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初恋の彩り  作者: みこえ
~始まり~
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【二人の空気】

 土曜日、二人が待ち合わせをしたのはちょうど二人が住む家の最寄り駅の中間だ。春里にとっても貴之にとっても馴染みのない場所だ。先に着いていたのは貴之で、春里が待ち合わせ場所でキョロキョロとしているところを、貴之が先に見つけ出した。


「お待たせしました」

「いや、まだ時間になっていないし」

 ぎこちない空間は久しぶりだからと言うだけではないだろう。これから起こるだろう出来事にお互いに緊張しているのだ。


 貴之は相変わらずシンプルな装いだ。黒地のストライプのスラックスに白のシャツ、フロント部分と袖の裾が黒のチェック柄になっている。その上に薄手のグレーのカーディガンを着ている。春里はそれに合わせて服装を考えてきた。黒地のチェック柄のチュニックに黒のレギンスパンツ。差し色にボルドー色のトートバッグを持った。貴之の予想通りの服装に春里はにんまりだ。


「久しぶりに会ったけど、何か変わらないな、春里は」

「貴之さんも変わらず、ですよ」

 春里は負けずに言ったが、本当は少し大人っぽくなったと感じていた。服装もそうだが、醸し出している雰囲気が大人っぽい。


「お昼はまだだろう?さっきその辺うろついてみて、良さそうな店を見つけたんだ。カフェレストランみたいだけど、どう?」

「いいですよ。そこにしましょう」

 貴之は満足げに微笑み、歩きだした。その後ろを春里はついて行く。広い背中を眺めながら歩くと、何とも言えない嬉しさが込み上げる。


「ここだよ」

 店は広かった。色とりどりの鮮やかな色彩で飾られている店内は明るい。多くの客でにぎわっていて、とてもいい雰囲気だ。


 店員に案内され、窓際の二人席に座った。お互いに注文を終えると、いきなり緊張し始め、一気に水を飲みほした。それに二人で気づくとお互い顔を見合わせ、クスクスと笑いだした。


「久しぶりで緊張しているんだ」

 貴之が苦笑しながら言った。

「わたしも同じですよ。信じられないけれど」

「まあ、仕方ないよな」

 貴之は窓の外を見つめた。それにつられて春里も見つめる。様々な格好をした人たちが歩いている。それだけの光景だ。行きかう人たちはどんな気持ちで歩いているのだろう。そんな風に春里がぼんやりとしていると、貴之の視線を感じた。貴之の方を見ると、そこには優しげな眼差し。


「ん?」

「いや、やっぱり好きだなって思って」

 予期しない言葉を口にされ、春里は一気に恥ずかしくなり、俯いた。


「ごめんな。色々困らせたみたいだ」

 春里は俯いたまま首を横に振った。

「この前奏太が来たよ。そして、俺に言っていったんだ。俺は間抜けだった。大切な事を伝えていなかったんだ。一番大切な俺の気持ちを伝える事ばかり必死になって、春里の感情を考える余裕がなかった。ごめん。本当にごめん」

 貴之が深々と頭を下げた時、注文した品が届いた。店員に変なところを見られた恥ずかしさから、二人とも窓の外をじっと見つめた。店員が去って行くと、貴之は長く息を吐いた。


「タイミング悪いな」

 貴之がぼそりと呟いた。そして、先程注がれた水を半分ほど飲んだ。


「俺の気持ちは両親にも話している。きちんと理解もしてもらっている。両親は許してくれたよ。俺が春里に気持ちを伝えること。どちらに転んでもいいように両親も考えている。春里は心配することはないんだ。正直な気持ちを言ってくれればそれでいい。それだけを今日は伝えたかった」

 一気に言うと、貴之は「いただきます」と呟いて、食べ始めた。それにつられるように春里も食べ始める。


「おいしいな」

「うん」

 久しぶりの貴之との食事に春里の心は弾んだ。それと同時にそれが外食だと言う事がとても不思議に感じた。


「学校はどう?奏太の話だと、お供を連れているとか」

「もう、奏太さんったら。おしゃべりな男は嫌われるって感じですよね」

「でも、近況を知れて俺は嬉しかったけどな。で、そのお供はどうなの?」


「一人は知っていますよね。以前わたしをつけまわした事のある男の子です。ちょっと独特な雰囲気のある子で、ナルシストのけがありますね。まあ、かわいいものです。もう一人は一学年下の男の子。如月君って言います。眼鏡をかけたインテリ風のきっちりした男の子ですよ。話し方も服装も。立ち姿も歩き方もそうかもしれません。いつも誰かに見られていることを意識しているような振る舞い方をする子で、こんな男の子、現実にいるんだなって思いました」

「へえ」


「貴之さんもファンクラブから解放されて、おもてになるんじゃないですか?」

「そんなことないよ。こんな性格だからね。近寄りがたいみたいだ」

 貴之はにこりと微笑み、ハンバーグを頬張る。食べ方は以前と変わらない。


「それでも、鈍感な女性はいますよ。どこにでも」

 春里も負けずに微笑んで見せる。春里はパスタを頬張った。こちらも食べ方は変わらずだ。結構な量のパスタをフォークに絡めるが、しっかりと口の中にきれいに入れ、食べる。口の周りが汚れないきれいな食べ方だ。


「まあね。それを言ったら春里の周りにも鈍感な男はいるみたいだし」

「どこにでもいるものですね」

 にっこりと微笑み、春里は水を飲む。


 皿の上がお互いにきれいになると、食後のコーヒーを楽しんだ。

「春里の作ったアイスティーが恋しいよ」

「なら、きちんと帰ってきてくださいね」

「そうだな。うん。夏休みには。でも、その前には春里の返事がほしいな。春里は余計な事を考えず、春里の感情だけに向き合って考えるように。もう少し猶予が必要なら待つよ。もう痺れを切らしているけどね」

「ありがとう。もう少しだけ時間をください。きちんと答えを出します。誠意を持って対応してくれた人には誠意を持つことは礼儀ですから」

「そういう言い方しないでほしいな」

「わたしらしい言い方でしょう?」

 春里はそう言ってクスクスと笑った。笑いながらも春里の中でまだ戸惑いがあった。貴之の事は好きだ。好きだからこそ戸惑う。躊躇う。いつか別れが来た時――そんな先の事を悩むなんて馬鹿げていることは分かっていても、考えずにはいられなかった。


進展ならず……。


次回は懲りずに新キャラ登場。春里のお供に。


次回もお付き合いください。

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