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14 戦闘前夜の寝室で

「いやぁー食べた、食べた。本当にあのメリンダさんの料理はうまいなぁー。」

 ブライアンは大いに満足していた。


「俺、金あったらあのメリンダさんを個人的に雇いたいよ。」


 ケインはバカなことをほざいているブライアンの言動に溜息をつくとボスッとソファーに蹴り倒した。

「馬鹿なこと言ってないで寝ろ。俺は先にシャワーを使うぞ。」


「ああ、お先にどうぞ。」

 ブライアンはソファーに仰向けに寝転びながら気だるげに手を上げると、ケインはすぐに浴室に消えていった。

 ケインが浴室に消えてしばらくするとドアをノックする音が聞こえた。


「どうぞ。」

 ブライアンが返事をするとメイが毛布とお盆を抱えて部屋に入って来た。


「お待たせしました。」


「ああ、助かる。」


『もう洋服を着ちゃってるしなぁー。俺かケインのどちらかがソファーで寝るしかないか。』

 ブライアンが遠い目で考えごとをしているとメイがおずおずと言い出した。


「あのブライアン様。」


「ああ」

 ブライアンはメイに視線を向けた。


「ベッドメイキングをしたいので、一旦そのソファーの上から退いて頂けないでしょうか?」


「へっ、ここ?」

 ブライアンは思わず、自分が仰向けに寝ているソファーを指差した。


「はい。」

 メイはにっこり微笑んだ。


 ブライアンは納得できないまでもソファーから腰を上げて場所を空けた。


 メイは素早くソファーに歩み寄ると背もたれを水平にし両肘を伸ばす。


 その後、すぐにシーツを敷いて枕と毛布をセットすると一礼して部屋を出て行った。


『えっ、このソファーってベッドだったの?』


 ブライアンが呆けているとシャワーを終えてケインが部屋に戻ってきた。


「やっとベッドを入れてくれたんだ。じゃあ今夜はブライアン、お前そっちで寝てくれ。」


「あっ、あー。」


「なんだ酒もあるじゃないか。」

 ケインは嬉しそうにテーブルに載っている酒を傍に置いてあったグラスに注ぐ。


 芳醇な香りが仄かにあたりに広がった。


「さっきからどうしたんだ、ブライアン。」


「いや、なんでもない。」


『このソファーの使い方を知ってさえいれば、尻つきあわせて男二人でベッドを使う必要がなかったんじゃないか。』

 とブライアンは心の中で思った。


 でも今そのことをこれ以上突き詰めて考えると落ち込みそうだ。


 ブライアンもケインにならってグラスに酒を注ぐ。


『かなりいい酒だ。』


「なあ、ケイン。ツバァイ家ってなんだ?」

 ブライアンはグラスの酒を飲みながら呟いた。 


「やぶからぼうになんでそんなことを聞く。」


「いや、ちょっと不思議に思ったもんでな。」


「何か気になることでもあるのか、ブライアン。」

 ケインがゆっくり酒を味わいながらブライアンに質問した。


「アインハルト家にしろドライデン家にしろ、普通、使用人はあそこまで強くない。何かあるのかツバァイ家は?」


 ケインは酒のグラスをゆっくりまわす。

 芳醇な香りがあたりに広がる。


「さあな。俺もそれほど詳しくない。ただ東の砦を守っているのがアインハルト家だったんだが、王都に近いせいか昔はあまり武力に秀でたものがいなかった。対して昔から北の砦を中心に治めていたのがツバァイ家だ。

 北は裕福な土地ではなかったせいで武闘の名門が多かったらしく、使用人もその流れを受け継ぐものを代々雇うのが慣習らしいというのを聞いたくらいだな。」


「お前の考えだとその流れをくんだ名門のものが多数いたはずだから、あれほど使用人が強いんじゃないかといいたいのか?」


 ケインはグラスの酒を飲む。

「そう食いつくな。あくまで俺は聞きかじった程度だ。どこまで本当かはわからん。別にそこは興味なかったんで真面目に調べたこともなかったからな。詳しく知りたいんならおやじに直接聞いてみろ。」


「なんでここでお前のおやじが出てくるんだ。」


「なんでか知らないがやたらツバァイ家を敵対視してたからな。」


「ふーん、なるほどねぇ。そう言えば話は変わるがケインがメガネ萌えだとは知らなかったぞ。」


「なんだそのメガネ萌えとは?」


「はぁあー自覚ないのか。この別荘に戻ってきた時、やたらレイチェル嬢のメガネ姿を誉めてた

じゃないか。」


「ああ、たしかにレイチェルのメガネ姿はいい。ただあの時思ったことはレイチェルがメガネをしていないと、あの正面玄関にあるご先祖様の肖像画と瓜二つだったんだ。それがなんだか俺以外の人間にレイチェルが触られているみたいで、非常に不愉快だったんだ、くそっ。

 俺がレイチェルと結婚したあかつきには一番最初に、あの肖像画をぜったいに外してやる!」

 ケインは言い切るとその時のことを思い出してしまい、さらに不愉快な気分になって酒を一気に煽った。


『えっ、なんだその理由。メガネ姿が良いとか言って口説いてたのは一体何だったんだ。』


 ケインはさらに酒をグラスに注ぐとまた一気に煽る。

「なんだかブライアン、お前のせいで酒がまずくなった。俺は非常に不愉快だからさきに寝る。」

 ケインはそう言うとグラスを置いてベッドに横になった。


「ア・・おい。」

 ブライアンは唖然とケインを見た。

 

『最近のケインはいつも俺の創造のななめ上をいくなぁ。』

 ブライアンは布団をかぶってベッドに横になっているケインをチラッと見てから酒のグラスを傾けた。


「くそっ、ケインのやつ。さきに全部、一気飲みしやがったな。いい酒だったのに。しゃーない俺も寝るか。」

 ブライアンもソファーベッドに横になった。

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