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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第二章:恋のはじまり?(六連星始動準備期間)
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17.命の恩人

 冬夜さんに助言を貰いながら、辺り一帯の小型・中型エイリアンを全滅させることが出来た。


 大型エイリアン討伐の方も佳境に入っている様子。


 陽太さんの専用武器の〈ボルケーノサブマシンガン〉は火を噴き続け、海星くんは目にも止まらぬ速さで、腕や触角を削ぎ落として行く。


「みんなが大型と戦っているときって、私たちは何をすればいいんでしょうか?」


 スコープを覗き込みながら、東の方を見ている冬夜さんに助言を求める。


「今回のように大型撃破目前、まだこの部隊で対応すべき敵が残っているという場合は、周囲の警戒と次の作戦のための情報収集だな」

 

「あちらはもう手が足りてそうですもんね。だから、この間に次の作戦のことを考え始めると」 


「あちらの戦況が思わしくない場合は、牽制や撹乱のためにこのまま遠距離から追撃する事もあれば、ブレードに持ち替えて近接攻撃手(メレー)として加勢する事もある。小春には海星の動きが見えるか? あれを巻き込まないように攻撃するのは、かなりの熟練度が要求される。陽太と樹も、海星を巻き込まないよう、基本的には腹部から脚までの範囲しか攻撃せずに、海星が着地するタイミングでは、一度銃口を自分たちの足元に向かって降ろしている」


 大型マンティスの湿った皮膚は、ゴムのように弾力があるみたいで、一回の攻撃で簡単に傷がつけられるものでは無いらしい。

 攻撃回数を重ねて少しずつ戦力を削ぎ、体力を奪っていく必要がある。

 手数が多いと言うことは、それだけこちらの連携にも丁寧さが求められるということのようだ。



「終わったぞ。一度集結して次に向かおう」


 大型マンティスがバタンと横向きに倒れ、辺りに土埃が舞う。

 冬夜さんが四人の元に駆け寄るので、私もすぐに後を追った。

 

「みんなよくやった。隣の大型は中級部隊のみで撃破可能とのことだ。一つ飛ばして南南東の集団を討伐する」


 冬夜さんは、インカムに飛んできた指揮官の指示を復唱した。


「海星いけるか? 相当消耗しただろうが⋯⋯」

  

 海星くんの疲労を気遣う陽太さんに対して、顔色一つ変わらない海星くん。

 汗はかいているみたいだけど、そこまで呼吸が上がっている様子もないし、一体、どんな体力をしているのか。


「⋯⋯⋯⋯先に⋯⋯⋯⋯デストロイヤー⋯⋯⋯⋯」

 

 海星くんはこちらを見てコクンと頷いた。

 

「そうですね。私が暴れている隙に、少し休めるといいですね」

  

 その解釈で正解だったのか、海星くんはコクンコクンと頷く。


「いや! 普通、そんなんで伝わるかいな!」


 光輝くんのツッコミが入ったところで、次の現場に急行した。



 現場には既に十二名の中級部隊がいて、小型・中型マンティスを、ブレードやライフルで相手している所だった。


「赤木隊現着! 小型・中型討伐は、一旦こちらで預かりたい。みんな、下がれるか?」


 陽太さんが声をかけ、中級隊員たちが戦闘から離脱する。


「陽太さん、あれだけの大群をどうするつもりですか?」


 中級部隊の隊長さんだろうか、同じ年くらいの男性が、不思議そうに首を傾げながら陽太さんに駆け寄って来た。


「こちら期待の新星、桜坂小春くんだ。広範囲攻撃なら彼女の右に出る者はいない。ただし、火力が強すぎるから、近づかないように気をつけてくれ」


 陽太さんは、隊長の大田原おおたわらさんに私のことを紹介してくれた。

 

「広範囲攻撃⋯⋯ですか」 


 大田原隊長は、ますます不思議そうに首をかしげる。

 それもそのはず。

 防衛隊の武器に、広範囲攻撃という概念は存在しないから。


 冬夜さんのGOサインが出たので、弓を構え、弦を思い切り引いて、デストロイヤーを放つ。


 閃光が見えるのと同時に、矢の落下地点で爆煙が上がった。

 耳をつんざくような爆発音と、地響きが聞こえてくる。


 さっきの火炎放射よりも、威力と速度が上がっているような。

 

「はい〜? なんですかこれは? 飛んで行ったのは矢ですよね? グレネードではありませんよね?」


 大田原隊長は、目玉がこぼれ落ちそうなくらい目を見開き驚いている。


「俺たちの武器と何かが違うのか?」

「いや⋯⋯見た目は同じように見えるけど⋯⋯」


 後ろで様子を伺っている大田原隊の隊員たちも戸惑っている。



 詳しい説明は後にする事にして、先ほどの集団の対処と同じように、大多数の小型・中型を焼き払えたところで、再び作戦が動いた。


「大型の処理は俺たち赤木隊が担当する。大田原隊は散り散りになった小型・中型の処理を頼む」


「ラジャー!」


 冬夜さんの指示に、大田原隊のみなさんは四つの小隊に分かれて、マンティスたちを追った。


 私の役割は先ほどと同じで、大型討伐の邪魔が入らないように、小型と中型を処理することだ。


 火力をそこそこに抑えた矢で、小型と中型の頭を撃ち抜いていく。

 

 調子よく数を減らしながら周囲を警戒していると、視界の端に大田原隊の三人組が目に入った。

 二人はブレードを、一人はライフルを使い、スムーズな連携で次々と中型を討伐していく。

 

 そこに、北西の方角から中型マンティスの群れが近づいて来るのが見えた。

 あちら側で戦っている上級部隊から逃れて来たんだろう。

 遠くの方から、スカイブルーの戦闘服を来た人が走って来るのが分かる。


「大田原隊第二班へ、こちら赤木隊、桜坂。北西から中型マンティスの大群が飛来しています。後方を警戒してください」


 インカムを使って声をかけるも、三人組からの応答はない。

 中型の攻撃が激しすぎて、それどころじゃないんだ。


「こちら大田原。北西からの敵の飛来を確認。第二班、一時後退せよ」 

 

 大田原隊長が私のメッセージを拾い、再度警告してくれる。

 

 急いで矢を放って敵を撃ち落とそうとするけど、後ろから迫って来る上級隊員に当たってはまずいから、火力は上げられない。

 地道に倒すには数が多すぎる。


「隼司! 明里! 湊! 逃げろ!」


 大田原隊長が叫んだところで、三人は状況を把握出来たみたいだ。

 こちらに向かって一目散に逃げてくる。


「撤退を支援します!」


 羽根を高速で羽ばたかせながら三人を追いかけて来るマンティスを正面から迎え撃つ。

 

「きゃあっ!」


 明里さんと呼ばれていた女性隊員が、転倒してバランスを崩してしまった。

 回転して受け身を取りながら、立ち上がろうとしているけど、間に合わない。


「危ない!」


 腰の鞘からブレードを引き抜き、マンティスの鎌を受け止める。


 恐らく冬夜さんが後方から銃で援護してくれているみたいけど、この一体を止めたところで囲まれるのは時間の問題。


「小春! 下がれ!」


 冬夜さんの指示通りにしたいけど、マンティスの鎌とブレードが絡み合って、無傷では離脱できそうにない。


 もう終わったと思ったその時、目の前を爽やかな風が吹き、青々とした葉っぱたちが吹雪のように通り過ぎていった。

 緑のカーテンが私のことを隠してくれているのか、標的を失ったマンティスたちは、あてがなくなったみたいに彷徨い始める。


「何やってんの。死にたいわけ?」


 助けに入ってくれたのは――樹くんだった。

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