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初恋の彩り  作者: みこえ
~始まり~
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【現実と未来】

 春里と貴之は俊介に呼ばれダイニングの椅子に座った。眼の前には貴美が淹れたコーヒー。四人そろって何の話だろう、と春里は首を傾げた。


「色々遅くなって申し訳ないな、春里」

 そんなセリフから俊介の言葉は始まった。春里としては何が申し訳ないのか分からない。多分それは貴之も同じだろう。


「私は二人兄弟の長男だ。それもあり、病院を継いだ。弟も同じ病院で外科医として働いている」

「はい、存じ上げています」

 春里の言葉に俊介は深く頷いた。


「弟に相談した。墓の事」

 ここでやっと春里は何の話をしようとしているのかが分かった。

「お墓ですか?」

「ああ、普通の流れならば墓も私が受け継ぐことになっていただろう。だが、状況が変わった。貴美とも相談して決めた。墓は弟が受け継ぎ、守っていく」

 なんとなく話の先が読めて春里は俯いた。


「申し訳ないとか思う事はない。ただ、春里の気持ちを考えたらそれがベストだと思っただけだ。もし、春里がいいと思ってくれるのなら――春香、さんのお骨をわたしたちと同じ墓に納骨しないか?」

 ――やはり。

 春里は長く息を吐きだした。


「わたしが我が儘を口にしたばかりに悩ませてしまったんですね」

「そうじゃない。私たちもそれがいいと思っただけだ。だから申し訳ないとか、遠慮なんかいらない」

「そうなの。わたしも賛成。春香さんも賛成してくれているといいんだけどね」

 二人がそう言ってくれる事は春里にとっても嬉しいことで、ありがたいことでもある。跳びつきたい提案でもあった。でも、春里の頭の中にはやはり貴之との関係がこびりついて離れなかった。


 今はお付き合いをして、いわゆる恋人同士の関係だ。だが、その関係が永遠に続くとは未だ信じてはいない。人の感情なんていくらでも変化するものだ。それを目の当たりにしている。俊介も貴美もそれを実感しているのではないか。なのに、なぜそんな簡単にこんな提案ができるのか春里には理解できなかった。貴之と別れた後も図々しく居座るなんて事はできない。それが春里の思いだ。


「春里、また変な事にこだわっていないか?」

 貴之が心配そうに言った。何でもお見通しと言った感じで、春里は居心地が悪い。

「俺との関係を気にしているなら、そんな先の事、そんなあるかどうか分からないことで今悩むなよ。もしそうなったのならそうなったときに悩めばいい。違うか?」

「貴之さん」

「春里は先の事を考え過ぎだ。未来なんてどうなるか分からない。俺と春里が永遠に同じ気持ちでいる可能性だって五十パーセントはあるはずだ。違うか?」

 春里と眼が合うと貴之は優しく微笑んだ。


「それに、恋人でなくなったとしても俺は春里を憎いと思ったり嫌いだと思ったりしない。だから、最悪にはならない。俺がどんな奴か知っているはずだ。違うか?」

 貴之の気持ちが嬉しかった。だから、春里は貴之に微笑み返した。


「そうよ。もし春里ちゃんと貴之が別れたってわたしは春里ちゃんの事が好きよ。もちろん春香さんだって好き」

「お袋、縁起でもない事を当事者以外から聞くのは抵抗がある」

 貴之は不貞腐れた顔で文句を言った。春里はじっと貴之顔を見つめる。貴之はいつも手を差し伸べてくれる。安心もくれる。だから、そこに答えがあるような気がした。春里は自分の手元を見つめ、コーヒーを一口飲んだ。気持ちを落ち着かせる。


「ありがとうございます。考えてみます」

「そうか。よかった。早めに結論を出して欲しい。すぐに行動を起こしたいからな」

「でも、その前に、春里ちゃんのおじいさんたちに許可をいただかないとね。もし、わたしたちの提案を受け入れてくれるのなら、貴之をお供に夏休み中に一度帰って相談してくるといいわ」

 貴美はにこりと微笑み、ちらりと貴之を見た。


「ちゃんとお供するから大丈夫だよ」

 まるで子供のような不貞腐れ方をした貴之に春里は笑ってしまった。

「じゃあ、解散」

 俊介の一言は緊張していた気持ちを解き放つ。

「いろいろありがとうございます」

「何、他人行儀な。私の娘だ。我が儘は嬉しい」

 俊介はにこりと微笑み、席を立った。その後を追うように貴美も席を立った。


「春里、俺たちは家族と同じ。きっと、春里の我が儘は親父もお袋も嬉しいと思うぞ。頼られたいと思っているはずだ」

「はい」

「それに、春里の実家にも行きたい。春里を育てたおじいさんとおばあさんに会いたい」

「そうですね。わたしも紹介したいです。祖父母には安心してもらいたいですし」


 きっと、大丈夫だと口にしても心配しているだろう。ここに来る前の春里はとても不安だった。それが表情や態度に出ていたはずだ。祖父母もまた心配そうに春里を見ていた。だから、電話で元気にやっていると言っても、みんな優しいと言っても強がりと捉えられているようだった。きっと貴之の優しさや明るさに触れたら竹原家がどんな家庭なのかが分かるだろう。そして、恥ずかしいが、春里が心惹かれた男性だと知ったらどれだけ喜ぶだろう。


「それはどうだろうな。変な男に引っかかったと余計心配になるかもしれない」

 貴之のそんな言葉に春里は噴き出した。


ずっと引きずっていたお墓の話がやっとできてよかったです。本当はこの辺は濁そうかとも思っていたのですが、出逢い編でそういう会話をしてしまったので、田舎に行くきっかけとして。


次回は作戦開始。ダブルデート?なんか初々しい響きですね。


次回もお付き合いください。

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