【奏太は恋のキューピット】
貴之が少し抜けていることは奏太も知っている。しかも、人生初の告白ならば尚の事、緊張して大切な事を伝え忘れることもあるだろう。
奏太が春里と一緒に和菓子屋でお茶をしたあの日、春里はどう言おうかと迷って、じっと手元を見つめていた。それをじっと奏太は見つめ、春里の頭の中が整理つくまで待っていた。
「あの、わたし、貴之さんの事が好きです。だけれど、それだけで進んでいい問題ではないと思っています。わたしは貴之さんのご両親に今お世話になっているんです。わたしが貴之さんとお付き合いすることになったとして、ご両親はどう思うでしょうか?余計な事を考えていますか?でも、これって大切なことですよね」
この言葉を聞いて、十代の女の子がそこまで気にすることないのに、と奏太は思っていた。だが、それこそが春里で、春里らしいと言うしかない。突き進めばいいだけなのに、突き進めずに立ち止まれてしまう、そんな冷静さを持ってどうするのだろう。
「貴之はその辺の事を言ってはくれなかったの?」
「え?ええ。そういうことは全く」
「そう」
「それに――もしお付き合いをする事になったとして、最初のうちはいいでしょう?でも、気持ちが離れてしまったら、それこそどうすればいいのか分からなくなってしまいます。恩を仇で返すような事を何度もしているような感じです。あれ?何言っているのか分からなくなってきました」
頭がこんがらがったようで、春里は両手で顔を覆い、溜め息を吐いた。
「大体の事は分かったよ。ご両親の事は貴之に確認しないとだね。だけどね、付き合う前から別れた時の事を考えるのは感心しないよ。それじゃ貴之が可哀想だ。貴之は色々悩んで、やっと踏み切ったんだ。すごく勇気がいったと思うよ。俺も紗和に告白するのは勇気がいっぱい必要だった」
春里の顔を覆っていた両手が開き、春里の眼が奏太を捉えた。
「春里ちゃん。春里ちゃんの環境が変わったように、貴之を取り巻く環境も変わったと思うよ。今貴之がどう思い、感じ、生活しているか分からないけれど、中途半端なのは可哀想だ。春里ちゃんにとっては心地良くてもね」
厳しい事を言っているかもしれない。奏太はそう自覚しながらも、言わずにはいられなかった。
「そうですよね。わたしも中途半端は嫌いです。ずっと会えないのも淋しいですし。でも、踏み込む勇気がまだ持てなくて」
奏太は自然に笑っていた。春里もまた貴之と同じ気持ちなのだ。貴之を大切に想っている。それが分かっただけで奏太は最高に嬉しかった。
和菓子屋で抹茶パフェとわらび餅を食べた時の一件です。
もう一話。貴之と奏太。お付き合いください。




