手足を動かしている、正真正銘、本物のアトモちゃんだ。


「あっ! アトモちゃん〜!」


 近づき手を振ると、短い腕を前に突き出して手を振ってくれる。

 ちなみに羊なので手の先は(ひづめ)

 これは可愛すぎる。


「それでは六人でのお写真を一枚撮影させて頂いた後、お一人お一人にインタビューをさせて頂きますね」


 市の担当者の方は、今日の流れを説明してくださった。


 アトモちゃんを中心とした、六人での写真撮影はスムーズに終わり、すぐに個人のインタビューが始まった。


 インタビュー内容は、氏名、年齢、出身地、性格、趣味などなど。

 今は、ポジションと専用武器についての質問に移ったところ。

 インタビュアーは三十代くらいの女性の方で、アナウンサーのようにハキハキと話すお方だ。


「この武器は〈ホーミングオウル〉という、スコープ付き高精度ライフルなのですが、殺傷能力が高い通常の弾丸の他に、発信器を発射することが出来るので、逃走するエイリアンの追跡に役立ちます」


 冬夜さんは、専用武器のマークスマンライフルについて解説した。


 冬夜さんのディア能力を非殺傷性の弾丸に変換し、エイリアンの皮下に埋め込むことで、レーダーで追えるようになるんだよね。

 冬夜さんは、よくそんな方法を思いついたな。


「次は、今後三年間の活動目標を教えてください。それではレッド、お願いします」


 話を振られた陽太さんは、もともとぴしっとしていた姿勢をさらに正した。


「四十年間、エイリアンによる襲撃を受け続けた我々ですが、奇跡の鉱石デザライトの発見に始まり、武器の性能、エイリアンの研究、戦術の考案が進んだことで、今の均衡を保つことが出来ています。すべては、先人たちのたゆまぬ努力の結晶です。僕たちはそれを引き継ぎ、みなさんにより明るい未来をお見せ出来るよう、精一杯努めます。僕たちの仲間であるピンクは、類稀なる能力を秘めています。彼女の今後の活躍にもぜひ期待してください!」

  

 陽太さんは百点満点の回答をしたあと、巨大な爆弾を落っことした。

 満面の笑みでこちらを見ていらっしゃるけど⋯⋯


 みんなも、私の顔をみながら拍手してくれている。

 

「ありがとうございます! 頑張ります!」


 街の人の声援に応える政治家のように、片手を挙げてみんなの顔を見回す。

 

「リーダーや仲間たちから期待されるピンクですが、どのような目標をお持ちでしょうか?」


 インタビュアーの方は期待のこもった眼差しで、私を見つめている。


「私はお母さんのお腹の中にいる時に、護城市に移り住んで来て、それから一度も殿宮の県境を越える事なくここまで来ました。毎日UFOの存在を意識しながらの生活に、正直言うと不気味さだって感じました。けれども、いつだって防衛隊が、六連星が、私を守り、勇気を与えてくれました。だから私は、この街に住む人たちを守り、勇気づけられるヒーローになりたい。いつか、UFOを追い返して、本物の空をみんなに見せてあげたいです!」


 ガタンと椅子から立ち上がり、右手で拳を作って天井に向かって突き出す。

 おだてられたら調子に乗るクセは相変わらず。

 一度口から出て誰かに届いた言葉は、もう引っ込めることは出来ない。

 勢いでこんな大口を叩いて、上層部からお叱りを受けるんじゃ⋯⋯


「小春、よく言った。それでこそ、デストロイヤーだ」


「やっぱ、小春ちゃんはスケールが違うわ。それくらい振り切ってくれてたほうが、俺らもやりがいがあるってもんやで」


「⋯⋯⋯⋯追い返そう」


「僕たちの活動の最終目標は、そこにありますからね」


「小春くん! 僕は今、猛烈に感動している!」

 

 冬夜さん、光輝くん、海星くん、樹くんに、陽太さん。

 みんなは決して私の目標を馬鹿にしたり、笑ったりしなかった。

 むしろ、みんなのスイッチが入ったと言うか、けど、どこかホッとしているようにも見えるような。


「僕たち新星六連星の活躍をぜひご期待ください!」


 陽太さんは白い歯を見せながら、インタビュアーのお姉さんに笑いかけたのであった。

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