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102.願いの力

 樹くんとの感動の再会を果たした私は、六連星の作戦会議室に帰ってきた。


 もう二度と戻れないと思っていた場所に、十日足らずで帰ってこれるなんて、夢みたいだ。


 会議の参加者は、私たち六連星の六人と米谷さん、そして流星くんだ。


「みなさん、本当にありがとうございました。クリスタルフロッグがあんなに強いなんて、思ってもみませんでした。どうやってあんなに増やしたんでしょうか?」


 確か、私たちが拾った卵は百個ほどだったはず。

 それに、クリスタルフロッグのエサはデザライトだから、私がいなくなってエサが減ってしまったかと思ったのに。


「五万は光輝くんのハッタリだけどね。防衛隊員全員と、街の人たちにも協力をお願いしたんだ。みんな、快く手伝ってくれたよ。十七歳の少女がエイリアンの生け贄に捧げられて、この星を守ってくれた。今もあのUFOの中で戦っているってね」


 米谷さんは得意げに下手くそなウィンクを飛ばしてくる。


「街の人の協力を得るのに、樺山が一肌脱いでくれてん。あいつが人々の心に訴えかけるようなチラシや動画を作って、世界中に配信した。おかげで、わざわざ海外から『自分たちに出来ることはないか』って、駆けつけてくれるボランティアも大勢おってんで」


 そう語るのは光輝くん。

 広報部の樺山さんが大勢の人の心を動かしてくれたんだ。


「あと、忘れてはならないのが、秋人くんと小春くんのお母さんだ! あの二人のディア能力値は桁外れだった!」


 陽太さんは白い歯を見せて笑う。


「えー! 秋人とお母さんが!?」


 そうか。元来、双子はディア能力が高いって最初に聞いたんだった。

 それに、お母さんの遺伝子が私の能力が高いそもそもの理由だったんだ。


「フローラルブーケのメンバーも、先代の六連星の先輩方も、動画配信やSNSで協力を呼びかけて、芸能界でも一大ムーブメントが起こった。けれども、一番人々の心を動かしたのは、小春のあのメッセージだろうな」


 冬夜さんは腕を組みながら、含みのある笑顔で笑う。

 そうか。フローラルブーケのみんなも、協力してくれてたんだ。

 それに、珊瑚お姉さまや朔太郎お兄さまたちも⋯⋯


「そんなにもたくさんの人が力をくれたんですね。けど、私のメッセージって何ですか?」


 その言葉に、何故かみんな、笑顔を浮かべる。

 一人だけ反応が違うのは樹くんだ。

 顔を真っ赤にして、口元を手で覆っている。


「⋯⋯⋯⋯これ」


 海星くんから差し出されたスマホを確認すると、私のキラスタのアカウントが表示されていた。

 投稿なんて、一度もしたことないけど⋯⋯


「えーなになに。『樹くん、勝手に居なくなってごめんなさい。けど、私が行かないと、この星が滅びるって脅されちゃったから。本当は会いたい。会えなくても、ずっと大好きだよ⋯⋯⋯⋯』って、ギャー!! なにこれ!? どうしてこんなところに投稿されてるの〜!」


 あまりのわけの分からなさに、顔を覆い隠しながら、頭を振り乱す。


「恐らく、UFOからメッセージを送信した結果、何らかの妨害を受けて、こっちのアカウントに飛ばされちゃったんだろうね〜良いなぁ〜! とっても青春っぽい!」


 米谷さんはウシシとイヤらしい笑みを浮かべる。

 

 どうしよう。穴があったら入りたい。


「けれども、この小春くんのメッセージが人々のヒーローマインドを奮い立たせたんだ! もちろん、僕たちだって、心を強く打たれた!」


 陽太さんは椅子から立ち上がり、拳を天に突き上げる。

 

 確かに一連の投稿には、ものすごい数のコメントが届いている。


『こはちゃんは、今もUFOの中で、一人戦ってるんだよね』

『これは純愛』

『防衛隊の基地の前で、献血ならぬ献涙? やってる。よくわからないけど、みんなも協力しよう!』


 あぁ⋯⋯恥ずかしい。

 とっても恥ずかしいけど、それ以上に、あったかい。


「ごめんね、樹くん。もらい事故しちゃったよね⋯⋯」


「別に、小春ちゃんが奇想天外なのは、今に始まったことじゃないし。こっちは、それも込みで受け入れてるから」


 相変わらず顔を赤くしたまま、そっぽを向いている樹くん。


「ヒューヒュー」


 散々みんなに、はやし立てられたのだった。

 

 

 新たに仲間として迎えられた流星くんは、海星くんと共に実家に帰るそうだ。

 これからゆっくりと家族の時間を取り戻して行くとのこと。

 

 アギル星のゴーゥヤさんは、元々アギルにも居場所がなかったからと、こちらで静かに暮らすらしい。


 私をUFOに送り込んだ朝倉統括は、飯島本部長によって、退任に追い込まれたとのこと。



 こうして、私たち14代目六連星は、UFOを追い返し、殿宮県の空をみんなに見せるという目標を達成した。 

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