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13 殲滅作戦参加メンバー

「今、なんて言ったんですか?」

 ケインは思わず聞き返した。


 私はケインを真っ直ぐに見ながらきっぱりと言い切った。

「ですから私とメイ、セバスチャン、メリンダも一緒に戦います。」


私がそう宣言すると三人がびっくりした表情を浮かべすぐに反論した。


「「「お嬢様はダメです。」」」

 セバスチャン、メリンダ、メイの三人が断言する。


「あなたが戦うなど論外です。」

ケインも強い口調でそれに加わった。


「私は魔法を使えるんです。直接攻撃は難しいかもしれませんが、遠距離からみんなを援護することは出来ます。」


「魔獣は俊敏だ。遠距離だからといって危険がないわけじゃない。」

ケインが真剣な顔で反対した。


「私は防御も完璧です。それにみんなが戦っているのに、私だけ安全な所で傍観など嫌です。」

 まったく諦めようとしない私をどうにかしてやめさせそうとセバスチャンたちが色々と説得の言葉を上げるが今回はみんなと一緒に戦いたい。


「ではどのくらい魔法が使えるのかを見せて下さい。」


「「「ブライアン(さま)!!!!」」」

ケイン、セバスチャン、メリンダ、メイの四人がブライアンを睨む。


『この場に一人でも目線で殺せる魔法使いがいたら、俺即死だな。』


「どっちにしろ、俺達がやられたらレイチェル嬢も助からないんだ。彼女の魔法がどのくらいなのかを見せてもらえばいい。もちろん戦力にならない程度なら当然外れてもらう。下手にいても弱いなら足手まといになる。それならいないほうがいい。特にケインがレイチェル嬢を気にして戦いに集中出来ないのが、俺としては一番困る。」


「おい、ブライアン。」

 ケインが俺を睨んできた。


「本当に優秀な魔法使いなら俺は誰が反対しようと戦列に加わってもらう。全員の生還率が格段に上がるからな。たとえケイン、お前が反対してもだ。」

 ブライアンがケインを見た。


 ケインはブライアンを射殺さんばかりに人睨みしたあと、ふと力を抜く。

「わかった。ただし実力が少しでもないと判断したら、別荘で待っていてもらう。」

 ケインがレイチェルのことを心配そうに見つめながら諦めたように言った。


「分かりました。 それでけっこうです。」


「ではブライアン様、空き地でどうでしょうか?」


「ああ、そうしよう。」


 私はみんなを連れ庭に出てから、さらに誰もいない空き地を目指した。


 ブライアンが空き地に着くと真剣を構えた。


「おい、ブライアン。」

 ケインが咎めようとする。


「問題ありません。」


「どけ、ケイン。」

 ケインがしぶしぶ身を引いた。

 でもすれ違い様、ブライアンの耳元で囁く。

『キズでもつけてみろ。 後で八つ裂きにしてやるからな!』


『おい、こえーぞ、それ。』

 ブライアンは溜息をついて身構える。


「どうぞ。」

 私は返事と同時に、魔獣豚の時のように防護壁になるものを展開した。


『たて・タテ・盾・たて・タテ・盾』

 今回は自分よりだいぶ前方に展開する。


 ブライアンが真剣を手に私に打ち掛かってきた。


 その瞬間、私の前方の盾に激突する。


 ゴーン


 ベキィ


 ドシャ


 ブライアンは見事に壁にヒキガエルのように張り付いた。


「「「「ぶっはっははぁーーー」」」」

 ケイン、セバスチャン、メリンダ、メイが大笑いしている。


 特に、大うけしたケインは笑い過ぎで腹を抱えていた。

「ブライアン、お前。」


 あまりのことに呆気にとられて動けなくなっていた私はみんなの笑い声に慌ててブライアンに駆け寄った。

「あの大丈夫ですか?」

   

 ブライアンは痛そうに殴打した顔と鼻血を手で押さえながらも大丈夫だと身振りで表現する。

「いひゃーいけど・・・大丈夫ですよ。 だい・・・ひょうぶ。」


 私は大丈夫と連呼するブライアンに駆け寄ると顔のケガと鼻血を治癒した。


『ちゆ』

 ケガが軽かったせいか即効で治ってしまう。


 それを見ていた、ケイン、セバスチャン、メリンダが目を瞠った。


 ブライアン自身も驚いている。


「なんでそれで治るんだ?」

 ケインがびっくりして声をかける。

 

「えっ、治癒ですけど。」

 私はみんなが何に驚いているのかわからなかった。


「「お嬢様、体調は大丈夫ですか?」」

 セバスチャンとメリンダが心配そうに私を見る。


「別に大丈夫ですけど? 何をそんなに心配しているの?」


「お嬢様、普通治癒にはどんなものでも膨大な魔力が必要なんです。あれだけのけがを瞬時に直して、本当になんともないんですか?」


「ええ、もちろん。さすがに前回瀕死の彼らを治した時は結構大変でしたけど、次の朝には疲れもとれましたよ。」


「「お嬢様、それは本当ですか。」」


「ええ、なんならメイに聞いて見て頂戴、メイも見ていたから。」

 私の答えに四人はメイを見る。


「はい、間違いありません。」

 メイは力強くうなずいた。


「決まりだな。」

 ブライアンが言う。


「わかった。だが後方支援だ。これは譲れん!」

 ケインが言い放つ。 


「メイ、あなたがお嬢様を守るのよ。」

 メリンダがメイに言い聞かせている。


「もちろんです。おかあさま。」


「お前にお嬢様は任せる。」

 セバスチャンもメイの目を見てうなずいた。


 メイが感動して目をうるうるさせている。


 私は確認の為に口を開く。

「私も参加でいいのね。」


 全員、無言でうなずいた。


 その後ブライアンとメイが対戦した。


 メイの得意分野は短剣と弓矢だ。


 魔獣相手なら弓矢が妥当だろう。


 メイが弓をとりに別荘に戻ろうとしていたので、私は魔法で弓矢を出した。


『ゆみや・ユミヤ・弓矢』 


「メイ、これ。」


「ありがとうございます。お嬢様。」


「「そんなことも出来るのか。」」

 ケインとブライアンが眼を剥いている。


 二人は何に驚いているのだろう。


「ブライアン様、的はあの木でよろしいでしょうか?」


「ああ。」


 ブライアンがうなずくと同時にメイは走りながら、5本の弓矢を全て真ん中に命中させた。


 ブライアンとケインが目を丸くしている。


「いかがですか?」

 メイがブライアンに問う。


「あっ、ああ、文句なしだ。」

 ブライアンが唖然としながら了承した。


「では、次は私でしょうか。」

 メリンダは短剣を六本、どこからか取り出すと、先程、メイが的に射した弓矢を投げた短剣で全て弾き飛ばした。


「「お見事!!」」

 思わず二人は手を叩いていた。


「次は私でしょうか。」

 セバスチャンがおもむろに進み出た。


「どちらかにお相手をお願いします。」

 セバスチャンが剣を構えて言う。


 ブライアンが剣を構え前にでた。


 二人の打ち合いが始まった。


 最初は手合せ程度だったのがだんだん真剣になってくる。


 ブライアンはやはり思っていた以上の剣の使い手のようだ。


 セバスチャンの表情がかなり真剣になっている。


「そこまでだ!!」

 ケインが一喝した。

「それ以上やると本当の殺し合いになる。」


 ブライアンとセバスチャンはお互い肩で荒い息を吐いている。


「私も年でしょうか。ここまで勝負がつかないとは。」

 セバスチャンは剣を鞘に納めた。


「おいおい、俺は一応、現役の兵士なんだけどなぁー。」

 ブライアンがやれやれといった顔でこちらも剣を鞘に納める。


「全員参加で決定のようだな、ケイン。」


「ああ、そうなる。」

 ケインもこの結果に何も言えなかった。


「ではそろそろ別荘に戻って夕食にしましょうか。お嬢様。」

 セバスチャンがいつの間にか息を整えて全員を促した。


「そうね。お腹空いたし。対魔獣用の武器は明日みんなに見てもらいます。」

 私もお腹が空いてきたのでセバスチャンの意見に賛成した。


「そういえばだいぶお腹が減ったなぁ。」

 ブライアンがぐぅとお腹を鳴らした。


「たしかにお腹も空いたがだいぶ暗くなってきた。」

 ケインが空を見上げて言う。


 その声にみんなは別荘に向かって歩き出した。


 今回は夕食もメリンダが作った為、みんな静かに食事を終えると早々と寝室に引き取った。

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